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チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

日曜美術館「深奥へ 速水御舟の挑戦」名樹散椿

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御舟の探求は終わりません。翌年、京都の寺に御舟は足繁く通います。通称椿寺・昆陽山地蔵院です。

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境内には毎年春になるとたくさんの花をつける五色八重の椿が植えられています。強い生命力を表すように大きく広がる枝振りが印象的です。

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御舟を虜にした初代の椿。

豊臣秀吉が寄進したとされる樹齢400年の椿の古木です。御舟は古木だけが放つ尊い命の姿を絵にします。

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「名樹散椿」金地の画面に右から左へと花をつける枝は屏風の凹凸を生かし、こちら側にせり出すように生き生きとしています。

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あでやかに咲き誇る五色の花。苔むした地面には散った花が命を惜しむかのように横たわっています。この屏風を制作中の御舟の姿が残されています。 

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花の豊かな色彩をより鮮明に印象づける背景の金地。数年前の調査で、御舟が生み出した新たな技法が確かめられました。

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「撒きつぶし」金箔を貼るのではなく、細かく粉にして、それを撒いて金地にする技です。金箔を貼り合わせて金地にした「翠苔緑芝」と比較すると「撒きつぶし」の手法を使った「名樹散椿」の印象は明らかに異なります。金地の技法にはほかに金粉を溶いて絵の具とした「金泥」という方法もあります。日本画家の並木秀俊さんに協力していただきその違いを比較してみましょう。

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金箔を敷き詰めたものは、境界線がのこります。 

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金箔を絵の具とした「金泥」を塗ってみます。

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境界線はなくなりましたが代わりに筆の跡が縞のように見えているのがわかります。

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金箔を細かく砕いて粉にしたものを、底に小さな穴が開けられた筒に入れて振りかけるのが「撒きつぶし」という手法です。

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膠を塗った紙の上に金の粉が少し積もるたびに、斑をなくすため手のひらでならします。その上から更に撒き、巻いては手で鳴らす。それを何度も繰り返し完璧に均一な金をめざします。気の遠くなるような作業の「撒きつぶし」は金箔にはない光沢を生み出します。

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「撒きつぶし」に使った金の量は金箔に比べ10倍以上必要だとわかりました。御舟は新たな空間表現を求め一切の妥協を許しませんでした。

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では御舟はその着想をどこから得たのでしょうか。手がかりは御舟が祖母のために作った蒔絵細工の櫛に見ることが出来ます。

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少年時代御舟は蒔絵を習っていました。この蒔絵の技法に「沃懸地(いかけじ)」という手法があります。金の延べ棒をやすりで削りその金粉を売るしを塗った面に敷き詰めるという手法です。

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御舟は幼い頃習ったこの技法を日本画に応用したのです。

 

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もっと知りたい速水御舟―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

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