チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

まぼろしの美術館 ムッシュM 魂のコレクション

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国立西洋美術館の創立の礎となった一大コレクションがある。実業家松方幸次郎が資材を投じて買い求めたもの、世界恐慌など20世紀の激動の歴史の中で散逸した「幻のコレクション」だ。

一万点といわれるコレクションにはどんな名画があったのか?

昨年3月、「追跡不可能」だと思われていたロンドン焼失作品リストが発見され、松方のコレクションはマネやクールベの名作を含む一流のコレクションだったと判明しました。

番組では、国立西洋美術館で現在進行中のプロジェクトを手がかりに、コレクションの全貌と流転の歴史に迫ります。

まぼろしの美術館 ムッシュM 魂のコレクション

放送:2017年11月23日

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松方幸次郎*1

*1:慶応元年(1865年)12月1日、松方正義の三男として鹿児島に生まれた。 明治14年1881年東京大学予備門(現東京大学)を中退、明治17年から22年までアメリカのラトガーズ大学、エール大学、フランスのパリ大学などに留学した。 明治24年5月、父正義が第一次松方内閣を組閣した際首相秘書官に任官、明治25年8月に正義が首相を辞任して以後、日本火災保険副社長、灘商業銀行監査役、高野鉄道取締役などを歴任し、明治29年10月、川崎造船所初代社長に就任した。以来32年間にわたってその座にあり、当社をわが国有数の重工業会社に育て上げた。

フェルメール「ぶどう酒のグラス」が初来日

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2018年の話題をさらう最強の作品が来日します。

上野の森美術館で開催予定が決まった

フェルメール展」

会期:10月5日(金)~2019年2月3日(日)

現存するフェルメールの絵は全部で35展。そのうち8点が東京にやってきます。

www.vermeer.jp

 

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「牛乳を注ぐ女」アムステルダム国立美術館

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「ぶどう酒のグラス」(初来日)ベルリン国立美術館

 

フェルメール展」は2008年に東京都美術館で開催され93万人の来場者数を記録しました。この時は7点が来日しましたが、今回は初公開の作品を含む8点です。

フェルメールの傑作がこれほどまでに一度に集められることは滅多にありません。本展覧会で展示される作品は、キャリアの全段階から選ばれており、彼の芸術表現の幅広さを示します」フェルメール研究の第一人者であるワシントン・ナショナル・ギャラリーのアーサー・K・ウィーロックJr.

2月13日から5月12日まで大阪に巡回。大阪市立美術館で公開されます。

来場者は殺到するとみられ、入場待ち時間解消を狙ってか、早くも日時指定入場制となることが決まりました。チケットの入手難が予想されます。

 

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「マルタとマリアの家のキリスト」スコットランド・ナショナル・ギャラリー

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「手紙を書く婦人と召使い」アイルランド・ナショナル・ギャラリー

 

展覧会では、フェルメールの他にオランダ黄金期を代表する画家、ハブリエル・メツー、ピーテル・デ・ホーホ、ヤン・ステーンなどの作品約40点も展示されます。

日曜美術館アートシーン11月19日

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ディエゴ・リベラの時代 メキシコの夢とともに (埼玉県立近代美術館

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メキシコの美術は革命後の1920‐30年代に独自の展開を遂げて隆盛を極め、世界の注目を集めました。その歴史を語る上で欠かせない画家が、ディエゴ・リベラ(1886-1957)です。画才に恵まれたリベラは10歳の頃から美術学校に通い始め、1907年にヨーロッパに留学すると、キュビスムなどの最先端の画風を試み、ピカソとも交流しました。

 1921年に帰国すると、メキシコの社会の動きに眼を向け、公共空間に絵画を描く「メキシコ壁画運動」に積極的に携わります。また、メキシコ固有の題材を採り入れた風俗画や肖像画においても、優れた作品を数多く残しました。

 メキシコ国立芸術院(INBA)との共同企画によるこの展覧会では、初期から晩年にいたるリベラの画業を油彩画、素描、版画など約30点の作品でたどります。また、リベラの師でありメキシコ近代絵画を拓いたべラスコ、同時代のメキシコの様々な美術動向、リベラと関わりのあったレオナール・フジタ北川民次ら日本人画家も紹介し、メキシコの近代美術が掲げた夢を振り返ります。

会場:埼玉県立近代美術館

会期:2017年10月21日~12月10日

 

www.pref.spec.ed.jp

雪舟発見!展(山口県立美術館)

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日本美術史を代表する室町時代水墨画家・雪舟等楊(1420-1506?)の幻の作品がこのたび発見されました。550年ほど前に制作された「団扇形倣古図」シリーズの一つで、中国南宋時代(12-13世紀)の画家・夏珪の画風に倣って描かれた「倣夏珪山水図」です。
本展では、現存が確認されている同シリーズのうち5点を集め、また比較のために江戸時代の模本を展示することによって、雪舟真筆の凄みを存分にご覧頂きます。

会場:山口県立美術館

会期:2017年10月31日~12月10日

www.yma-web.jp

美しき庭園画の世界 江戸絵画にみる現実の理想郷(静岡県立美術館)

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本展では、関東と関西における庭園画の流れをご紹介し、江戸時代の庭園画の歴史を概観します。また、実景を描いた絵画と庭園画の関係に注目することで、江戸絵画史の展開のなかで庭園画をとらえ、庭園画のひろがりと魅力をご堪能いただきます。 知られざる江戸絵画のジャンル・庭園画の美しき世界を、そして、庭園画を通じて江戸絵画の風景表現の豊穣なる世界を、どうぞお楽しみください。

会場:静岡県立美術館

会期:2017年10月21日~12月10日

美しき庭園画の世界|展覧会一覧|展覧会|静岡県立美術館|日本平のふもと、緑に囲まれた美術館

ピカソと日本美術 ―線描の魅力―(和泉市久保惣記念美術館

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美術館のコレクションの基礎をなす日本美術の名品とともに、日本全国から集めたパブロ・ピカソ作品を展示し、両者の持つそれぞれの魅力を「線」に着目して引き出す展覧会を開催します。東洋と西洋の美術における線描の意味、それぞれの性質の違いや似通っている点を、なじみのあるピカソの作品を入り口として学ぶとともに、当館が所蔵する日本美術の優品の新たな魅力を知り、広く美術に親しんでいただく展覧会です。

会場:和泉市久保惣記念美術館

会期:2017年10月15日~12月3日

www.ikm-art.jp

 

 

鏨の華 ―光村コレクションの刀装具―(根津美術館

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刀剣外装のための金具は、江戸時代以降に装飾性が増し、金属とは思えないほどのきらびやかで細密な作品が残されました。光村利藻(みつむら としも・1877-1955)はそんな刀装具を中心に一大コレクションを築き、名著『鏨廼花』(たがねのはな)を刊行した明治時代の実業家です。一方で断絶の危機にあった装剣金工の技術継承にも心を配りました。単に作品の美を称えるだけではない利藻の幅広い活動により、刀装具への理解は深められ、作り手も護られました。
現在根津美術館には利藻のコレクション約1200件が伝わっています。本展覧会では、この根津美術館のコレクションを中心とした約130件の刀装具に刀剣や絵画資料も加え、光村利藻が魅せられた金属美を、紹介いたします。

会場:根津美術館

会期:2017年11月3日~11月26日、11月28日~12月17日

www.nezu-muse.or.jp

光彩の巧み ―瑠璃・玻璃・七宝―(五島美術館

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http://www.gotoh-museum.or.jp/exhibition/img/main_top_20171021-1203_03.jpg

会場:五島美術館

会期:2017年10月21日~12月3日

五島美術館

日曜美術館「漱石先生 この絵はお嫌いですか~孤高の画家 木島櫻谷~」

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日曜美術館漱石先生 この絵はお嫌いですか~孤高の画家 木島櫻谷~」

かつて夏目漱石に酷評されながらも、最近の調査でその先見性、革新性が注目される画家・木島櫻谷(このしまおうこく)。謎多き孤高の画家の卓越した作品と人生に迫る。

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明治中期、動物画に才能を発揮した木島櫻谷(このしまおうこく)。緻密な写生と高度な技を駆使し、名作を生み出した。最高峰とされる「寒月」は、月光射す竹藪をさまようキツネの姿をドラマティックに描いた。しかしこの作品を夏目漱石が酷評。櫻谷も何も語らず画壇から離れ、人々から忘れられていく…。しかし最近、研究者の調査で、櫻谷の画法が想像以上に先進的、革新的なことが判ってきた。孤高の画家・木島櫻谷の真髄に迫る。

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【出演】日本画家…竹内浩一,泉屋博古館学芸員…実方葉子,【司会】井浦新,高橋美鈴

放送日

2017年11月19日 

木島櫻谷とはどんな画家だったのか

木島櫻谷(このしま・おうこく)近代の京都を代表する日本画家。明治10年(1877)京都・三条室町の商家に生まれ、円山四条派の流れをくむ今尾景年に入門し画技を学びました。20代から頭角を現し、明治後半から大正期にかけて文展・帝展の花形として「文展の寵児」とまで呼ばれ、京都画壇の巨人・竹内栖鳳と並び立つ人気を博しました。 昭和13年(1938)に不慮の事故により亡くなりました。

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どこが評価されたのか

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櫻谷の魅力は、徹底した写生に裏打ちされた「動物画」です。瞬間を絵の中に定着させる徹底した観察眼と墨の濃淡で描く技術が目を奪います。

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さらに押さえておきたい作品が「寒月」(京都市美術館蔵)です。月夜の竹林に現れた一頭の狐を静謐なトーンで描いた作品ですが、「屏風にするよりも写真屋の背景にした方が適当な絵である」と夏目漱石が酷評したことでも知られています。

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鮮やかな色彩と躍動感が伝わってくるのが2008年発見された幻の作品「かりくら」です。いまにも動き出しそうな馬の描写には、櫻谷が若い頃から修練していた写生の技術が活かされています。「かりくら」発見のエピソードは美術関係者の間ではドラマとして知られています。

http://souda-kyoto.jp/blog/00262.html

 

京都で人気沸騰。ブームは起きるか?

櫻谷の回顧展は2013年京都で開催され大きな反響を呼びました。異例の4年というショートスパンでの展覧会が、生誕140年を記念して、京都・泉屋博古館で10月28日から12月3日まで開催されます。

www.sen-oku.or.jp

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放送記録

av98ingram.wpblog.jp

 

書籍 

美術フォーラム21 第30号 特集:現代美術の歴史学――戦後の日本

美術フォーラム21 第30号 特集:現代美術の歴史学――戦後の日本

 

絵画

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

漆絵 木島桜谷の名作「柳桜図」
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展覧会等

「生誕140年記念特別展 木島櫻谷 ―近代動物画の冒険」

会場:泉屋博古館 京都市左京区鹿ヶ谷下宮ノ前町24

会期:12月3日(日)まで

【巡回予定】

生誕140年記念特別展「木島櫻谷」

Part I 近代動物画の冒険 2018年2月24日(土)~4月8日(日)

Part II 木島櫻谷の「四季連作屏風」+近代花鳥図屏風尽し 2018年4月14日(土)~5月6日(日)

会場:泉屋博古館分館 東京六本木一丁目住所 東京都港区六本木1丁目5番地1号

 

「木島櫻谷の世界」展

会場:京都文化博物館

会期:12月24日(日)まで

 

「櫻谷文庫(木島櫻谷旧宅)」秋の公開予定

住所 京都市北区等持院東町 56

公開日 2017年11 月 17日(金)~19 日(日)、11 月 23 日(木・祝)~26 日(日)、12月1日(金)〜3日(日)

日曜美術館「皇室の秘宝」2 プロジェクトの志

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blog.kenfru.xyz

 ではこの棚はどのような人々がつくったのでしょうか?

 

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棚の内側には職人の名が記されていました。

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棚の製作に携わったは総勢十二人。

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うち七人が蒔絵師と呼ばれる職人でした。

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さらに東京美術学校で撮影された皇后の棚を手掛けた職人たちの写真が見つかりました。いずれも江戸時代に活躍した蒔絵師たちをルーツに持つ一流の職人たちです。

御飾棚の蒔絵は一基につき七人ずつの蒔絵師たちが技を結集して作り上げたものでした。

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制作の指揮を執ったのは東京美術学校校長の正木直彦。総理大臣以下、国家公務員たちが出し合った資金を預かりました。そして当時一流の技を持つ人たちを全国から選りすぐったのです。

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このプロジェクトにはもうひとり、正木と並び重要な人物がいました。展覧会を企画した黒川廣子さん。今回プロジェクトの詳細をはじめて調査しました。

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調査で浮かび上がったのが正木のもとで献上品の図案を手掛けた島田佳矣(よしなり)という人物でした。

島田佳矣は、金沢城下、浅野川左岸の田町(現天神町1丁目)に生まれ、幼名は佳太郎といいました。父早太は加賀前田家の人持組(ひともちぐみ)知行1.600石の庄田誠摩の家臣で、庄田家の家臣が住む、今風にいうと家臣団地に住んでいます。幕末は三人扶持に24貫900文を与えられていましたが、明冶3年には切米15俵4斗6升9合だったといいます。加賀藩は5斗が1俵ですから8石弱、藩主から見れば家来の家来、下級陪臣の極めて身分の低い士族(卒族)でした。

百万石工芸復興の父―島田佳矣|市民が見つける金沢再発見

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「島田は今で言えばデザイナー。様々な職人に指示を出し作品の骨格を決める人と言えます」

黒川さんは島田のことを調べる中で御飾棚の図案を見つけることができました。そこには飾棚の柱にされた蒔絵と螺鈿の文様が記されていました。

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さらに金具に施す菊をあしらったデザインもありました。

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島田は伝統的な装飾をモダンなデザインに生まれ変わらせたのです。献上品の制作は正木直彦と島田佳矣を中心に、美術工芸家や職人が総力を結集したプロジェクトでした。

 

しかし、プロジェクトには計画そのものが立ち消えになる危機がありました。

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制作が始まろうとしていた矢先。大正12年9月に発生した関東大震災です。死者行方不明者10万5千人。東京は壊滅的な被害を受けます。

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献上品の自粛ムードが高まります。この時制作の継続を強く訴えたのが正木でした。震災から三ヶ月後、事業の継続が決定しました。

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御飾棚は関東大震災から5年後の昭和3年に完成しました。

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木彫りの置物や七宝焼の飾り皿。

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制作には合わせて135人の美術工芸家が関わりました。

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裁縫箱の日用品まで44件が納められました。

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高さ198センチの二曲御屏風は前面に工芸作品が散りばめられています。

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御飾棚と同じように天皇と皇后に一対が献上されました。

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皇后の屏風。

これらの屏風の制作には正木が全国から選りすぐった50人を超える美術工芸家や職人が当たりました。

扇型や色紙の部分をひとりひとりが作りました。

金工、木工、漆、陶芸など、黒漆で塗り固めた上に伝統の技が結集した美の競演です。

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モチーフはおめでたいものばかり。

竹は成長が早いことから繁栄の象徴とされてきました。

金属に彫刻を施す彫金の作品です。

 

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コウモリは漢字で表すと二文字めが福に通じることから、古くから縁起をかつぐのことに使われてきました。

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金属を叩いてコウモリの形に延ばしています。

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中には、今では再現できないという超絶の技を使った作品もあります。

木彫りのような立体感。

漆を何層にも塗り固めてそれを彫った。いわば漆の彫刻です。

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中央の牡丹から左下の菊まで十段ほど。

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重なりを緻密に計算し、咲き誇る花を生き生きと表しました。

 

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黒い扇面に白い巻柄の山水。描かれているようにしか見えませんが、f:id:tanazashi:20171112135649p:plain

細かい螺鈿がはめ込まれています。

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一見、筆で書いたように見える作品。しかし、描いたものではありません。

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細い葉も木の幹も、実は天然の色を活かした木片です。

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墨の濃淡に見える羽の黒や白、灰色まで、

すべてバラバラの木片をはめ込んでいるのです。

 

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驚愕の技が明らかになったきっかけは、新たに見つかった、作者から制作を指揮した正木への書簡でした。

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そこには材料や技法の説明があったのです。

さらに書簡の最後には、「永遠に変色せざる材料を選ぶ」という作者の思いも綴られていました。

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日曜美術館「皇室の秘宝~奇跡の美術プロジェクト~」

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日曜美術館「皇室の秘宝~奇跡の美術プロジェクト~」

昭和天皇の結婚の際に献上された美術品が皇居から初めて持ち出され公開された。一流の工芸家たちが5年の歳月をかけた奇跡のプロジェクトの作品を紹介する。

東京芸術大学の美術館で開催されている展覧会。金のまき絵やらでんが一面に施された飾り棚。天皇と皇后用に1対で献上された豪華な作品である。また48人の工芸家が技法を競った作品が装飾されたびょうぶ。金工、木工、漆、陶芸など日本の伝統工芸がここに集約されている。実はこのプロジェクトには中止に追い込まれそうな危機があった。皇室の秘宝とともにその秘められた物語を紹介する。

【ゲスト】東京藝術大学准教授…古田亮,【司会】井浦新,高橋美鈴

 

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大正13年1月26日に行われた昭和天皇の「結婚の儀」。そこに献上された「献上品」がこのほど公開されました。

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「皇室の彩(いろどり)百年前の文化プロジェクト」で公開中の品々です。

東京藝術大学大学美術館 展覧会・催し物日程

皇室の彩いろどり 百年前の文化プロジェクト - 東京藝術大学

http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2017/koshitsu/koshitsu_list_ja.pdf

東京藝術大学創立130周年記念特別展 皇室の彩 百年前の文化プロジェクト

東京藝術大学創立130周年記念特別展 皇室の彩 百年前の文化プロジェクト

    • 作者: 東京藝術大学大学美術館,宮内庁三の丸尚蔵館,NHKプロモーション,美術出版社
    • 出版社/メーカー: 美術出版社
    • 発売日: 2017/11/04
    • メディア: 単行本(ソフトカバー)
    • この商品を含むブログを見る
    • 今展示会が開催中ですが、そこまで行けない人には是非皇室の至宝を手っ取り早く網羅できる大変良い一冊です。写真も美しくうっとりします。

    会場が物凄く混んでおり、いつもは単眼鏡でじっくり鑑賞するのだがその時間が取れなかったため購入。展覧会図録は写真でがっかりすることが多いが、これはとても美しく、目玉の御飾棚以外も拡大写真が充実しており非常に満足した。
 

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この「献上品」の制作を行ったのが東京美術大学(現在の東京藝術大学)の校長・正木直彦が指揮したプロジェクトです。制作が始まろうとしてきた矢先に関東大震災が発生し、企画そのものが立ち消えになりかけたのです。

放送日

2017年11月12日 

飾棚に込められた高度な技

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高村光雲「鹿置物」は一本の木を素材にした一木造りの彫刻作品です。

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牡鹿の脇腹に現れた木目模様は太陽の光が当たって毛並みが輝いているようにも見えます。

 

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足元に落ちた紅葉の葉の枝も、彫刻で表現されています。

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「大正から昭和の初期にかけて皇室に献上された多くの美術作品があります。その殆どが東京芸術大学の前身であった東京美術大学が委嘱を受けていました。東京藝大は創設130年を迎えますが、ほぼ100年前に委嘱制作が行われていたことをもう一度注目し、私達自身の歴史を振り返ろうという狙いもあります」

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昭和天皇の結婚に際し、2本の棚が献上されました。

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「御飾棚」は高さ155センチ。幅153センチ。f:id:tanazashi:20171112105657p:plain

奥行きは50センチです。

 

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棚に舞うのは鳳凰。古来帝を象徴する文様の一つとして使われてきました。

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その姿は何種類もの金粉や銀粉で精緻に表現されています。背景まで職人の技で埋め尽くされていました。

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棚の一部を拡大すると、漆を塗り、そこに奥行きが出るように慎重に金粉を撒き、その上にさらに透明度の高い漆で塗り固めていました。

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これらは蒔絵と呼ばれる漆の装飾技法。日本独自の発展を遂げた千年以上続く技です。

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中でも鳳凰の文様には高蒔絵と呼ばれる、蒔絵を立体的に作る技法が用いられていました。

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棚に光を当てて撮影すると、文様が盛り上がっていることがわかります。

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それまで蒔絵は身近な箱などの装飾に使われてきました。しかし、これほど大きなものを埋め尽くすのは他に例はありません。

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皇后の「御飾棚」。文様は羽ばたく鶴。

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こちらも高蒔絵の技法で作られています。白く輝くのは螺鈿。貝の殻です。

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夜光貝を嘴や羽の形に合わせて、一枚一枚切り抜き。漆の表面を彫って貼り込んでいます。

 

ふたつの御飾棚には作り方にも違いがあることが、今回明らかになりました。

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鳳凰の鶏冠。輪郭に影がつくほど立体的に作られ、力強い印象を与えます。

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鶴の頭から首にかけての輪郭は滑らかに浮き上がり、優しい印象。

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鳳凰の輪郭は直角に近く大胆にエッジを盛り上げています。一方鶴の輪郭は丸みを帯びていました。エッジのわずかな差で力強さと優しさを表現していたのです。

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この蒔絵の差を発見したのが人間国宝室瀬和美さんです。

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室瀬さんは伊勢神宮に作品を奉納しています。

 

御飾棚の蒔絵は職人たちが二年がかりで完成させたと言われます。

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選んだのは菊の葉の部分。一枚の葉にいくつもの立体感が表現されています。

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通常の蒔絵より粘り気のある漆を使って輪郭を描き始めました。粘り気のある漆で輪郭を引くと漆の土手が生まれます。この厚みが立体感のポイントでした。

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続けて土手の内側に漆を塗り、

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そこに炭の粉を撒きます。

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漆が接着剤となって墨が固定し、土台ができました。コン上に金粉を撒きます。

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ところが、御飾棚の高蒔絵は通常のやり方ではないことに気づきました。

 

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はじめ一番内側と、外から二番目の金は同じ高さだと考えていました。しかし画像を拡大して調べると中央の金は葉の中で一番低くなっていました。

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青い矢印の部分は、赤い矢印の上に描かれていたのです。それは通常のやり方よりさらに手間をかけた複雑な高蒔絵でした。

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これに気づいた室瀬さんは同じように漆を重ね、金粉を撒くことにしました。

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一枚の葉にも色や形の違う金粉を使い分け繊細に表現されていました。

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一週間後、表面に塗った漆を墨で研ぎます。

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金の輝きが少しずつ増して行きます。

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最後に粒子の細かい粉で表面を磨き、ようやく一枚の葉が完成しました。

「二重三重の複雑さがある。大変な労力。二ヶ年でしたっけ。おそらく寝ずにやったと思います。それくらい工程数は多いと思います」

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一枚の葉を完成させるだけでも 三週間かかりました。最高の美を求めて、時間と手間を惜しまない職人の技がここにありました。

ではこの棚はどのような人々が作ったのでしょうか?

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放送記録

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書籍 

東京藝術大学創立130周年記念特別展 皇室の彩 百年前の文化プロジェクト

東京藝術大学創立130周年記念特別展 皇室の彩 百年前の文化プロジェクト

  • 作者: 東京藝術大学大学美術館,宮内庁三の丸尚蔵館,NHKプロモーション,美術出版社
  • 出版社/メーカー: 美術出版社
  • 発売日: 2017/11/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
  • およそ100年前、大正から昭和最初期の頃に、皇室の方々の御成婚やご即位などのお祝いのために、当代選りすぐりの美術工芸家たちが、技術の粋を尽くして献上品を制作しました。 それらの品は、献上後は宮殿などに飾り置かれていたために、一般の方々の目に触れる機会は極めて限られてきました。 本書は、この一大プロジェクトを指揮した東京美術学校を継承する東京藝術大学の創立130周年を記念して、同大学美術館にて開催される展覧会の公式図録です。 横山大観上村松園高村光雲、六角紫水ほか、皇居外でめったに公開されない名品が勢揃い! ワイドな折込みページと拡大図版で細部までしっかりと紹介。 別カットや撮り下ろし写真、島田佳矣の図案や献上品の当時の写真など、貴重な資料と充実した解説で一大プロジェクトの全貌を紐解きます。
 

 

 

展覧会 

www.nhk-p.co.jp

東京藝術大学大学美術館 展覧会・催し物日程

没後20年 麻田浩展

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透明な井戸に揺らめくかたちあるもの。

飛び散る水しぶきや、 

雨上がりの春空を吹き抜ける風の姿。

舞い上がる記憶を絵の中に閉じ込めたようなシュールな作品群。

廃墟の画家と呼ばれた麻田弘。

画家一家の家に生まれ、精神的な不安定さも抱えていた麻田は、

描くことは箱庭療法のようなものだと述べています。

1997年、京都市龍安寺のアトリエで 自ら命を絶つた画家の、

没後20年を回顧する展覧会です。

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麻田浩さん。*1パリを拠点に幻想的な風景画を生み出し続けた西洋画家です。 自らの心象を通して描かれた独特の情景は、文芸評論家の粟津則雄が「外を見るとともに自分自身の底知れぬ内面をのぞき込んでいるようなまなざし」と評しました。

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没後20年の回顧展は東京と大阪の2会場で開かれています。

練馬区独立70周年記念展 没後20年 麻田浩展 ―静謐なる楽園の廃墟―

会場:練馬区立美術館

会期:2017年9月28日(木)~11月19日(日)

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平成29年度秋季特別展 没後20年 麻田浩 ~小さな絵の世界~

​会場:南丹市立文化文化博物館

会期:2017年9月30日(土)~11月26日(日)

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下絵をきっちり描かずに描いたり、

絵の具を塗りつけた紙を半分に折り、塗りつけた絵の具を転写 させる

デカルコマニーという手法を取ったり、

画家は様々な手法を用いて心象風景を表しました。

「大部分のモチーフは意味が分かっていない。

様々な解釈が可能で、長く止まって考えながら見る来館者が多い」と

真子みほ学芸員は言います。

 

練馬区立美術館では大作を中心とした代表作を一堂に展示。

南丹市立文化博物館では、中小の油彩作品に加え、

これまで未発表のドローイングや新聞のカット原画などが展示されます。

麻田浩オフィシャルサイト

*1:(1931~1997)京都生まれ。父は日本画家・麻田辨自(べんじ)、兄は日本画家・麻田鷹司。​油彩画を学ぶ。ヨーロッパで見た古典絵画に影響され、シュルレアリスム的手法の具象画に画風が変化する。