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チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

日曜美術館「アートの旅 あいちトリエンナーレ編」

日曜美術館

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そもそも“園ってこういうひとだよね”って言われるのが、いちばんイヤなんです。“園っぽい映画だよね”と言われるその向こう側、もっと先へ行きたいといつも思っています。大好きなピカソのように、タッチがガンガン変わっていく人間でありたい。

映画監督・園子温*1氏のことばには、物作りに欠かせない心の芯を掴むような感覚があります。その監督がたどるアートの旅です。

blog.kenfru.xyz

 

 

日曜美術館「アートの旅 あいちトリエンナーレ編」

 名古屋、岡崎、豊橋で開催されたいる「あいちトリエンナーレ」は、2010年から3年ごとに開催されている国際芸術祭です。3回目となる「あいちトリエンナーレ2016」は2016年8月11日から10月23日にかけて開催します。「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」がテーマです。

アーティスト | あいちトリエンナーレ2016

放送日

2016年8月28日(日)

av98ingram.wpblog.jp

作品紹介

この秋、都市を会場にした芸術祭として注目を集めるのが「あいちトリエンナーレ2016」。名古屋、岡崎、豊橋の三つの街が舞台。愛知県豊川市出身の園子温さんは、高校時代に通った豊橋の街が不思議なアートでいろどられているのを体感、創作意欲をかきたてられる。一体何を見た?時間があったら美術館に通うという若村麻由美さんは、名古屋で、この地ならではの伝統と未来が結ばれる作品に思わず…。一体何に心揺さぶられた?

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・メイン会場の愛知芸術文化センターで展示されている中国出身のリウ・ウェイ*2「緑地」


 

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・フィリピンの作家カワヤン・デ・ギア*3が映画のフィルムで作った4頭の馬の彫刻「24コマ:4幕のパラダイム

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・京都出身のアーティスト久門剛史*4の光と音を使った異空間「PAISE」

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・ブラジルの作家ラウラ・リマ*5「鶏がアートを楽しむ空間」

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・床に白いフェルトを敷き、その上に岩絵の具で花や鳥などを描いた大巻伸嗣*6のアート

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・繊維の街として知られる名古屋市内の長者町の会場にある服をモチーフにした佐藤翠*7の作品。

sakak.hatenablog.com

番組内容

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都市を舞台に、見慣れた風景を一変させる大規模な芸術祭。会場を訪れたのは愛知県出身の映画監督・園子温さんです。

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「アートは自分にとって娯楽ですね。他の分野では楽しめないところを全部。芸術は覆い尽くすというか、自分にとっての楽しみのひとつ。完全な喜びですよね」

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「映写機。これ、リールじゃない。フィルムの」

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フィリピン出身のカワヤン・デ・ギアの作品です。素材は映画撮影のために使用され後に廃棄されたフィルム。それを筒状に巻き、組み合わせて4頭の馬をつくりました。ヨハネ黙示録に登場し、世界の終末を告げるという四騎士から着想を得たといいます。

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「よく映画のイメージにもあるよね不気味な。馬の形をしているけれども全体的には一個一個がミミズのような形をしたものが暴れ出すみたいな、ホラー映画のイメージに近い」

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3頭の馬にはフイルムが付いています。残りの一頭でけフイルムが途中でちぎれています。「ここで映画が終わると言うこと。映画が終わると言うことは世界の終わりであり、すべての終わりの時間が来ると言うことなのだ」

 

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「(アートを見るのは)理屈なく楽しいよね。工事現場のようなものが置き去りにされているところをずーっとぼんやり眺めていられる。街にはアートと言えるものがいっぱい転がっているので僕はそれを楽しむことができる。ロケハンで廃墟の建物に行くと、何か作業の途中で投げ出されたような感覚の物体が放置されている。助監督にこれアートじゃないと言うと、よくわからないという答えが返ってくる。もう大人なんですね彼らは。子供心を失っているのではしゃげないんですね」

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「アートって幼児期の何かをくすぐるモノなんだと思うんです。だってそれは全然役に立たないし、使えるものではないんで便利ではないんですよ。ぜんぜん便利さはないんですけど心だけははしゃげるなんて、そういうものがアートだと思うんで」

 

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女優・若林麻由美さんも同じ会場を訪れました。

中国出身のアーチスト、リゥ・ウエイさんの作品「緑地」。

「人がこの中で暮らしていたこともあったけど、今は廃墟になっている。想い出のかけらだけが存在している。だけど大地は底にあるんだ」

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真っ白い廊下を辿った先に、今回の芸術祭最大の作品が待っています。

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およそ20メートルの空間に華やかな色彩が咲き誇ります。

「心が洗われるような空間ですね」

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「Echoes Infinity 永遠と一瞬」大巻は、世界中から様々な文様を集め、この空間に配しました。さまざまな文化がボーダレスにつながるような空間を出現させたのです。

 

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柔らかな白い生地は特殊なフェルト。その上に色の粉が積もっています。

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作者の大巻さんが会場に来てくれました。「日本画の顔料の粉を贅沢に使っています。スタッフら25人とともに1ヶ月かけて制作しました。文様のカタをフェルトの上に敷き、材料を振りかけていきます。チベットの砂曼荼羅に影響を受けています。作品はただ消え去るのではなく、人がこの上を歩くことで、もう一つの時間と空間を失っていくのです」

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戦後、繊維問屋として栄えた名古屋の一角は長者町と呼ばれています。

「旅する芸術祭・・・」

卸売業者の社屋の中も会場になっています。地元の協力を得て芸術祭は成り立っています。

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地元の愛知で活躍する佐藤翠の作品は少し変わったキャンバスに描かれています。

 

 

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衣服や靴が描かれていますが、よく見ると絵の具の隙間になにか見えます。絵の具が置かれているのは鏡。作品を見ているのに自分の顔を見てしまうのが面白い仕掛けです。

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「面白い。絵から根が飛び出している」架空の植物を水彩で描き、それを切り抜いて押し花のようにパラフィン紙に貼った作品です。作者の今村文も愛知出身です。

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展示スペースも外光をたっぷり取り入れた窓に面しています。光合成しているように感じられます。「生命力。元気をもらった」

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長者町にはいたるところにアートがあります。今村文の作品がある喫茶店。昭和27年の純喫茶、どこか懐かしいインテリアと溶け込むように今村の花が咲いていました。

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会場の一つ岡崎市。徳川家の生誕の土地です。江戸時代は宿場町として栄えました。戦後まもなく建てられたビルも会場です。

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もともとは住居部分だった二階と三階が作品です。題して「帰ってきた 帰ってきた:

横のドアから入って」インドの作家シュレアス・カルレの作品は、住居部分全体の空間です。

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暮らしの痕跡が残る室内には、穴の空いたコップやそこが極端に浅い湯飲み、調理道具を整理できない台所用品が飾られています。カルレは、このビルの隅々まで調べて作品にしました。元々の住人が使っていたものと作者の手によるものが混在した空間はどれがアートなのか問いかけてきます。「普通のものがちりばめられていることで、作者の意図した迷宮にはめられていく。迷宮の中に誘うのをおもしろがってみている」

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市内に建てられた江戸後期の商家・旧石原家住宅の中にあるのが田島秀彦のインスタレーション「窓から風景へ」。畳の上に並べてあるのは様々な色や形のタイルや石のかけらです。ガラスのついたて越しに見る日本の家屋がポップに見えます。「今と120年前をつなぐのがガラスであるのが面白いですね」

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豊川市出身の園監督は小学生の頃過ごした街並みを訪ねました。「小学生の頃はよく漫画雑誌を買って読みました。マンガ読みまくり、映画見まくりの少年でした」

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「学校では型にはめられるような生徒ではなかった。小学生で「カサブランカとかイングリット・バーグマンが好きです」なんてマセたガキはこの界隈にはいなくて、「宇宙語」しゃべっているように言われました」

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古い食堂と隣り合わせのバー。「不思議な斜めの壁が面白かったし、変な感じがして、僕にとってはアートだと思います」

 

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「カウンターの横には小さな四角い穴が空いているのも不思議で、バーのカウンターから大衆食堂がシュールです」

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つげ義春の漫画に出そう。ゴールデン街にぱかっと除いたアートでしょう。間違いなく」

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豊橋市の駅の近くにある雑居ビル。空いているスペースも会場です。

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鏡状の円盤が無数に組み合わされています。どこにでもあるものが集まり、どこにもないものになる。それが久門の作品です。

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「地球が終わって、とある美少女と暮らしていたんだけれど、いろいろCDとかデパートの置き忘れられたものがあって、ある日少女はどこかに去って行ったというお話。あの子はこういうのを置き土産として」その監督の想像力が膨らみます。

 

次に訪れたのは用水路の上に建てられた商店街です。「豊橋に帰ってくると必ずこの辺に立ち寄ったり、喫茶店に寄ったりします。一番好きな場所ですね」

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1960年代に建てられた四階建てのビルにある二重の扉で囲まれた会場に入った園監督は動くものを発見しました。「小鳥ちゃんがいる」県内のペットショップから譲り受けたおよそ100羽の鳥を放したブラジルのアーチスト、ラウラ・リマの作品です。

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床には風景が描かれ、壁には小鳥自身が鑑賞する絵画のようなものが飾られています。

「そこに入った人間が、よそ者という疎外感を抱くことが狙い」とリマは言います。

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人々の日常の空間が、鳥たちのための空間になる。不思議な気持ちになる。かつてない作品です。

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「屋上の景色が面白いね。すばらしいね。マンハッタンに来た気分になるね。よくこういうシーンがあるよね。ニューヨークに」

 

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「私にとってはどんどん余計なものというか、余分なもので満ちていくのが見たいですね。完全に余分なもので、だからアートしはなにか。アートとは何でもないもんなのですね。その存在として日常に溶け込んで、この窮屈な世界を一瞬溶かして欲しい。そういう存在であって欲しい」 

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港千尋・芸術監督は「私たちが生きている現代を象徴するような、呼吸している空気を肌で感じられるような、緊張感を持ちながら、しかし開かれた表現を見ていただけると思います」とカタッ建てます。10月23日まで。ダンスやオペラを滋養円する舞台芸術・映像プログラムもあります。 

 

取材先など

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展覧会

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米国のジェリー・グレッツィンガーが20年以上前に描き始めた巨大な地図「Jerry's Map」(縦約5.5メートル横11メートルの壁一面と床の一部に架空の都市が広がる作品) 

あいちトリエンナーレ2016オフィシャルガイドブック (ぴあMOOK)

あいちトリエンナーレ2016オフィシャルガイドブック (ぴあMOOK)

 

 

 

夢みる人のクロスロード: 芸術と記憶の場所

夢みる人のクロスロード: 芸術と記憶の場所

 

 

 

*1:愛知県豊橋市出身の映画監督、脚本家、詩人、パフォーマー。自主映画出身の映画監督

*2:1972年生まれ、1996年に杭州美術アカデミーを卒業した多次元芸術家。パフォーマンスアート、彫刻、写真、映像、絵画、インスタレーションなど、多くの芸術形式を実践している

*3:1979年フィリピン・バギオ生まれの絵画、インスタレーション、彫刻家。現代のフィリピンまた過去の植民地時代における社会政治的な問題に対する、皮肉めいた、時にコミカルな見方を提示している

*4:1981年京都府生まれ。京都府在住。京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了(2007年)。様々な現象や歴史を採取し、音や光、立体を用いて個々の記憶や物語と再会させる劇場的空間を創出している

*5: Laura LIMA. 1971年ブラジルのゴヴェルナドル・ヴァラダレス生まれ。リオデジャネイロを拠点に哲学と視覚芸術を学ぶ。90年代半ばから、リマは自ら「イメージ」と呼ぶ一連の作品を生み出してきが作り上げた

*6:1971 年岐阜県生まれ。東京藝術大学美術学部彫刻科准教授。アジアパシフィックトリエンナーレ横浜トリエンナーレ2008、エルメス セーヴル店、アジアンアートビエンナーレなど世界中の芸術祭や美術館・ギャラリーでの展覧会に参加している

*7:1984年愛知県生まれ。現在は名古屋市を拠点に制作しています。 色とりどりの服が詰まったクローゼット、高いヒールの靴が勢揃いした棚などの作風で知られる