チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

日曜美術館「熱烈!傑作ダンギ 国芳(くによし)」

浮世絵といえば、歌麿、写楽、北斎、広重が有名です。しかし、遊び心と反骨精神を合わせ持った江戸のグラフィックデザイナー&クリエィターに絞ると、誰もがその名をあげる絵師が歌川国芳*1です。 

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猫好きと言われた国芳の言葉「猫がいなくなると、猫に置いていかれた気持ちになるのだ」今もすぐ近くにいるような親しみを感じるキャラクターです。

 

 

日曜美術館「熱烈!傑作ダン国芳(くによし)」

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パリの展覧会で人気を博し、日本でも老若男女をとりこにする浮世絵師…。それが歌川国芳! かっこよくて、面白くて、はっとする魅力の秘密を個性豊かなゲスト3人が探る!

放送日

2016年9月11日

放送

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型破りなブックデザインで知られる祖父江慎さんは、国芳の思わず手にとりたくなるインパクトに感動する。ダンサーで振付家の近藤良平さんは、思わずカラダを動かしたくなる強烈なリアリティーを浮世絵から感じる。東京国立博物館の松嶋雅人さんは、国芳が生きた江戸時代後期、その閉そく感を突破するエネルギーが、いまにも通じると考える。3人が選んだ傑作が続々登場!井浦新さんのあの役も国芳が手がかり?尽きない談議!

【ゲスト】アートディレクター…祖父江慎*2 ,ダンサー・振付家…近藤良平*3,東京国立博物館主任研究員…松嶋雅人,【司会】井浦新,伊東敏恵

番組内容

少年漫画に出てきそうな強烈なキャラクターを生み出し、江戸っ子たちの心をわしづかみにした国芳。ジャパニーズカルチャーのルーツともいわれ注目されています。なぜ国芳は時代や国境を越えて人々を魅了するのか?三人の個性豊かなゲストが国芳の魅力を語り尽くします。

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国芳の絵はうまいがどうかというより、強いものが多いのです。漫画雑誌のような。そんななかで、この絵を見て、こんなかわいいものも描いていたのかと驚きました」

祖父江さんが選んだのが「きん魚づくし ぼんぼん」小さな金魚たちを主役に描いたほほえましい作品です。 

「タイトルもすごいですね。ぼんぼんって」

ぼんぼんとはお盆の唄です。同時代の風俗・江戸の町並みを擬人化しています。町々でお盆の唄を子供たちが合唱している姿です。

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江戸時代、庶民の間で観賞魚として流行した金魚。国芳は一ひねりして緩さ満点の作品に進化させました。

「なかなか金魚を擬人化するのは難しかったのではないかと思うんですけど、自然に歩いている感じ。しかも、両生類の蛙の子を魚類が手を引いている。逆進化構造も好きですね。団扇を持っている金魚もね、乾燥してしまわないかと心配になる点もありますが。突っ込みどころが満載です。絵に対していえるところがいくらでも出てくる。絵をもとにいろいろな会話が出てくるとこがおもしろい」

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絵をよく見ると様々な仕掛けが隠されています。団扇をよく見ると・・・

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団扇のように見えたのは網です。金魚が掬われる方の網が描かれています。

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蛙の持ってる団扇は・・・おたまじゃくしです。

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「本のデザインにもいえるのですが何度も繰り返し読むうちに気がつくという感覚を大切にします」金魚がこんな姿になるわけはないのですが何の疑問も持たずに見れるところがすごいですね。

 

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ダンサーの近藤さんは、かげえ絵本を出版しました。

福音館書店|こどものとも 2016年1月号

身近な道具を使ったり、みんなで協力し合ったりと、体で表現することの大切さをわかりやすく説いています。参考にしたのが国芳の浮世絵でした。「すごいなと思いました。よくこんなことを思いついたと」エビに見える影の正体は・・・f:id:tanazashi:20160911203524j:plain

なんと、草陰に隠れてエビを狙う釣り人でした。

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庶民たちの宴会芸として江戸で大流行したという影絵あそび。国芳はアイデア満載の影絵をたくさん描きブームに応えました。

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「奇抜だし、エッと思わせる力を持っています。人を驚かせたいとかクスッとさせたい、そういうことに対して長けている」

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そんな近藤さんが度肝を抜かれた傑作がこの絵です。

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大きな人の顔を作っているのは十人以上の裸の男たち。どこがどうつながっているのか思わず見てしまいます。

「高校生くらいの時図書館で見て引きつけられました。体のことをここまで本格的に絵の中に落とし込んだのはすごい。大学の頃、ほんとに出来るのか仲間たちと試しました。さすがに男同士がここまで密着するのはかなりやなかんじなんです。ストレスがたまる。江戸の人もからだ遊びをやっていたのかなと」

江戸時代、ばかげたことを一生懸命するのは浅草の裏あたりの見世物の世界ではとんでもないことをやっていますから、大本では芸の達者な人たちの中からなにかアイデアをひろったことはあるかもしれません。

(背中もよく見ると一人の人が描かれています)

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同じモチーフを集める「寄せ絵」「はめ絵」というジャンルがあります。前の時代にもあった手法ですが、国芳の時代になるとどんどん過剰になります。

紋にある「三」の文字は、鎌倉時代の武士の紋です。朝比奈三郎は世界中をまわる伝説の人です。

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江戸時代に書かれた冒険小説の主人公として庶民に愛されました。

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朝比奈三郎は空想上の国々を巡り不思議な人々と出会います。(ワンピースみたいに)

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そうした人々が集まって顔を作っているのだといいます。手の長い人や肌の黒い人を使って絵を描いています。

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髪の毛の部分に見える黒い人が手に持っているのは南洋の珊瑚だといいます。

 

国芳は思いついたらやらずにいられなかった。江戸の人を楽しませようとしていると、これまでのような絵では誰も驚かないですよね。ここまでやるから「何これ」という驚きがでるので誰も見たことがないものを書いてやろうという心意気が異常に強い人だったのでしょう。

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国芳の魅力の原点はどこにあるのか。東京で開催中の展覧会が話題を呼んでいます。中国の小説・水滸伝のヒーローたちを描いた連作です。このシリーズは大ヒットを記録し、国芳の名前が江戸中に知れ渡るきっかけとなりました。

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国芳はこのときすでに30代。下積みが長かった苦労人でした。1797年。国芳日本橋に生まれました。15歳で歌川豊国の弟子になりますがなかなか芽が出ませんでした。

当時の絵師たちを格付けした番付表を見ても、

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国芳は前頭27枚目でした。

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あらゆる表現が出尽くしてしまったかのような時代。国芳は個性を発揮させる道を見つけられませんでした。

庶民の間にも閉塞感が漂っていました。文化文政年間は幕府の財政が傾き、賄賂が横行。政治に対する不信感は日に日に高まりつつありました。さらに異常気象で飢饉も発生し世の中には不安が満ちていました。

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そうした時代に江戸庶民が手に取ったのが水滸伝でした。ならず者たちが不正を働く権力に立ち向かい世直しを迫る痛快物語。国芳はその気運をチャンスととらえ、それまでの浮世絵にはなかった架空のヒーローものに挑みました。

松嶋雅人さんが選ぶ国芳の傑作は水滸伝。正義感ゆえに誤って人を殺しお尋ね者となったアウトロー国芳は仲間を助けるため大木をたたき割る一瞬を絵にしました。

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泳ぎの達人・張順。たった一人で敵の城に忍び込み壮絶な最期を遂げる場面。どんな困難にも負けずに立ち向かっていく姿に江戸の庶民は酔いしれました。

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「もともと浮世絵は役者や美人画、遊女の絵を描くのが本来です。ところが、国芳は中国の架空の人物を題材に選んだところが斬新でした。叫ぶ声とか砕ける音が聞こえてきそうです。国芳の兄弟子たちが美人画を押さえているため、国芳美人画を描こうとしても二番手にしかなれない。これまでに見たことがないものを見せてやるぞという意気込みがあるように思います」

「これだけ絵に密度があると、無駄な紙のスペースは一センチもつくらないぞという情報量ですよね。これは少年たちにとってはうれしいことでしょう。子供用の漫画雑誌はちょっとした隙間でもそこで笑わせたりびっくりさせたりしようという気持ちがどんどん入って密度が高いのです」

「子供が本当に喜ぶでしょうし、水滸伝そのものが空想の世界、感情移入する江戸の人たちがいたわけで、その一つが彫り物です。細かく男の心意気、当時の江戸市中の人たちがこの絵柄をまねする。しびれるシンボルであったと思います。」

祖父江さんが選んだ傑作「誠忠義士伝」。忠臣蔵をモデルにした作品です。

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国芳は逆境を打ち破った一人一人が最も輝くポーズで絵にしました。背景をあえてなくし、キャラクターを際立たせることに心血を注いだこのシリーズ。水滸伝を超える空前のヒット作となります。

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「錦絵は同じものがいっぱいあるというもので、絵画のように世界にこれしかないというものより逆のつきあい方が出来る。交換するとか持ち歩くとか、そういう気楽さというのを日本の美術というのが一緒に歩んできたからよかったのでしょう。複製美術の喜びです」

「世界の芸術作品は限られた人たちの造形ですから、 日本の場合は一般庶民の人たちが楽しむ文化が発達してますから、それは世界的に見ても希有なことだと思います」

井浦さんが選んだ作品「崇徳院」島流しに遭い最期を遂げた帝です。

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数々の裏切りにあい非業の死を遂げた崇徳上皇は怨霊となったと伝えられています。井浦さんが推すのが「百人一首之内 崇徳院」です。世界から落ちこぼれたような少し弱い人々にまなざしを向けているのが国芳の魅力です。

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生涯にわたりヒーローを描き続けた国芳。松嶋雅人さんがその最高傑作と考える作品が「和田合戦」です。

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主役は冒険小説の主人公ともなったあの朝比奈三郎です。鎌倉幕府を襲う戦いの場面。朝比奈の姿は小さく見えます。実は三枚で一続きの作品。

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横長の大画面で合戦をダイナミックに描こうとしました。松島さんは浮世絵の歴史を変える作品の一つと考えています。

国芳以前にも続き絵はありますが、基本的には役者さんが一枚に一人ずつ描かれていました。国芳の場合は一枚の絵、ワンシーンに描くという方法を編み出しているわけです。映画的な画面を効果的に津かっっていますし、屋根瓦が落ちていく様子をストップモーションをかけたように描いています。当時は録画する装置はなかったわけですので一瞬の映像を記憶して描かざるを得ない。驚異的な空間記憶力を国芳は持っていたことがわかります」

 

 

 ディレクター:丸山尚志

プロデューサー:角田誠

制作統括:村山淳、堀川篤志

制作:NHKエデュケーショナル

制作協力:テレコムスタッフ

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取材先ほか

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av98ingram.wpblog.jp

国芳雑画集

国芳雑画集

 

 

国芳の絵本 2

国芳の絵本 2

 

 

 

展覧会

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www.ukiyoe-ota-muse.jp

 

 

*1:1797-1861。浮世絵絵師。幕府の財政が逼迫し世情が不安定だった当時、その閉塞した社会状況を打破するようなパワフルな武者絵やユーモラスな戯画を描いて大衆の喝采を浴びた

*2:愛知県生まれのブックデザイナー。 人文書、小説、漫画などの書籍の装幀やデザインを幅広く手がける。吉田戦車の漫画本をはじめとして、意図的な乱丁や斜めの裁断など、装幀の常識を覆すデザインで注目を集める。コズフィッシュ代表

*3:コンドルズ主宰。第4回朝日舞台芸術賞寺山修司賞受賞。TBS系列「情熱大陸」出演。NHK教育からだであそぼ」内「こんどうさんちのたいそう」、「かもしれないたいそう」、「あさだからだ!」内「こんどうさんとたいそう」、NHK総合サラリーマンNEO」内「サラリーマン体操」などで振付出演。「AERA」の表紙にもなる