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チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

日曜美術館「謎のヌード クラーナハの誘惑」女の力

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「不釣り合いなカップル」クラーナハが好んで描いたテーマです。指輪を女性に捧げるのは歯の欠けた白髪の老人。一目瞭然。男はすっかり女性に心を奪われた様子。クラーナハの作品を数多く所蔵するウィーン美術史美術館のグイド・メスリングさんはクラーナハが描く女性像をこう解説します。

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「女の力。クラーナハが終生追い続けたテーマです。神話や聖書によく描かれる題材で、女性の策略や誘惑に引っかかり男性が堕落しどうしようもなくなるというものです。ドイツでは伝統的にこの女の力が描かれてきました。クラーナハもまた印象的に力強く女の力を描ききっています」

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ヨーロッパでは、女性は男をたらし込み、堕落させる存在と見なされてきました。さらな中世には悪魔と結託する魔女という概念が生まれました。

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魔女狩りも行われました。中でもドイツの被害者の多さは際立っていました。16世紀から18世紀半ばまで3万人以上が処刑されたと言われます。

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魔女は醜いものとして広く描かれました。しかしクラーナハは悪しき女の力を持つ女性であっても、実に魅惑的に描くのです。

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「ホロフェルネスの首を持つユディト」旧約聖書外伝に描かれた物語に登場するユディトは敵将であるホロフェルネスを倒した女性の英雄です。剣を持ったユディトが冷徹な視線でこちらを見つめています。

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、首を切られたホロフェルネスは口を開け目もうつろ。でもすこし恍惚の表情のようにも見えます。

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さまざまな名画をモチーフに創作を続けてきた美術家の森村泰昌さんは、クラーナハのこの作品に刺激を受けました。

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食材をアレンジした別のバージョンもあります。そして今回は特別にあまり公開していないバージョンも見せて貰いました。

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心中をテーマにした歌舞伎の登場人物に置き換え、さらにサイボーグに仕立てました。森村さんの創作意欲をかき立てたものは何だったのでしょうか。

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「いろいろな画家が同じテーマを描いてます。カラバッジョの絵などは、ユディットの表情に人を殺めているおぞましさが出ている。リアルで面白い。クラーナハは不思議です。ユディットの顔をどのように表現しようか考えていて、そうだ、あれに似た顔知ってるなと思ったのです」

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能の小面。この東洋の面が発する魅力と同じものを森村さんは感じたと言います。
「非常に清純な感じがするのに、何かの拍子に秘めた何かを持っていたりという感じをさせる。クラーナハのユディットも同じで、神聖な感じを一見もたせるのだけど、よく見てみると妖しげな、妖の世界です。顔の裏にある何かを感じさせるというか、そこが引きつけられていく」
神聖な装いに潜む得体の知れない怪しさ。森村さんはその女の力の虜となったのです。クラーナハが夢中になって追い続けた女性たち。そこに込めたものとは何だったのでしょうか?
「この絵画がいかに鑑賞者を誘惑することができるか。それだけを狙って、クラーナハは絵を描いていたのではないか」(森村)