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チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

日曜美術館「美術館への旅・原美術館」

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品川の御殿山の一角に、こんもりとした林に囲まれるように原美術館は立っています。もともとは昭和の初期に建てられた個人の住宅でしたが、その広い屋敷と庭は昭和54年に現代美術の専門美術館として生まれ変わりました。

 

ことごとく既成概念を破壊していった現代アートの作家たち

 彫刻家・飯田善國

モビール」アレクサンダー・カルダー

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この作品は風でかすかに動く彫刻です。風というエネルギーで動かされる彫刻はカルダーから始まりました。彼の影響は大きく、世界中の彫刻家がカルダー以降、動く彫刻を作るようになったのです。

 

「二人の機械工」ジャン・デュビュッフェ

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戦後フランスの重要な作家です。この絵はどう見ても子供が描いたとしか思えないのですが、そこに彼の深い人生哲学があるのです。彼は精神病患者の絵を研究し、学識や先入観を取り払って子供と同じような目で、ものそのものや、生命そのものを感じ取ることをつとめました。そしてそれを直截に表現する彼のスタイルは戦後の美術界に大きな衝撃を与えました。

 

「アルコールの蒸気」ヴォルス

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ドイツの作家です。遠近法を壊し、ものの形を壊しヨーロッパの絵画が築いてきたさまざまなイメージをすべて壊してしまったような作品です。

 

「撃たれた大統領」アンディ・ウォーホル

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実写の写真をもとに作られたシルクスクリーン作品です。彼が評価されたのは歴史上の有名な人物や事件をテーマとして、作品の中に新聞や雑誌の写真を用いた点にあります。写真をシルクスクリーンに転写することで、そこな写されていた記録は「もの」としての人物として、客観的に見えてくるのです。ウォーホルは「あらゆる人がコカ・コーラの瓶のようになればいい」と語っています。これは現代文明に対する痛烈なアイロニーといえるでしょう。

 

 「黒い太陽」今井俊満

アンフォルメル抽象絵画の一傾向で「不定型なもの」の意味です。そのアンフォルメルの旗手の一人が今井俊満です。暴力的な力業の世界です。世界に体全体をぶつけてうめいているようなところがあります。

「フレームD」ロイ・リキテンスタイン

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キャンバスの裏側を描いた、人を食ったような作品です。ウォーホルとは違って新聞や雑誌の漫画をテーマとしたコミックトリップの作家と考えられている彼は、アメリカの大衆の隠された欲望・怨念・嘆きを見事に描き出しています。ポップアートの作家たちは、戦争体験を共有しています。彼らの底抜けの明るさの中にはそんな体験を背景とした、ある諦念が沈殿しています。

原美術館は、現代美術を考える上で欠かせない重要な「仕事」をほぼ網羅しています。そして国内の作家たちが、この時代の世界の動きと有機的につながっていたことも適切に紹介しています。アール・デコ調の建物とそれを取り囲む自然を意識して巧みに配置された作品が独特の雰囲気を作り出しています。 

 

放送:1989年8月27日