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チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

機動戦士ガンダムUC 第12話「個人の戦争」

アニメーション

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 「何をやってるんです!ユニコーンを出します!ラプラス・プログラムの封印が解ければこんなことを続ける理由はなくなるんでしょう?」

「駄目だ。今出れば対空砲にさらされる。掃除が終わるまで待て」

「掃除って…関係ない人がたくさん死んでるんですよ!いいんですか」

「作戦だ。いいも悪いもない・・・行くな。縛り上げて連れてきた覚えはない。こんなはずじゃなかったと思うのはお前の想像力不足だ。敵地を制圧すると言うことはこういうことだ」

「関係ない場所を撃って、逃げる人を踏みつぶして・・こんなの戦争ですらない・・ただの怨念返しですよ!キャプテンはあのときインダストリアルセブンで俺を撃たなかった。こんなこと平気じゃないはずです。やめさせてください。これが戦争だっていうなら、何で俺を砂漠に連れ出したんです。なんでマリーナさんを助けたんです。あの人があなたをマスターって呼ぶのは強化人間だからじゃない。俺がそうだったようにキャプテンにこころを救われたから・・」

「黙れ。おまえを気に掛けたのは箱の鍵だからだ。なびかせておいたほうが都合がいいと思っただけだ。こんなのは戦争じゃないと言ったな。目を開けてよく見てみろ。こんなことが起こるのが戦争だ!主義も名誉も尊厳もない!殺す奴がいて殺される奴がいるだけのことだ!怨念返しの何が悪い!俺達の戦争はまだ終わっちゃいないんだ!」

「そんなの…ジオンの町を焼いた連邦軍と同じ理屈じゃないですか!」

 

「悲しいから…悲しくなくするために人は生きているんだってあんたはそう言った!」
「あんただって分かってるんだ!こんなことしたって何も報われないってことは!」
「何にも知らない小僧が!」
「俺は…俺達はこのときをずっと待っていたんだ!今すぐ降りて手伝いたいくらいだよ!」
「だからって、自分が地獄を見たからって他人にそれを押しつけていいってことは…」
「その減らず口をやめないと本当に」
「こいつをなんとかしろアレク!フラスト!」
「すいませんが今手が離せないんでご自分でなんとかしてください」
「分からない・・俺には分かりませんよ。でも分からないからって悲しいことが多すぎるからって感じる心を止めてしまってはダメなんだ!俺は人の悲しさを・・悲しいと感じる心があるんだってことを忘れたくない!それを受け止められる人間になりたいんです!キャプテンと同じように!」 

 

 

「トムラさん。ユニコーンガンダムを出してください」

「待機じゃないのか?」

 

「ロニやめろ!東側から出て基地へ向かうんだ」

「いいんですか?今降ろしたら狙い撃ちされますよ」

「かまわん。小僧の好きにさせろ…ですね?キャプテン」

「キャプテン。ガランシェールの皆さん。お世話になりました。バナージ・リンクスユニコーンガンダム行きます!」

「俺は箱の鍵じゃない。人間だ。そしてお前は人の力を増幅するマシンなんだ。お前はそのために造られた。人の心を…悲しさを感じる心を知る人間のために。だから、怒りに飲まれるな」

「角割れ!?まだ早いぞ!ガランシェール。なに!」

「あの子が裏切ったというの?」

「箱の封印が解かれる。あなた達は引け!」

「箱の鍵がなぜ邪魔をする!」

 

「カークス!」

「どうした」

「角割れが私を攻撃してきた」

「どういうことだ・・引き時だ!ロニ」

「私達はずっと回り道をしてきた!邪魔をすれば踏みつぶす!」

「まずいな」

「おいおい。動く戦争博物館かよ」

「よくもまああんな機体で」

「だからこそ気を抜くな。あんな執念は俺達にはない」

「なぜこんなことをするんです!」

「そのために生きてきたからだ」

「バナージか!」

 「お前達には感謝しているよ。ガランシェールが砂漠に落ちてくれたおかげで積年の恨みを晴らすことができる」

 「もう手遅れだ。私を止めれば全てが本当に無意味になる。道を開けろ!そして早く角割れになるがいい!」

「駄目だ!ここで殺された人やその家族が、またあなた達への憎しみを募らせてしまう」

「無駄なことを」

「やめるんだ!こんなことを繰り返していたら心が壊れて人間ではなくなってしまう!」

「黙れ!父も母もジオンの残党狩りで死んだ!投降を許されず殺されたんだ。なぶり殺しだ!父の遺志を継ぐためだけに生きて私は今ここにいる。箱など開かずともいい。そんなことで晴れるほど浅い恨みではないのだ。そこをどけ!」

「バナージ」

「リディ少尉!あれを止めないと街が」

「ああ。だがあのパイロットに何を言っても無駄だ。破壊するしかない」

「力づくでは何も解決しません!彼女は囚われているだけなんです!本心じゃない!止めてみせます」

「そうさ。囚われているんだよ。決して解けない血の呪縛にな」

「聞いてくれ!ロニさん。これは君が本当にしたいことなのか?本当の君はそれでいいのか」

「だって私にはもうこうするしか…他に生きる意味なんて・・ない」

「見つけるんだ。憎しみや怒りが生きる意味なんて悲しすぎる」

「理不尽には怒るのが人間だ。人は神じゃない!」

「それでも!止めなきゃ駄目なんだ!」

 

「正気かバナージ!」

「止まった」

「お父様・・お母様・・私には」

 

「援護する。撤退しろ」

「ワッツ」

「気を抜くなと言った。残弾一か」

「ロニ・・・お前は・・・俺達のようにはなるなー!」

「グッ!カークスをやったのか・・連邦がまた奪った・・私を守ってくれた人を・・最後の家族を!私の居場所はもう・・ここだけだ!」

「抗えないのさ・・現実には!」

「俺は・・俺は彼女を止めたい・・止めなきゃならないんだ!ガンダム・・俺に力を貸せ!」

「体調。あれは・・」

「どけ!」

「バナージ何してる!撃て!」

「邪魔をするな!思い知れ!思い知れ!」

 「この淀んだ黒い感覚・・こんなものに染まっていくことに意味なんかないよ」

「飲のまれては駄目だ!ロニさん!」

「子どもが親の願いに飲まれるのは世の定めなんだよバナージ。私は間違っていない」

「それは願いなんかじゃない!呪いだ!」

「同じだ!託されたことを成す・・それが親に血肉を与えられた子の、血の役目なんだよ!」

「お前のその力も親の与えたものだろうに!」

「これは・・私の戦争なんだ!」

「乗れ!バナージ!」

「あの反射板の反応速度を超える必要がある!ビーム・マグナムは?」

「残弾1です」

「一発勝負だな」

「リディさん」

「やるんだ!街を守るにはそれしかない!迂回して」

「ジーク・ジオン…ジーク・ジオン…ジーク・ジオン…ジーク・ジオン!」

ロニさん戻ってくれ」

「あきらめろ」

「ロニ・・俺達の戦争は終わったよ」

「あ・・・ああ」

「バナージ。このまま撃て!可能性に殺されるぞ!そんなもの…捨てちまえ!」

「ああーつ!」

「バナージ・・・。悲しいね」

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「撃てません!!!」

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ガンダムUCシリーズに込めた制作者の思いが伝わる12話でした。

「悲しいね」と留めた部分は相当の悩みどころだったのだろうと、考え込んでしまいました。想像する余白を感じさせる作品は心に残ります。「悲しいね」と閉じてしまうと、努力は報われない。ニュータイプに未来はない。とつながる連想に向かいます。

それは、ナタのような刃物でぶつ切りされたような痛みです。消されることになったロミは、おそらく悔恨の情を抱えたままこの世を去るのでしょう。

バナージの心の中にも「救えなかった」という楔のような痛みが残るはずです。痛みは点です。本作のメッセージにこのエピソードを重ね合わせると、点でいいのか?という気持ちが残ります。ロミを昇天させるには未練を消してやる必要があったのではないかと思います。いかなる戦いも無意味であることが言葉の使い方でより強く伝えられたのではないかと感じました。

正義とはなにかが作品の底にながれる世界観とするならば、「悲しいね」というより「ありがとう」という言葉がロミの口から出て欲しかったように思いました。

 

 

 脚本:むとうやすゆき