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チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

日曜美術館「ダリの正体!?」画家・横尾忠則

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ダリに会った数少ない日本人の美術家の一人が画家の横尾忠則さんです。ダリ展の会場に着いた横尾さんは、初期の作品には目もくれず先に進みました。

「初期の作品は面白くありません。初期の作品はダレでも描く絵です。飛ばしてシュルレアリズムのところにいっていいです」

サルバドール・ダリは1904年スペイン北部のカタロニア地方で生まれました。裕福な家庭で育ち夏場は海辺の別荘で過ごすのが楽しみでした。

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世界的な巨匠となった後でも暮らしたスペインの家で、40年前横尾さんはダリに会いました。 

横尾忠則「サルバドール・ダリとの面会の顛末」 - 山田視覚芸術研究室 / 前衛芸術と現代美術のデータベース

姿の見えない眠る人、馬、獅子

「姿の見えない眠る人、馬、獅子」

「いかにもシュルレアリズム。地平線があって、空があって、それで形態が曖昧で、メタモルフォーゼ(変形)していったり、思わぬものと合体されるでペイズマンという手法を使っている」

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-何だと思いますか?

「何でもいいんじゃないですか。何を描こうとしているのかと考えると、彼(ダリ)の思惑にまんまと引っかかってしまうことになるから、知らないとシレっとしている方が、見る側のアイデンティティが守れるのではないかと思います」

「素早く動いている静物」

「この絵も有名な絵です。これは僕も面白いと思います。」

物質を作っている粒子の様子を描こうとした作品。身の回りにある生活道具すべてが宙に浮いています。画面右上の浮かんでいるリンゴには、何かが衝突しているようにも見えます。

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ダリは知れば知るほど謎が深まる怪人です。1945年の作品「パン籠」。写実画のように細部まで精巧に描かれた作品は、ダリの正体を知る上で重要な作品です。この作品についてダリ自身このように語っています。

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「ダリにとって最も意義ある作品はパン籠である。最も写実的な絵画が最もシュールな作品であることは永遠のパラドクスである。またこのパラドクスこそサルバドール・ダリの象徴なのだ」

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最も写実的な絵画が最もシュルレアリズム。この言葉は何を意味するのでしょう。

「ダリのリアリズムはよく見るとリアリズムを超えてしまっている。リアリズムの領域というものがあると思うのですが、ダリの描いたパンはその領域を超えてしまっていて、異界からやってきたパンのようにも見える。われわれは現実の世界に生きているとおもっているけれど、実はシュルレアリズムの非現実な世界の中にも同時に同居しているということなのです」

リアリズムをつきつめていくと現実を超えた世界にたどり着く。それがダリの求める最高のシュルレアリズムなのかもしれません。

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晩年の作品が並んだコーナーです。横尾さんはこのコーナーの作品が好きだと言います。

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「ガラが亡くなって一人暮らしの状態で描いてますよね。さみしいものと肉体的なエネルギーがあまり感じられない」

ダリが亡くなる6年前。79歳の作品です。この年を最後に絵を描かなくなります。

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「これはベッドでしょ。死に場所を描いている。このベッドで死ぬわけです。このコーナーの作品はみな未完っぽい。人間は完結して死ぬのではなく未完の状態で死ぬわけです。ですから正直なのです」

「ダリの正体?私は確かめようとは思わない。誰だって自分は誰なのかわからない。ガラに聞いた方がいい」

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「トラック(我々は後ほど、5時頃到着します)」は、1983年に描かれたダリ晩年の作品です。「シュルレアリスム宣言」のアンドレ・ブルトンの言葉「I demand that they take me to the cemetery in a removal van.*1」から来ているといわれます。人生の最後にどこかに行ってしまうような印象を感じます。旅立ってしまう自分を描いているのかもしれません。

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右上には紐が、左下には女性の写真が貼り付けられているのは、80年代のニューペインティング・新表現主義の影響もあるのでしょうかたいへん自由な作り方です。

 

 

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*1:直訳すると、「私は墓地まで引っ越しトラックに運んでもらうことを要求する