チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

久原山雪・香月泰男

末恐ろしい末期に来てしまったのではないか。滅びが間近に迫ったという気がする時がある。一人の人間の死ということもそうだが、予言者ではない私ですらこのままでは滅びだとそう感じるのだ。といっても絵を描くだけだが。

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香月泰男の没後、香月家に残された油彩や水彩画を画集にする計画がうまれ、詩人の谷川俊太郎さんに絵に添える単文や詩を書かないかということになりました。谷川さんはふと思いました。「もしかすると香月さんの絵にふさわしいのは香月さん自身が残した言葉なのではないか?」

谷川さんは、香月さんが書いた文章を出来るだけもれなく集めてくださいと関係者に説明し、手分けして文章を探すことになりました。集まった文章を読み始めると、直接その絵に宛てて書いたものでないにもかかわらず、文章が絵と重なり渾然一体となって響いてきました。引き締まった文体の持つ強さはシベリア体験もさることながら、香月さんの持つ独自のものの感じ方や理念に裏打ちされたものだったのです。

谷川さんは「ただもっとも強く胸打たれた箇所に傍線を引くだけで良かった」と、香月さん自信の言葉の強さを感じたといいます。

「春夏秋冬(はるなつあきふゆ)」香月泰男 著(新潮社)より

 

春夏秋冬

春夏秋冬