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チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

ずっと何かを探している。

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「お前が世界のどこにいても、俺が必ず、もう一度逢いに行くって」・・・映画「君の名は。」のセリフです。

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お互いに相手の素性がわからないまま、突然心が入れ替わってしまった男女の交流を描く新海誠監督の新作です。初日だけれど、郊外の映画館それも朝早い時間だからと甘く見ていましたが到着すると残席僅少。午後は全回満員の大盛況です。

 

blog.kenfru.xyz

 

新海作品の特徴である背景画の透明感。とりわけ光源から放たれる光の屈折や反射の描き込みがクリアで、眺めているるだけで心が洗われる気分です。商業作品の積み重ねが経験値となって、これまでやや物足りなさを欠いていた人物描写や、ストーリーの回し方も大幅に強化されたように感じられます。

男女の中身が入れ替わる設定は珍しいことではありません。ですから前半はやや既視感を感じました。しかし、丁寧に細かく描写される日常のディテールが飽和点に達したとたんに事態は急変、怒濤のように物語は流れはじめます。

評価は他の人に譲るとして、印象に残ったのが本作でたびたび登場するのがドアの閉まるワンカットです。電車の扉、障子の閉まる場面、教室の扉。画面の奥から扉が迫ってくるカットはほかのアニメ作品ではあまり使われなかったような映像です。それだけではあまり意味のない映像が、繰り返されるうちに心に響いてきたのは意外な経験でした。この作品ではほかに、主人公が髪を束ねるのに使ったヒモも小道具として重要な役割を果たします。「つなぐ」ものと「閉まる=切断する」ものの暗喩が、観客の奥底に小さな波紋となって届いたのでしょう。波紋の共振が鮮明な映像美と、強いメッセージの台詞を伴うことで心に届く作品になったように思います。

「忘れたくない人、忘れたくなかった人、忘れちゃだめな人」の連打は爽快ですね。

さて、「シン・ゴジラ」でも描かれていましたが、話題作に共通した設定、物語の根っこには3.11の体験があります。未だに癒やされない大きな傷となって私たちの心の中に残されていることを痛感します。