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チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

この世界の片隅に おはよう日本で紹介

こうの史代原作、片渕須直監督のアニメ映画「この世界の片隅に」がおはよう日本で紹介されました。

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この世界の片隅に」は、戦時中の広島と呉を舞台にした映画です、1人の女性とその家族のささやかで幸せな暮らしが戦火に飲み込まれてゆく様が描かれます。

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制作が発表されたのは平成21年。インターネットで制作費を募るクラウドファンディングでは、3億9千万円あまりという国内映画の過去最高額を記録。広島では映画を支援する会も結成され、多くの戦争体験者が制作に協力しました。 

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原作者・マンガ家 こうの史代さんは広島県出身。2004年「夕凪の街 桜の国」で第8回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞しました。

(制作を始めて)6年たちましたね。夢のような、本当にできたなという気持ち。本当に胸がいっぱいです。ありがとうございます。

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主人公のすずは広島の瀬戸内に面した漁村の海苔梳きの家で、お兄さんと妹に囲まれて育ちました。幼い頃たまたま出会った少年・北条習作に見初められ、呉市に嫁ぐことになります。

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この作品の魅力の一つは、克明に描かれた当時の生活です。登場人物の衣服や食生活、地域のしきたりなど一つ一つ積み重ねられるような描写は、戦争に巻き込まれていく人々の明暗両面の姿を冷静に見つめます。それがこの物語を身近なものに感じさせます。

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こうのさんは、作品を描くにあたり、国会図書館や郷土資料館で当時の雑誌や新聞を集め、家事の道具や服装の材質まで細かく調べました。

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作品を描くきっかけとなったのは、呉に住み戦火を生き抜いた、亡き祖母への思いだったといいます。

祖母からは、ちょっとだけ呉戦災の話は聞いたことがあった。でも私は、あまりそれをまじめに聞いてこなかった。祖母は亡くなって聞くことはできない。そこらへんの後悔の念はあった。

当時の生活を聞き残すすべを失った河野さんにとって、作品の取材は形をかえた肉親との対話でした。

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祖父母とか、話をできなくなってしまった人々と、描くことで対話をしているような、そういう人たちのことを追いかけるように丁寧に描ければいいなと思った。

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中でも興味を引いたのが、当時、お米を節約するために作られていた料理「楠公飯(なんこうめし)」。こうのさんは、この料理を作品に登場させました。

f:id:tanazashi:20161019165847j:plainもともと武将・楠木正成が非常食として考案したとされるもの。玄米にたっぷり水を吸わせて炊くことで、ご飯の量が増えたように感じるといいます。

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“けさはえろうご飯が多いのう、飯粒がふくらんでおる。”すずは自信満々で振る舞いますが…。やっぱり薄めた味しかしません。懸命に工夫を重ねて、厳しい暮らしを生き抜こうとしたエピソードです。

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昔の人は愚かだったから戦争してしまった。そしてこんな(貧しい)生活に”と片づけられるが、彼らは彼らなりに工夫して、幸せに生きようとしたということを、この作品で追いかけてつかみたいと思った。

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作品のもう1つの特徴、それは原爆や空襲で失われた広島と呉の当時の町並みを忠実に再現していることです。 その再現に力を尽くしたのが、原作に惚れ込み映画化を申し出た、監督の片渕須直さんです。片渕さんは映画化にあたって作品の舞台を正確に再現するため、東京から広島に何度も足を運び調査を続けてきました。

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主人公のすずさんが、どのくらい自分で息づいて感じられるか。(東京から)深夜バスで行って、広島に着いて呉まで行って、わっと見て、その日の深夜バスでまた東京帰ってきたり。

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 原爆でほとんど消えてしまった広島中心部の町並み。その貴重な写真を提供してくれた人もいました。

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濵井徳三(はまい・とくそう)さん、82歳です。爆心地に近い商店街で理髪店を営んでいた濵井さんの家族。疎開していた徳三さんは助かりましたが、両親と兄弟は、いまだに骨すら見つかっていません。

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その話を聞いた片渕さんは、単に町並みを再現するだけでは足りないのではと考えました。

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そこに住んでいる方も全部含めて街なんだろうと思って。“普通の人たちがここにいたんだな”と、(観客が)近いものとして感じることができるのでは。

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そして出来上がったのがこのカット。原作のプロローグとして収録された主人公すずの幼い頃の想い出に出てくるシーン。広島に海苔を届けるお手伝いにやってきたすずが物の怪のような人さらいにさらわれるシーンです。その背景に描かれた理髪店。片渕さんは理髪店の建物だけでなく、濵井さんの家族の姿も描きました。 

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すごいね。あれだけのものがよみがえってくるとは。うれしかった、取り上げてもらうこと自体がね。

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これは自分の街だったと言う方がいて、それを描くのは覚悟がいることだと痛感しました。単純に生々しいというだけではなくて、“そこにいた人の気持ちがわかる”と思ってもらえるものを画面に描こうと思った。

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太平洋戦争末期。東洋一と言われる軍港があった呉は、何度も激しい空襲に襲われます。

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すずは質素な暮らしの中にも笑顔を絶やさず、日々の営みを続けます。

そして8月6日  

“こっち来て見てみぃ。”

“なんじゃ、あの雲は。”

山の向こうに巨大な雲が立ち現れます。

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ラジオで終戦の詔勅を聞いたすずは、今まで信じていた日常を裏切られたくやしさで泣き崩れます。

こうのさんは「平凡倶楽部」(平凡社)の中で「終戦で泣くのは、家族や家のみならず、夢を失った悲しみだと思った」と書いています。「夢」とはこの時にはすでに「勝つことではなく、「正義を抱いたまま死ぬ事」です。目標という「夢」のある幸せが失われたことを、すずは感じたのではないでしょうか。

こうのさんは「「ただ生きている」事を素晴らしいと感じる「自由」は「生きている」限り誰にも等しく許されている、ということかもしれない。なんて今わたしは解釈したりしている」といいます。すずの涙の意味を考えることは大切だと思います。

翌年1月、すずはようやく広島市内に入り、祖母の家に身を寄せていたすみと再会。両親は亡くなり、すみには原爆症の症状が出ていました。

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 廃墟となった市内で、すずはこの世界の片隅で自分を見つけてくれた周作に感謝しながら、戦災孤児の少女を連れて呉の北條家に戻ります。

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(私たちは)戦後に生まれたということは、戦争を生き延びた人からしか産まれていない。そのことを誇りに思う。そして敬意を表したい。自分の知っているおじいさん、おばあさん、戦争を経験した方々、そういう人たちになぞらえて考えたり、戦争中のことを振り返っていただき、話をするきっかけになればいいと思う。

戦争を生き延びた人々は、亡くした誰かの栄誉のために、その人の記憶を語った。では語っているかれらの栄誉を語るのはいったい誰なのだろう(「戦争を描くと言うこと」平凡倶楽部p13)

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