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チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

日曜美術館「ダリの正体!?」脳科学者・中野信子

日曜美術館

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脳科学者の中野信子さんはダリと女性との関係に関心を寄せています。

「女性の後ろ姿を彼はこの構図で描いたりしていますが、女性に対する距離感だったり、行きたいけどという揺れるような気持ちを絵にするとこうなるのかな」

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後ろ姿は女性に対するコンプレックス、細密に描かれた髪の毛は性の願望が表されているといいます。更にこの絵には母への複雑な思いも感じられると言います。

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「ダリはなくなったお兄さんと同じ名前です。兄と同じなのかという不安をダリは抱えて生きていました。母に対して、こっちを向いて欲しいという気持ちを持っていたのではないかと感じます」

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スペインの公証人の家庭に生まれたダリ。その10ヶ月前に兄が幼くして亡くなっていました。兄と同じサルバドールという名をつけられ、ダリは兄の身代わりなのかと感じていたと言います。

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亡き兄への思いを隠さない父にはなつかず孤独な子どもだったダリをいつも守ってくれた母は17歳の時亡くなります。家族以外の女性に接することがほとんどなかったダリはコンプレックスを持ったまま大人になって行きます。

ダリのシュルレアリズムの作品は驚くほど精巧に作られています。それは幼い頃の体験が根底にあるからだと中野さんは考えます。

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「この人は自分が必要とされていないかもしれないかもしれないという考えが子どもの時からある。そうすると想像の世界を逞しくせざるを得なかった」

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「このような世界を作り上げられるだけの才能に真理多岐な軋みが昇華したら本当に素晴らしいと思う彼の本質的な強さがあったと思いたい」

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ダリは25歳の時シュルレアリズムの芸術運動に参加した後運命の出会いを果たします。

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10歳年上のガラ。ここからダリの才能は開花して行きます。

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フランスの詩人・ポール・エリュアール*1の妻だったガラとダリはすぐに恋に落ちます。

「あなたは天才」ガラはダリを励まし、進むべき方向へと導いて行きました。

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ダリとガラが結ばれて2年。20世紀絵画の傑作が生まれます。「記憶の固執」です。ぐにゃりと曲がった時計。ダリの味わった孤独や別れ、嫉妬というつらい時間が閉じ込められています。封印してきた想像の世界がいっきにあふれ出しました。

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ダリの快進撃が始まります。幼い頃から抱えてきた女性への恐れ、性の呪縛を描いて行きます。呪縛を解いたガラはダリの母であり、妻であり、プロデューサーでした。しかしガラは若い愛人を作りダリに隠すことなく遊びにふけるようになります。ダリとガラの不思議な関係がつづきます。

「ガラの肖像でダリは彼女の髪の毛を覆い隠しています。とても象徴的な絵だと思います。女性性をすべて覆い隠すと解釈することが可能でしょう。女性性を排除したガラの人間的な部分をもしかしたら描きたいのかなと思えるのです。彼女とは男女の間柄として彼女のことを愛し続けているけど、それ以上の部分でもっと自分は彼女のことを見てますという宣言のようにも見えます。すごく必要としていたのだと思いますその人が全面的に自分を頼ってくる。頼ってくる人に必要とされていると思うときの快感はものすごいものがあります"共依存*2というもので、彼らはダリとガラというユニットで活動して非常に大きな功績を残していくわけですね」

 「ガラとダリは天の支配者・ジュピターの卵から生まれた兄妹なのである。ダリはガラに仕える新生で誇り高く謙虚な奉仕者なのである」

ダリとガラに転機が訪れます。1945年広島と長崎に原爆が投下されました。現実がシュルレアリズムの世界を超えてしまったのです。ここから何を描けばいいのか。

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ダリは思いがけないことを始めていました。過去の芸術家たちを採点するこころみです。  

dali.world

 

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ダビンチやフェルメールに高評価を与えた反面、モンドリアンをダリは酷評しています。古典絵画の力をダリは再確認していたのかもしれません。さらにダリは神秘主義への関心を深めて行きました。

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ポルト・リガトの聖母」はダリの新境地です。モチーフは伝統的な宗教絵画。妻のガラを聖母と見立てました。

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左右対称の構図の周囲に浮かぶのはイカの甲。それが小さなガラに育って行くようです。中央のガラに包まれているのはイエス・キリスト。それはダリ自身なのかもしれません。

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「ダリという画家を産んだのは彼女です。自分を産んだ人をこういう形で描いたのではないですかね。だりという作品ですよね。二人で作った」 

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*1:(Paul Éluard, 1895年12月14日 - 1952年11月18日)は、フランスの詩人。ダダイスム、ついでシュールレアリスムの運動を盛り上げた一人。反ファッショ、レジスタンスの闘士、そして『愛』を多くうたった

*2:(Co-dependency)とは、自分と特定の相手がその関係性に過剰に依存しており、その人間関係に囚われている関係への嗜癖状態(アディクション)を指す。すなわち「人を世話・介護することへの依存」「愛情という名の支配」である。"