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チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

プロフェッショナル 仕事の流儀「平成の絵師、幻の色に挑む 彩色復元師・荒木かおり」

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「平成の絵師、幻の色に挑む 彩色復元師・荒木かおり」

平等院鳳凰堂、二条城二の丸御殿、西本願寺御影堂・・・。世界に誇る日本の宝を未来につなげるひとりの女性がいる。荒木かおり(58)。経年劣化して色褪せた国宝や文化財の色彩をよみがえらせる職人だ。
世界中から称賛されるその技術の最大の特徴は、科学の力を駆使した忠実な再現力にある。
数百年を経て、柄と色が判別できなくなった柱や彫刻の彩色復元は困難を極める。荒木は業界でも異例と言われる高精度の科学調査をもとに、当時の生活習慣、作者の筆使いの癖まで細かく調べ上げることで、国の宝を次々とよみがえらせてきた。
この秋挑んだのは、国宝・清水寺に残る400年前の獅子の彫刻。これまで遭遇したことのない色の痕跡が見つかる中、浮かび上がってきたのは、美術史の常識を打ち破る大胆な仮説。たどり着いた驚きの事実とは!?
古都・京都で歴史を未来に伝える“色のミステリーハンター”の闘いに、密着。

www.nhk.or.jp

 

彫刻や絵画などの国宝が本来はどのような発色をしていたか。高度な科学調査と復元の技術を駆使した作業が見所です。 主人公の著書は見つかりません。この分野の情報はあまり多く出回っていないので、番組への期待が高まります。

 

国宝 よみがえる色彩 (双葉社スーパームック)

国宝 よみがえる色彩 (双葉社スーパームック)

 

 

日曜美術館「グラナダ 魂の画譜 戸嶋靖昌」その2

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 日曜美術館グラナダ 魂の画譜 戸嶋靖昌」その2 

 

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アルハンブラ宮殿で知られるスペイン南部の古都グラナダ。ここは700年間におよぶカトリックイスラムの戦いで多くの血が流された町です。

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旧市街地アルバイシン。迷路のように入り組んだ細い路地と坂の町です。もともとはイスラム教徒の居住区だったため、エキゾチックな雰囲気が漂っています。1976年、戸嶋はここアルバイシンを自分の居場所と決めました。

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この三階建ての細長い住宅が戸嶋の住居兼アトリエでした。泥棒やスリが多発する地域でしたが戸嶋は全く意に介しませんでした。窓から見える景観に魅かれたのです。華やかなアルハンブラとは対照的な落ち着いた旧市街。戸嶋をとらえたこの風景は何枚もの名作として残されています。

 

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代表作の一つ「街・三つの塔~グラナダ遠望~」。
この絵にはグラナダの深く、重い歴史が刻み込まれています。
グラナダには内向的な一つの悲しみがある。だから魅かれるのだ」
グラナダに移り住んでまもなく、戸嶋は教会のさい銭箱をあさる老女に気づきます。不思議なことに街の人は彼女をとがめませんでした。

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老女の名はベルタ。グラナダの名門の令嬢でしたが、歴史の波に翻弄され没落し、貧しい晩年を送っていました。人々が彼女の行動を黙認したのは街の誇りであったベルタの一族に敬意を表したことからです。

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「老女・ベルタ」

戸嶋のリアリズムを理解するうえでその第一段階ともいうべき作品です。

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戸嶋は誇り高いベルタの精神に、スペインの重い歴史を感じ取ります。それを表現するために、写実を排し、ゆるぎない堅牢な岩のように描きました。彼女の気高い魂の輝きは白を使って表現しています。魂は内面から発する光。その後の戸嶋芸術の特徴となります。

 

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ベルタの制作風景を見ていた人がいます。スペインで活躍する彫刻家の増田感さん。
戸嶋と同じ時期にグラナダで暮らしていました。
「戸嶋さんは人間性とか、その人の奥深き人生のドラマ。なんかそういう風なものを見つめられておられた気がしますね。表面をただ単に追って描くんじゃなくて、もっと内面的なもの。中から出てくるもの。それが欲しかったのではないでしょうか」

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これもベルタの像です。窓から差し込む光でベルタの魂が輝きます。
「ああ、いいタッチで描かれているなと思って見てたら、急にパレットナイフ持ち出してダダダッと消されるんです。僕はもったいないなと思ったのですが。一編に描き上げるものではない。何度も何度もやり直して、パレットナイフで削り上げて、その上にまた描く。人はわからないかもわからないけど、その深さ。彼の。自分を刻むようにパレットを使ってました」

 

戸嶋が模索するリアリズムは49歳の時、さらに深化を見せます。それはある女生との運命的な出会いがきっかけでした。

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道化師や舞台女優を生業とするフランス人のクリスティーヌさん。彼女よって肉体と魂という重要なモチーフに取り組みます。エネルギッシュで底抜けに明るいクリスティーヌ。戸嶋は彼女をモデルに肉体のリアリズムを模索していきます。

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クリスティーヌを描いた作品。一見、絵の具が盛り上がって見えますが、実は薄く塗られています。

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暗い背景から徐々に現れ出てくるかのようなクリスティーヌの存在感。戸嶋は自らが探し求めるリアリズムに手ごたえを感じ始めます。

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クリスティーヌの肉体がカンバスに溶け込むように描かれています。
クリスティーヌの姿を一度溶解し、そこから自らの魂で再び形を生み出すというリアリズムです。
「肉体は朽ちはてるものであって、本質的には存在していない。腐っていく過程こそが肉体なのだ。だから愛情がなければそれを見つめることはできない」

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「私を描いた作品を見たときは衝撃的でした。私の奥深いところを捉えていたからです。モデルをしている時に何をしていても無関係でした。戸嶋は常に求めていたものを捉えました。美しい部分だけではなく、醜い部分もとらえたと思います」

 

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酒場でも戸嶋は自分の心を捉えるモデルを探していました。

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戸嶋が酒場で見つけたモデルの一人、ミゲール。あるミール中毒で、定職を持たない男でした。しかし戸嶋はその肉体に強い魂を感じました。

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アルバイシンの男~ミゲールの像~」
瞳は心を映し出す窓。人の感情がもっと見現れる箇所です。画家なら誰しもはっきりと描こうとしますが、戸嶋は違いました。戸嶋は形だけを忠実に模して描こうとはしませんでした。それは、いつわりの魂を描いてしまうという危うさがあるからです。眼を描くにあたって、色を幾重にも重ねて、自然に生まれ出るようにしたのです。

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「ミゲールは奥底に無欲のエレガンスをもっている。彼は無だから全てでもあるのだ」

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展覧会を企画したスペイン外務省の文化担当サンティアゴ・アミーゴ・エレーロさんはこういいます。「戸嶋の作品で特に印象深いのは光です。遠くから見ると暗闇のようですが、近づくと輝きます。ペラスケスと戸嶋の共通点があるとしたら光だと思います。内面性が戸嶋の作品を力強くしています。これはベラスケスにも見られるものですが、戸嶋も人生を通じて内面の力強さを追求しました」人物描写を通じて自分のリアリズムを見出そうとした戸嶋。終生、人物を描くことに強くこだわりました。

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「人体そのものの描写は、19世紀でモチーフとしては終わりです。しかしなぜ取り組んだかというと、人体の中に生きる物に共通する力があったからです」

 

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1995年。戸嶋は絵を描くためにグラナダを訪れた奥田瑛二さんに出会います。戸嶋61歳。奥田さん45歳でした。

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20年以上の歳月を経て戸嶋作品と再会した奥田さん。グラナダで戸嶋が描いていた作品を見て、当時の記憶がよみがえってきました。
「何をやっているんだ貴様はって言われて、役者ですっていったら、あ、そうか。役者ってどういうものか。と言われたとき困りました。この人というのは、絵を描く対象の人物がいて絵を描いているのですが、その人の血と自分の血が混ざりあうような感覚ですかね、相手の血なのか自分の血なのか、見えない距離感の中でそれが呼応しあって混じりあうというか、筆運びが違ってくるのだという気がします」

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戸嶋が創設に尽力したタジール・デ・アルテ(芸術家たちの交流の場)。

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ロビーには戸嶋の作品や若手画家が描いた戸嶋の肖像画が飾られていました。戸嶋はここに集う多くの芸術家の注目を集めていました。

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「戸嶋は一切、大物ぶった態度はとらず、ああしろこうしろと言いませんでした。しかし作品の評価を求められたときは、決して意見をごまかしたりはせず黙ることなくはっきりと意見を述べていました。戸嶋は私たちの精神的な父親でした」

 

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タジール・デ・アルテで一人の若手芸術家が戸嶋を捉えました。版画家のホアキン。ともに芸術を語り合えるかけがえのない友でした。しかし彼は病のため37歳で亡くなりました。

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戸嶋はいつも花梨をくれた亡き友を偲んで花梨を描き始めます。花梨を描くということは、戸嶋が生命と魂という命題を植物まで広げたことを意味します。戸嶋は花梨を何日もアトリエに放置して、腐っていく様子を凝視しました。生命が消えていく瞬間を見届けたかったのです。

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「花梨には、はつらつとした生命の息吹と、腐りゆく生命の悲しみが同居している」

 

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グラナダ大聖堂。戸嶋の心をいやしてきた場所です。制作で疲れた心をパイプオルガンの調べにゆだねてきました。戸嶋の画家生活は妻からの仕送りで支えられていました。清貧な生活の中で、懸命に描き続けましたが作品を手放すことはほとんどありませんでした。

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1998年。日本から深刻な知らせが届きます。長年戸嶋を支えてきた妻曰子が重い病に倒れたのです。戸嶋は直ちに帰国。看病もむなしく翌年妻は逝去。戸嶋もまた病に侵され、2006年7月、72歳でこの世を去りました。

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書籍

孤高のリアリズム

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日曜美術館「グラナダ 魂の画譜 戸嶋靖昌」その1

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日曜美術館グラナダ 魂の画譜 戸嶋靖昌」その1

 

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秋田県で育った戸嶋靖昌は、1953年武蔵野美術大学の西洋画科に入学しました。入学当初から優れた才能を示し将来を嘱望されるようになります。
画家の甲田洋二さん。蔵野美術大学時代の後輩です。

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「戸嶋さんは入学したとき住まいがなくて学校に住んでたのです。一種の無頼派でしょうね。実生活のことを気にしないで、まず自分の造形に関してできるかぎりそこに注ぎ込む」

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3年生になると彫刻の勉強も始め絵画と彫刻。その両方で技量を上げていきます。

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青を基調とした裸婦像。戸嶋30歳のときの作品です。セザンヌの影響も見て取れる力強い色と彫刻的な造形。対象の実在感にいかに迫るかを日夜追求したことがうかがえます。

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33歳の時、銀座の一流の画廊で古典を開きます。暗い色調。画廊はいま流行の明るい色調を使うよう進言します。

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しかし、戸嶋は拒否。汚い色を使いこなさなければ本当の美しさは出てこないと、信じていたのです。戸嶋は画壇に出る大きなチャンスを逃します。1970年。このころ戸嶋は近くの神社の森をたびたび訪れて作品にしています。f:id:tanazashi:20170122153348p:plain

出口の見えない、暗く閉塞感に満ちた森。当時の心境が色濃く反映されています。戸嶋は絵を描くことに深い行き詰まりを感じていました。人間性はもとより、その人が背負ってきた歴史までをも描きたい。どうすればそこに行きつけるのか。若い戸嶋は苦闘します。

 

f:id:tanazashi:20170122153351p:plain1970年。世間を揺るがす大事件が発生します。作家・三島由紀夫の割腹自殺。三島の文学や美意識に共感していた戸嶋は強い衝撃を受けます。そして、画壇の名声や富のむなしさと決別して日本を離れることにします。

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40歳となった戸嶋は、妻子を日本に残し、単身海を渡ります。その地はスペインのマドリードでした。

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スペインが世界に誇るプラド美術館。戸嶋は毎日のようにここに通いました。自ら求める新たな芸術を生み出す上で不可欠な作品があったのです。その作品とはスペイン・バロックを代表する画家・ベラスケスの作品群でした。

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最高傑作「ラス・メニーナス」。世界三大名画の一つです。
多くの人物が集う空間。その場の空気感まで描き切ったベラスケス。戸嶋はその描き方の根源は何かと探りました。
例えば遠くから見るとリアルに見える衣装やブローチなどは、近づくと大雑把な筆運びで描かれています。こうした技法がベラスケスのリアリズムを支えているのです。戸嶋は美の対象に向かう時、その都度言葉を残しています。

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「ベラスケスの絵は崇高なものだけを求めている。崇高とは生命の神秘と悲哀だ」

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ベラスケスのリアリズムに触れた戸嶋。その姿を追ってベラスケスの故郷の近郊に移り住みます。

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聖母・マリアの誕生を祝うアスナルカサルの聖体行列。戸嶋も見たこのカトリックの祭事は毎年9月に行われるものです。町は宗教的な熱狂に包まれ、人々は目に見えない神の存在をリアルに感じます。スペインでは今も生活に根差した敬虔な信仰が生きています。戸嶋はこうした宗教体験に触れて自分が求める新たなリアリズムのヒントを得ていきます。

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聖体行列の世話役サンチェスさん。彼は戸嶋の作品を持っているといいます。
今まで全く知られていなかったその作品を見せてもらうことにしました。絵のモデル、サンチェスさんのおばは小間物屋と魚屋を商う女性でした。

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戸嶋は日頃の感謝の気持ちを込め、作品をプレゼントしました。この油絵はスピード感のあるタッチと大胆な省略で描かれています。細部が描かれていなくてもモデルの温かい人柄が伝わってきます。

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「幼いころからこの作品の筆遣いと色合いに衝撃を受けてきました。まるで話しかけられているというか、じっと見られているかのようです。僕は絵の中に伯母さんを強く感じます」
人々との交流を深めながらスペイン社会になじんでいきました。

 

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戸嶋がスペインを選んだのはベラスケスに加えて、もうひとつ大きな理由がありました。

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「死にゆくキリスト」日本にいるときこの作品を画集で見て強く魅きつけられました。
イエスの凄惨な姿が一切美化されることなく再現されています。イエスが人間の贖罪のために払った苦しみを忘れないためにリアルに表現しているのです。

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その生々しい姿を見た人々はあたかも自分が目撃したかのように感じるのです。生命の根源。魂までをも描きたいという戸嶋は、ここでの体験で多くの発見をしていきます。

 

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書籍

孤高のリアリズム

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サイト

shigyo-sosyu.jp

日曜美術館「グラナダ 魂の画譜 戸嶋靖昌(としまやすまさ)孤高のリアリズム」

日曜美術館

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日曜美術館グラナダ 魂の画譜 戸嶋靖昌(としまやすまさ)孤高のリアリズム」

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スペイン・グラナダで生涯、独自のリアリズムを追求した知られざる日本人画家がいた。戸嶋靖昌(としまやすまさ)。清貧な生活の中で人間の魂を描き続けた戸嶋芸術に迫る。

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スペイン・グラナダで生涯をかけて独自のリアリズムを追求した知られざる日本人画家がいた。戸嶋靖昌(としまやすまさ)。その絵画には人間の魂を強く感じさせる圧倒的な存在感がある。戸嶋は40歳の時、スペインに渡る。プラド美術館のベラスケスの芸術に出会い、人間の生命感あふれる絵画はいかにすれば描けるのかを探求。グラナダの人々との交流の中から、魂の気迫に満ちた作品を生み出した。圧巻の戸嶋芸術の魅力に迫る。

【ゲスト】奥田瑛二,美術史家…小池寿子,【司会】井浦新,伊東敏恵

 

放送日

2017年1月22日

 

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2006年。一人の画家が亡くなり、800点もの絵画が残されました。死後2年して修復作業が始まり、今も続いています。その大半はカンバスを覆うカビなどで大きなダメージを受けていました。修復を担当した人は絵の持つ迫力に驚かされました。f:id:tanazashi:20170122091243j:plain
「修復をしていても、今どこの部分を修復しているのかと思うのですがも遠くで見た時にいっきに作品が浮き出てくる」。

本来の姿を取り戻した作品の圧倒的な存在感。未知の絵画が次々と世に出て、多くの人々の心をつかみました。f:id:tanazashi:20170122091236j:plain

その画家は戸嶋靖昌。実像を知る人は極めて少ない。戸嶋は25年近く、スペイン・グラナダでひたすら絵を描き続けました。その戸嶋とグラナダで出会い、強烈な印象を受けたのが俳優の奥田瑛二さんです。

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「短刀ではありませんが、突き付けられたみたいなクッと強い。まさに戸嶋さんの眼と同じで深淵から突き刺す。何を見ているのか。本質以上のものを見られているような感じがして、この人物だからこそこの絵なんだというのが印象でした」

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富や名声には見向きもせず、自らが信じる芸術にまい進した日々。知られざる画家。戸嶋靖昌の世界に迫ります。 

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戸嶋靖昌の絵はさらに深化していきます。グラナダ時代の足跡を振り返ります。 

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取材先など

 

放送記録

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書籍

「孤高のリアリズム」執行草舟 著(講談社エディトリアル)

戸嶋靖昌は、ひとつの直接性である。文明を突き抜け、それを抉り、つんざいて進む。
孤高に生きた画家・戸嶋靖昌のリアリズムへの想いに、モデルとして、また友として交流のあった著述家・執行草舟が迫る。画家と交わした芸術論を含め、渾身のエッセイで戸嶋芸術を世に問う決定版! 西洋美術史の第一人者・小池寿子が本書に寄せた論文「戸嶋靖昌存在の地層」も合わせて収録しています。 

孤高のリアリズム

孤高のリアリズム

 
 

展覧会

戸嶋靖昌記念館は、画家として72年の生涯を生き、多くの作品を残した画家・戸嶋靖昌を、晩年に親交を結んだ著述家の執行草舟さんが遺志を受けついで、戸嶋芸術を保存・継承を目的に設立された記念館です。東京都稲城市の本館はアトリエ兼住居を保存しています。東京・麹町の分館は戸嶋の作品と遺品を保存し随時展示しています。

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右手を失って自らの言葉を語ることが出来たすずさん

アニメーション

右手を失って自らの言葉を語ることが出来たすずさん。

心に刺さります。自分の言葉で語ることは、簡単なようでいて出来ることではありません。語れないままでいることの苦しさに耐えかね、一歩踏み出すことの意味に思いを巡らすたびに自分が問われる気がします。かけがえのない作品に出会えたことをありがたく思います。

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精神科医の齋藤環さんとの対談で、片渕須直監督が主人公・すずの声を演じたのんさんと役作りにまつわる制作秘話を語っています。(美術手帳2月号)

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片渕 映画では最初「右手」という配役を建てるつもりでした。すずさんは自己表現が苦手な人で、絵を描く右手でしか表現できない心の中のものを持っている。けれど、それを奪われたとき、それまで表に出なかったものを口から表すしかなくなるわけです。だとしたら右手まで喋ってはいけないだろうと。ならば言葉ではなく音楽で表そうと思ったのです。

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この映画には象徴的な記号が相当な量埋め込まれています。何気ない台詞や、見過ごしてしまいそうな花や動物にまで作者のメッセージが込められています。それを読み解くのもこの作品の持つ楽しさだと思います。

一度見終わって強い印象を感じたのが右手の扱いでした。番宣などで使われる広島市街地をエンピツで描こうと手を上げるすずさんの絵が象徴しています。右手の持つ意味を考え続けることが物語の奥深い世界の扉を開ける鍵だったのだと、監督の話を聞いて改めて思いました。

片渕 のんちゃんは、すずさんという人物を一生懸命演じてくれました。(片渕監督と)たくさんの質疑応答を繰り返して、深く理解して、役作りしたいという気持ちをこちらに向けて来ました。最初の頃に「すずさんの心の中に何か疵(きず)のようなものがあるのでしょうか」という質問を受けました。のんちゃんは、一見のどかに見えるすずさんの中にも必ずあるはずのそうした疵を核として演技を作り上げていこうと思ったようです。

こちらからは「すずさんはおそらく自分が空っぽだと思っている。それをさらけ出すことが出来なくて、何かを喋ろうと思ってもうまく話が出来ず、いつもニコニコ笑っている。でも、すずさんの本当の想像力は心の床下にしまい込まれていて、それを専ら右手で絵を描くことで表現している。絵が描ける能力は素晴らしいのに、そのことに気づかず誇ることもない。もしすずさんの心に疵があるとしたら、自分は大したことがない人間だと思い込んでいることだろう」と話しました。

 

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、片渕監督は『この世界』は、曖昧な主体を持つ人の存在の焦点が、だんだん結ばれていく作品だと思う。とも語っています。「自分とは誰なのか、ふつうは大人になることによって、その疑問を感じなっていくわけだが、そうでない人もいる。こうのさんはそんな大人のための読み物を描いてきた」とういう話に、細い針のようなもので心の鍵穴を探り当てられた気がしました。

片渕 すずさんの台詞の半分は「心の声」として発しているモノローグなんですよ。それが絵を描いて表現する手段を失うことで大きく変わっていくんですね。

 ラスト近くですずさんが夫の周作さんに「ありがとう。この世界の片隅にうちを見つけてくれて」と言う台詞について、のんちゃんは、「ここはすずさんの口が動いていて、心の声になっていません。今までのすずさんは、周作さんの前でこういうことを絶対に口にしない人だと思って役作りをして来たんですが」と言って来たんです。確かに、それまでのシーンでは、こうした台詞は心の声としてモノローグで描いてきたんですね。

 

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片渕監督は、原作を読み、これは自分にとって大事な作品なのでアニメにしちゃダメなんだと思いました。と語っています。子どもや若者ではなく大人の反応から広められないかなという監督の思いは、若くはない観客の抱いていた気持ちをすくい上げてくれたように思います。 

 

美術手帖 2017年2月号

美術手帖 2017年2月号

 

 

 

アートファンにお奨めの劇場版アニメーション

アニメーション

youtu.be

この世界の片隅に」を筆頭に、「シン・ゴジラ」「君の名は。」など、2016年は時代の節目を感じさせてくれた劇場版アニメーション大豊作の年でした。2017年期待の劇場版アニメ-ションを"アートファン目線”でピックアップしました。

 

 

傷物語Ⅲ -冷血篇-

原作は西尾維新傷物語」。「魔法少女まどか☆マギカ」の新房昭之氏が総監督。キャラクターデザインは渡辺明夫。アニメーション制作は「この世界の片隅に」「ユーリonアイス」のシャフト。

youtu.be

www.kizumonogatari-movie.com

脚本についていこうとすると置いてきぼりにされる作品。数回に分割されたテレビシリーズも意図的に前後ばらばらに公開されているため、予習が必要な面倒くささがあります。そこがファンにとってたまらない作品といえそうです。

劇場版 甲鉄城のカバネリ

進撃の巨人」を手掛けた荒木哲郎氏が監督、「プラネテス」「コードギアス」で知られる大河内一楼氏がシリーズ構成・脚本を担当。美樹本晴彦氏がデザインした作品の総集編。

youtu.be

kabaneri.com

テレビ版では第一話に予算の大方をつぎ込んだ映像のクオリティでした。

劇場版 ソードアート・オンライン-オーディナル・スケール

全世界シリーズ累計1900万部発行の大人気小説を原作者 川原礫 書き下ろし完全新作オリジナルストーリーで映画化! シリーズで1,500万部を売り上げた川原礫の代表作です。凄い数字ですね。

(ちなみに村上春樹1Q84が全6巻で314万部という報告があります)

1Q84は累計部数は314万部 : 【待ってました!】村上春樹、3年ぶり新作長編を発表!!4月刊行予定 - NAVER まとめ

youtu.be

sao-movie.net

数年前に公開されたテレビ版はオンラインゲームを舞台とした、時代を先取りした作品でした。作画やストーリー展開にも破綻がなく完成度の高さが印象的です。 

モアナと伝説の海

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが制作する56作目の映画

ひるね姫 ~知らないワタシの物語~

攻殻機動隊』『東のエデン』シリーズなどの神山健治監督が手掛けたアニメーション。岡山県倉敷市児島を舞台に、瀬戸大橋のたもとののどかな町で暮らす親子の絆を、夢と現実を結び付けつつ描写する。

youtu.be

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夜は短し歩けよ乙女

2010年「四畳半神話大系」を監督し、「マインド・ゲーム」以来の2度目となる文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞した受賞湯浅政明氏が監督をつとめる作品。

youtu.be

kurokaminootome.com

童話をイメージするような独特な揺れた線、斜めに傾いた不思議なパースなどを駆使した独自の世界観は一度虜になったら抜け出られません。松本大洋原作の「ピンポン THE ANIMATION」では監督・全話脚本・全話絵コンテを務めました。 

 

上映予定上映予定(1月~7月頃)

1月
傷物語Ⅲ -冷血篇-
劇場版 甲鉄城のカバネリ 後編 総集編
チェインクロニクル ~ヘクセイタスの閃(ひかり)~ 第2章
黒執事 Book of the Atlantic -

2月
虐殺器官
こんぷれっくす×コンプレックス -
魔法使いの嫁 -星待つひと 中篇-
LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五ェ門
劇場版 青鬼 THE ANIMATION
チェインクロニクル~ヘクセイタスの閃(ひかり)~ 第3章
劇場版 ソードアート・オンライン-オーディナル・スケール
宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第一章
劇場版 オーバーロード 不死者の王(前編) 総集編
デジモンアドベンチャー tri. 第4章「喪失」 OVAの先行上映
劇場版 トリニティセブン-悠久図書館と錬金術少女

3月
映画 ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険
劇場版 プリパラみ~んなでかがやけ!キラリン☆スターライブ!
モアナと伝説の海
劇場版 オーバーロード 漆黒の英雄(後編) 総集編
SING シング 
ひるね姫 ~知らないワタシの物語~
映画 プリキュアドリームスターズ!
結城友奈は勇者である -鷲尾須美の章- 第1章 テレビ6話の先行劇場上映
劇場版 黒子のバスケ LAST GAME

4月
レゴバットマン ザ・ムービー
夜は短し歩けよ乙女
映画 きかんしゃトーマス 走れ!世界のなかまたち
結城友奈は勇者である -鷲尾須美の章- 第2章 テレビの先行劇場上映
映画 クレヨンしんちゃん襲来!! 宇宙人シリリ
劇場版 名探偵コナンから紅の恋歌
映画 かみさまみならい ヒミツのここたま-奇跡をおこせ!テップルとドキドキここたま界-
映画 たまごっち「ひみつのおとどけ大作戦!」※同時上映

5月
BIOHAZARD(バイオハザード): VENDETTA 長編フルCGアニメーション

6月
KING OF PRISM -PRIDE the HERO-
初夏
劇場版 魔法科高校の劣等生 -星を呼ぶ少女

7月
劇場版 ポケットモンスター -キミにきめた!
劇場版 生徒会役員共 -
劇場版 魔法少女リリカルなのは Reflection 前編
結城友奈は勇者である -鷲尾須美の章- 第3章 テレビの先行劇場上映

行列必至・ボストン美術館の至宝展

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ボストン美術館の至宝展

2017年7月20日~10月9日 東京都美術館

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アメリカ・ボストン美術館の主要部門からえりすぐった、珠玉の80点が来日します。古代エジプトから印象派、浮世絵、現代アートまで東西の名品を集めた幅広いコレクションを総合的に鑑賞できるのは40年ぶりです。

 

「子守歌、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン婦人」ゴッホ

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ゴッホが数少ない友人だったルーラン婦人を描いた肖像画です。

「郵便配達人ジョセフ・ルーラン」 

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2点そろって日本で展示されるのははじめてです。

 

「風仙図屏風」曽我蕭白

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「三味線を弾く美人図」喜多川歌麿 

http://www.bestweb-link.net/PD-Museum-of-Art/ukiyoe/ukiyoe/utamaro-6/No.010.jpg

「涅槃図」英一蝶 

http://www.sumitomo.or.jp/images/gai_1402.jpg

英一蝶(1652-1724)作。一蝶の法華信仰の篤さを顕すものとして、また一蝶最大の仏画である点においても大変重要な作品。今回の巡回展に合わせて修復された。

見どころ

ボストン美術館は国や州の財政的援助を受けずに作品コレクションを拡張し続けている世界有数規模の美術館です。開館当時は5千点だった作品は現在では50万点近くにまで上っています。古代エジプト印象派を中心とするヨーロッパ絵画、日本美術の作品も充実しています。これらの名品を収集したのは個人コレクターやスポンサーの活動でした。美術館を支えてきた人々の物語も解説されるので注目です。

 

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ボストン美術館東洋美術名品集

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【絶対に行きたい、世界の美術館、博物館】ボストン美術館

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名品流転―ボストン美術館の「日本」

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