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100万人の死は統計か

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ズビグニェフ・ヘルベルトについて沼田充義氏が「現代文芸論研究室論集2010」*1の中で引用していると知りました。大きな統計的な数字が人間の想像力を超えた抽象に化してしまうのに対して、詩人が扱うべきは個々の具体的なものだというモチーフです。

ズビグニェフ・ヘルベルトは「コギト氏」(1974)という詩篇の中で次のように書いている。

120万人の戦死者となると

地図の上にさがしてみても無駄なこと

大きすぎる距離が

ジャングルのように彼らを覆う

 

想像力に訴えてこないのだ

あまりに数が多すぎる

最後のゼロという数字が

彼らを抽象概念に変えてしまう。

 

よく考えてみるべきこと-同情の算術

 18世紀イギリスの詩人エドワード・ヤングに「一人を破壊するのは法によれば殺人だが(・・・)、何千人も殺害すれば不滅の名声が得られる」という名句が、同じく18世紀イギリスのビールビー・ボーティアスの「一人殺せば悪党だが、何百万殺せば英雄だ」という言葉が残されていると、沼田氏は書いています。

「100万人の死は統計だ」の一節はスターリンが語ったように言われていますが、その真偽はさだかではないようです。

 

*1:「悲劇と統計 スターリンは本当にそんなことを言ったのか?」