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チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

回顧2016美術・私の3点 山下裕二

山下裕二(美術史家)

「柳根澤 召喚される絵画の全貌」展 多摩美術大学美術館

http://www.tamabi.ac.jp/museum/exhibition/img/160924_t.gif

 

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会期:2016年9月24日(土)~12月4日(日)

これまで精神文化界の隠れた動向・遺産を見出し、再評価するような企画をお届けしてきた当館ですが、今回は満を持して、韓国現代絵画界の異才、柳根澤(ユ・グンテク、1965~)の制作の全容を世界に先駆けて紹介します。
 柳は大学で学んだ東洋画の伝統を生かしつつも、早くから東洋・西洋の枠を越えて絵画全体の課題を果断に追求しつづけ、2000年ごろから内外で広範な支持と期待を集める存在となりました。日常の生活空間を凝視しながら、常識にとらわれない大胆な絵画言語を駆使することで現実を凌駕する事物関係と空間性を創出してきた彼の作品は、驚きと不思議な情趣に満ちています。
 本展には初期の自画像・室内・食卓・風景・新作の図書館シリーズなど50余点の代表作に加えて、多数の卓抜なドローイング、ビデオ作品が出品されます。平凡と異常、生成と消滅、実在と幻影等の対立を魔術的に併存・転倒させてしまう柳の奔放かつ確信的な表現世界を、存分にご堪能ください。

多摩美術大学美術館

村上隆スーパーフラット・コレクション ―蕭白魯山人からキーファーまで―」展 横浜美術館

http://news.mynavi.jp/news/2015/12/08/457/images/001.jpg

 

会期:2016年 1月30日(土)~2016年4月3日(日)

この展覧会は、現代日本を代表するアーティスト、村上隆(むらかみたかし)(1962年生まれ)の現代美術を中心とするコレクションを初めて大規模に紹介するものです。

村上隆は、東京藝術大学にて日本画初の博士号を取得。現代美術と日本の伝統絵画、ハイカルチャーポップカルチャー、東洋と西洋を交差させた極めて完成度の高い一連の作品で世界的に評価され、海外の著名な美術館で数々の個展を開催してきました。
アーティストとしての精力的な創作の一方で、村上隆はキュレーター、ギャラリスト、プロデューサーなど多岐にわたる活動も展開しています。特に、近年、独自の眼と美意識で国内外の様々な美術品を積極的に蒐集し続けており、その知られざるコレクションは、現代美術を中心に日本をはじめとするアジアの骨董やヨーロッパのアンティーク、現代陶芸や民俗資料にまで及んでいます。村上隆にとって「スーパーフラット」とは、平面性や装飾性といった造形的な意味のみに限定されるのではなく、時代やジャンル、既存のヒエラルキーから解放された個々の作品の並列性、枠組みを超えた活動そのものを示しており、「芸術とは何か?」という大命題に様々な角度から挑み続ける作家の活動全体(人生)を包括的に表す広範かつ動的な概念と捉えられるでしょう。

圧倒的な物量と多様さを誇るこれら作品群を通して、村上隆の美意識の源泉、さらには芸術と欲望、現代社会における価値成立のメカニズムについて考えるとともに、既存の美術の文脈に問いを投げ掛ける、またとない機会となるでしょう。

村上隆のスーパーフラット・コレクション ―蕭白、魯山人からキーファーまで― | 開催中の展覧会・予告 | 展覧会 | 横浜美術館

「生誕140年 吉田博展」千葉市美術館

http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2016/0409/0409_top1.jpg

 

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会期:2016年4月9日(土)~ 5月22日(日)

吉田博(明治9年~昭和25年/1876-1950)は福岡県久留米市の生まれ。京都の地で三宅克己の水彩画に感銘を受け、以来本格的な洋画修業を始めました。明治27年に上京して不同舎に入門、小山正太郎のもとで風景写生に励んで技を磨きます。明治32年には中川八郎とともに渡米、言葉もままならない異国で自作を大いに売って生活の資を得るという快挙をなし、アメリカ各地からロンドンやパリを巡って明治34年に帰国しました。以後も外遊を重ねて東西の芸術作法を見つめ、内外の風景に取材して水彩画や油彩画を発表、太平洋画会や官展を舞台に活躍を続けました。

とりわけ高山を愛し、常人の足の及ばぬ深山幽谷に分け入ることで描いた作品は、新たな視界や未知なる美を発見した驚きと喜びに満ちています。大正後期からは彫師・摺師と組んだ木版画に軸足を移し、伝統的な技術に洋画の表現を融合したかつてない精巧・清新な造形で国内外の版画愛好家を魅了し続けました。

吉田博は生涯、世界における自らの位置を考え続けた画家といってよいでしょう。その思考の跡が、湿潤な日本の風景をみずみずしく描いた水彩画であり、雄大な自然美を登山家ならではの視点からとらえた油彩画であり、浮世絵以来の技術を新解釈した木版画でした。比較的早くに評価の定まった白馬会系の絵描きたちに比し、長く埋もれてきた感のある博の画業は、今の私たちにどう映るでしょうか。「絵の鬼」と呼ばれ、水彩で、油彩で、木版画で世界に挑み続けた画人の「これが日本人の洋画だ」という答えー。生誕140年を記念し、代表作に初公開の写生帖などをあわせた300点超の作品からなるこの大回顧展で、とくとご覧ください。

www.ccma-net.jp