チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

漫勉 萩尾望都

漫勉 萩尾望都 浦沢直樹

「読者を喜ばせたい。そのためには命どこまでも削ってもいいやということなのかもしれない」

「『面白いと思ってくれればいいな』とか『泣いてくれればいいな』とか、だけど笑ったり泣いたり感動したりという感情を揺さぶるのは実は非常に大変なことで、やっぱりこっちも必至でやらないと伝わらないです」

「違うな、寸詰まってるな。これじゃちょっとでかすぎる・・・私は少女漫画が好きなんですよね。いろんな事がその中に入っているし可能性もあるし」

「好きだからこそこの執念があるという感じがします。がんばろう僕もって感じますね」

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「猫ちゃん何匹いるんですか」

「七匹です」

「萩尾先生。僕の勝手な想像だったんですけど、結構ロココなところでやられているイメージがあって」

「みなさんそうおっしゃるんです。私も努力したがダメでした」

「いいだすよね。この漫画家の机周り」

「私だけが何がどこにあるかを知っている」

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「ちょっとこの番組。下書きをあまりしないような人が続いたので、アタリだけでやるような荒武者みたいな人たちが「漫勉」って番組で続いたもので」

「ゴルゴ13とか凄かったですよね」

「安心しますよこれは」(そうですか)

「このテーピングも」

「ちょっと腱鞘炎予防で」

「職人的な感じがしますよねかっこいいですよね」

「これGペン」

「そうですね」

「すごく面白い持ち方をしていますね。だってペン先に人差し指がかかっていますよね」

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「ちょっと言い方変なのかもしれませんが、彫刻刀で彫っているみたいに見えますよね。神秘的じゃないですかこの感じ」

「言われてみると確かに彫っていますよね」

「彫刻と言うよりも人差し指の爪でひっかいている。やはりちょっと猫系ですかね」

「そうか・・だから7匹飼っているのか」

「このちょんちょんっていれる線がなんか隠し味としてなんかあるんだろうなとおもいますよね」

「ペンでアタリ線描いているような感じですよね。ここかなとか言いながら」

「繊細な線の積み上げですよね」

「このチョって・・・繊細だこと。捕らえましたねカメラ。すごいわ・・・。イケメン。目がきれいだ」

「だってこの表情で説得しなきゃいけない。「俺のことを愛して、そんな男はあきらめろ」っていわなきゃ」

「おっと」

「このときは猫がカメラに興奮して・・・」

「萩尾先生が漫画を描きだしたきっかけの頃、誰の影響とかあるんですか」

「展はいる漫画の絵はいろいろ真似をしていたんです。実はいちばん真似したのは横山光輝先生。だいたい顔の大きさが同じで真似しやすかった。結構横山さんの顔のバランスは真似しました。水野英子さんわたなべまさこ先生、牧美也子先生。あそこら辺の目の描き方も真似してみました。睫毛がうまくかけなくってね。どうしてこんなきれいなカーブが出るんだろう」

「睫毛に悩まれていたのか」

「睫毛がない人って言うと、矢代まさこ先生だったので、よし矢代まさこ的にいこうと」

「ほーすげえ。ホワイトで抜いているんじゃないもんな、花残して点描しているんだもんなちゃんと。すばらしいな。このレースもすごい。印刷技術がこれを表現するのにこの時代は追いついていない」

「キュンキュンしてくれるとうれしいです。描いている方もキュンキュンしながら描いているので、キュンキュン度合いが高いと描いていて面白いですね」

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「自分で作ったトーン表です」

「こういうのがあるんだ」

「ボロボロ」

「特に少女漫画という世界はもうイマジネーションをどのくらい広げるかというかんじがしますね」

「浦沢さんよくわかっていますね」

「セクシーなシーンとかやっぱり少女漫画的にわりとあっさり描くんですかね」

「お花がくるくる回ってきたり星が落ちてきたり。実際の肉体的パフォーマンスが面白いこともあるんだけど、ひろがったぶぶんのほうがおもしろいと思っている」

「いつもそこまで追い込むかっていう状況をつくりますよね。追い込まれる人が好きなのか、追い込みたいのか」

「両方好きですよねきっとね。問題に直面している大人を描くのが面白い」

「問題に直面している大人ね。いわゆる天真爛漫な子どもはあまり面白くない」

「子どももやっぱり問題に直面していて欲しい」

「萩尾さんの子ども時代って割と思い通りにならなかった?」

「特に漫画が好きだったせいもあるれど、いちばん大好きな漫画を禁止されるわけですから」

「禁止されていたんですか」

「私親の言うことを聞けない悪い子なんだと思考がいっちゃうわけですね。でもやめられない」

「漫画を描いていることイコール親に背いている」

「完全にそうですね」

「僕は以前伺ってビックリしたんですが、高校生の時に手塚先生の新撰組が最大の転機だったと」

「寝ながら頭の中でずっと話がリピートしていくんですよ。そしたらこのコマだけセリフがどんどん増えてくるんですよ。親友だったのに僕はどうしてこんな事をしなきゃいけないんだ。おまえは私を裏切っていたのかとか、ずっと台詞が増えていく。はっと思って改めて読み返したら、えっ2行しかない。妄想に次ぐ妄想が積み重なっていく」

「僕も地上最大のロボットを5歳の時に読んで、同じようにノース2号が破壊されるシーンとか、こういうシーンこんなセリフがあったと思いながら、それを原作にPLUTOを描いていた。いざ原作を見てみたら本当に描いていない」

「はっは、あなたも」

「同じですよね」

新撰組を読んでからやみくもに私もプロになりたいって、プロ道が着火されたパンって」

「萩尾先生がこの一コマにわっとときめいて妄想に次ぐ妄想を繰り広げていたことが、のちの日本漫画に及ぼした影響たるやすごいじゃないかなと思うんですよね」

「いつ漫画を親に認められるようになったんですか」

ゲゲゲの女房のテレビドラマを見てからです」

 「ゲゲゲの女房ってつい最近じゃない」

「つい21世紀に入ってからですね。お母さんがテレビを見よったらね、水木しげるさんがね、一生懸命仕事しょんなったい」

「そこなんですか」

「そこ・私がおちゃらけたことしていると母はずっと思っていたんですよ」

「はー、本当にそれがわかっていらっしゃらなかった」

「まったくわかっていなかった」

「うちの娘もこれやっていたのか。失礼しましたって」

「すごいな」

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「うわ、寄ったね。これはもうファンの方たまらないね。この目だよね。この憔悴しきったような、この驚愕したり、深い悲しみになったり、そういうときの萩尾先生の目というものは一種独特のものが宿っているような感じがしますよね」

「見て欲しいのはこの目なんですよねこの画面で、爪描いてないですものね、爪描いちゃうとうるさくなっちゃう」(あ、そうです)

「それが主張し出しちゃう」

「指が邪魔なんですよ。でも描かないといけないから、なるべく抜けるところは抜こうと思って、だから目のそばにある指はちゃんと描いて、その他はちょっと邪魔だからぼかす」

「それをすっとさりげなくやるんだよね」

「言い演技ですよね」

「演技をさせるのが面白い」

「ここでシャルルはお母さんに屈しなきゃいけない」

「このなんていうかわがままなダメ男の顔ですよね。目の下のクマがいいですよね。目の下のクマ描くのが最近凄く楽しいんですぼく」

「表情が出ますもんね」

「ある意味少女漫画ていうのは、行きすぎた部分もあるくらい、ちょっとデフォルメされた世界」(あ、そうですね)「演出も過多だしお芝居もちょっと過多だし、ミュージカルとかそれに近い感じがします」

「私も舞台の方が近いかなという感じがします映画というよりは」

「リアルな映像だと全部ちゃんと見せなきゃいけないし、時系列もちゃんと見せなきゃいけないけど、舞台ってちょっとした転換で照明がパッと変わっただけで全く違うシーンができる。なんかそれが少女漫画と似ていますよね」

「ほら舞台の照明みたいじゃないですか」

「あ、そうですね。たしかに」

「舞台劇のにおいがしますね。下からのスポットですよね。バーッとやって暗転ですよね」 

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「二人が組んだところってすごく難しいですよね」

「難しい」

「感情が高ぶっていますしね。そういうときの演技をちゃんと反映しなくてはいけない」

「どこら辺の位置ならきれいにつかんでいるような構図になるか」

「これでも、面白いやり方ですよね」

「思ったより近づきましたね」

「はい近づきました」

「距離感だけでずいぶん演技が変わりますからね」

「そうなんです。手の力の入れ具合がまた変わってきます。つかみ具合とかね」

「こだわりますね。演技ですよね。結局。手のね。ぐいっと」

「これでやわい手で握っていたら怒っていないんだなと読者が思っちゃう」

「萩尾先生は手の表情にこだわられますよね」

「手はね、ずいぶんいろいろなことを語ってくれますね。私、指の表情で最初にすごいショックを受けたのが、ちばてつやさんなんですよ。あの、先生が紫電改のタカとかで、手の甲でキュッと汗を拭くあの色っぽさ」

ジョーもよくやりましたよ」(あ、そうか)

矢吹丈もすっとやるんですよ。あれはね、ちば先生のあれは専売特許ですね」

「あれでもうドッキューンとなっちゃう」

「あれでちょっと伏し目がちにするんですよねちば先生」(そうそうそう)

「漫画家さんはだいたいこういうところで悩んでいますよね。ここに演出があるって、やっぱり重要な演出があるって思ってやっていますからね」

「そうですね、ここで押さえ込んでおかないと」

「ここないがしろにしたらダメだっていうことでこだわっていますからね」

こういう物語の世界が私は救われたしとても楽しいと思う。そういった自分が感動したものをまた(読者に)伝えたい。だけど笑ったり泣いたり感動したりという感情を揺さぶるのは実は非常に大変なことで、やっぱりこっちも必死でやらないと伝わらないです

 

「毎回毎回白紙から違う絵を描くから、毎回初心者みたいな気持ちになりますよね」

「難しい、描いても描いても難しい」

「四十何年描かれているとは思えないぐらい楽しそうですよね描いていて。きっと少女時代に描かれたときと同じ様子で描かれているんだろうなっていう感じがします」

「漫画はやっぱり漫画は少女漫画が好きなんですよね。いろんなことがその中に入っているし可能性もあるし」

「好きだからこそこの執念があるという感じがします。この道を守り通すぞみたいなそういう執念を感じますよね。がんばろう僕もって感じがしますね」

「一日暇があったらずっと絵を描いているわけです。歌手の人なんか舞にい歌っているような感じがしません?お笑いの人とかは毎日ネタを考えているとか・・・そうか、そういう人がいるんじゃないかな。まあ、やめなさいといわれてもやめられるものじゃないですね」

 

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