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チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

一人の人間は、もう一人の不幸な人間を見つけて幸せになる

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なぜボランティアをするのか?というボランティア心理について、ホームヘルパーの女性が答えた言葉です。*1

自分より「不幸」な人間を見て安心したい。さらに助けの手を差し延べることで、自分の不遇感を埋め合わせたい心理。そうした心理は、障害者とボランティアに限った話ではなく、健常者同士の人間関係にも広く当てはまる、ありがちな心理なのではないのだろうが

著者の渡辺一史氏は「人と人とが支え合う “美談” でもなければ、善意と共感が渦巻く “感動ドラマ” でもなかった」と述べながら取材を深めていきます。

生きる意味を見つけられず、満たされないまま人生を過ごしていくのはつらいことで、自分の立ち位置を確かめるために他人を見てしまう場合がよくあります。上を見ればつらくなるだけなので、目のやり場は下に向かいます。そのとき、生身の相手さえ見ないでいれば楽なので、誘惑に負けてしまうこともあります。しかし、それは心の底から安心できるものではないのです。 

 

大切なのは、幻想や思い込みに縛られず、目の前にいる障害者の「生の現実」と向かい合ってみることでしかない。そして、あくまでも健常者としての、自分の正直な味方・感じ方を基盤にしながらも、それを踏まえた上で相手とどのような関係を築いていけるかだろう。

作品は、障害者の生き方を対象に張り付きながら綴ったルポでした。視点を変えれば自分の中に深く沈んだものと自分との関係を見つめ直すガイドなのかもしれません。

こんな夜更けにバナナかよ [ 渡辺一史 ]
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*1:出典は「こんな夜更けにバナナかよ」渡辺一史著(北海道新聞社)p120。