チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

日曜美術館「美術館への旅・富山県立近代美術館」

富山県立近代美術館
開館は1981年。現代的デザインの建築によりその年の建築業協会賞を受賞しました。現代の表現の最先端を積極的に紹介している美術館の一つです。

 

生きている現代の美術が問いかけてくる


「肘掛け椅子の女」ピカソ

f:id:tanazashi:20160821172844j:plain

青の時代を経て安定期の作品です。どこかギリシアやローマの古典的な雰囲気を漂わせるピカソの落ち着いた気持ちが感じられる作品です。

「座る女」ピカソ

f:id:tanazashi:20160821172825j:plain

それから37年後に描かれたものです。比較すると同じ作家が描いたとは思えないほど画風が違います。実はそこにピカソの特長があります。完成した様式を惜しげもなく捨てて次の段階へとすすむ新しい価値観を執拗なまでに求めた彼の姿がうかがえます。

「真実の井戸」ルネ・マグリッド

f:id:tanazashi:20160821173228j:plain

左足の腿から下だけが描かれています。近くには同じテーマの立体もあります。美術館で見る、体のない足。日常、既成概念でものを見る私たちの前に現れた異物のようなイメージは、ものの存在を疑うことなく信じていること自体を疑う気持ちが交錯して見えてきます。

「スモーカー」トム・ウェッセマン

f:id:tanazashi:20160821175622j:plain

ポップアートの差代表作の一つです。三メートル近い作品を見ると看板のようです。かつて絵画は風景や静物など自然にあるものが対象でしたが、今の都会には自然はありません。ないものを無理に描くのではなく、身近にある人工的な題材がポップアートの素材となっています。

「戸口によりかかる娘」ジョージ・シーガル

f:id:tanazashi:20160821175632j:plain

 人物は塑像のように作ったのではなく、人体から直接型を取っています。古来直接方を取るという手法は彫刻の世界ではタブーとされてきました。その掟を破り彫刻の意味を問いかけたのがシーガルです。そこに凍り付いてしまったかのような時間は文学的です。さらに近代芸術が否定してきたストーリー性を強く打ち出しています。白く塗り固められた人物と対話することで人間の不安や悲しみを受け止める気持ちになれます。

また、この美術館には数多くのポスターがコレクションされています。若い作家は平面では木足りなくなってきているようです。それは時代の強さを感じ、時代に拮抗する自らの強さを前面に押し出そうという力です。かつての絵画と比較すると現代の絵画はより直接的に色や形が見る人にかかってきます。

美術館のオリジナリティは修造、企画、そしてこの美術館の意図するデザインの三つからなると私は考えています。この三つに関してこの美辞ゆっかんは「近現代」に昇天を合わせています。それゆえに、現代の美術が難解ではなく身近な者であることを伝えてくれるのです。

 

永井一正・グラフィックデザイナー 
放送:1988年11月13日

富山県立近代美術館 | The Museum of Modern Art, Toyama