チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

「足下の小宇宙」85歳の絵本作家・甲斐信枝さん

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絵本作家・甲斐信枝さん(85)が描いているのは雑草です。誰も見向きもしないような雑草でも甲斐さんの手にかかるとこの通り。

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きれい。しかもそのまなざしはとってもユニーク。一瞬の風を捉えて描いている。草が踊っているみたい。まるでお祭り。

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「うんとんだ。みんなお留守」甲斐さんの案内で絵本の草たちに大接近。知らなかった雑草の世界が見えてきます。パワフルな種飛ばし。綿毛のトルネード?「朝から晩まで同じ場所に通っているとお宝をくれる」スーパーおばあちゃん甲斐さんといっしょに、ふだん見過ごしている足下のすてきな世界を見つけにいきましょう。

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「足元の小宇宙~絵本作家と見つける生命のドラマ~」

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#植物の気持ちになって
京都・嵯峨野。昔ながらの田んぼや畑が残るこの一角が甲斐さんのフィールドです。

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このあたりは甲斐さんの「なわばり」。

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20年以上前からスケッチに通っているんです。トレードマークは大きなバッグに麦わら帽子。「アイツ」とか「コイツ」と野原の植物に甲斐さんは声を掛けて回ります。・甲斐さんほんと楽しそう。ちょっと乱暴な言い方ですが愛情表現なんだ。

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今日のお目当てはこの花。ノゲシタンポポににているけど、ちょっと地味ですよね。 

「好きです。タンポポのように陽気でないでしょ。どこか哀愁を感じるんです。子どもの時から」f:id:tanazashi:20161223222138p:plain「独特の哀愁ってのはね、タンポポは子供にたとえれば元気いっぱいで、コイツはちょっとひねていて、こっちいらっしゃいっていっても、いやっていう感じがしないって。すごく受けるの」甲斐さんはそんなひねたノゲシを主人公に絵本を作りました。

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「いいなあ、かえるさんはぴょーんととんで、すきなところへいけるから・・・」
いじけていたノゲシはある日突然綿毛になります。

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ひねたノゲシが風に乗って旅立つハッピーエンド。甲斐さんこんな風に植物の気持ちになってみているんだ。このノゲシが今日の主役。さっそく準備開始です。大きなバッグから次々と道具が出てくる。85歳でこれ全部持ち歩いているんだってすごいですね。

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「こんなに斜めになっていたっけか」
線を一本一本。繊細なタッチで描くんですね。

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「これ騒いでる。今働き始めている。わりと言葉を使っているんですよね。描いてるとこっちが。そういう会話がしようと思わなくってもむこうでなんとなく口をきく感じが。そりゃあかけがえのない楽しさです」

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甲斐さん心でノゲシの声に耳を傾けながら描いているんだ。

 

#お宝発見

5時間ほとんど座りっぱなし。時間をかけてじっくり観察するのが甲斐さんの流儀。こんなスケッチを毎日毎日繰り返します。そうしていると思いがけない発見に出くわすことがあるんですって。
実はさっきの絵にも、甲斐さんの発見が描かれています。
この綿毛の飛び方。どこか不思議に思いませんか?

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普通風が吹いたら風下に飛ぶと思いますよね。ところがこの綿毛。左から風が吹いているのに、下に飛んでいるものもあれば渦を巻いているものもあります。これいったいどういうこと。f:id:tanazashi:20161223223406p:plain
「風っておもしろくてね、ここからここまでの間に葉っぱもあるわけですよね。ぶつかると風は簡単に曲がっちゃうから、間を舞い舞いするのが感じられる。こっちに行くヤツがいりゃ、こっちに行くヤツがいりゃ。おんなじところなのに。だからここで渦のようなものが起こって、複雑に風が動いているのがタネの飛び方で見えた」

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旅立っていくノゲシ。「だって子孫をできるだけ広範囲にそうするはずだし。こういうヒトが生き残るにもその方がいいはずですから。それは描いてないと。じーっとしてないと。それは一時間や二時間でそういうものをもらおうったってそうは問屋が卸さない。朝から晩まで毎日同じ場所に通っていると、ある日そういうお宝をくれる。本当にうれしいのよ。本当にうれしいんだから」
毎日草の気持ちになってみている甲斐さんだから、こんなお宝を発見できたんだ。

 

#科学絵本

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甲斐さんが描く絵本は科学絵本と呼ばれます。想像の物語ではなく、観察や科学に基づいてつくるお話。これまでに書き上げた本は30冊以上に上ります。テーマの多くが道ばたの雑草たち。ありふれた草花がよく見るととびきり美しいことに気づいたのだそうです。美しさだけでなく、科学絵本として正確さにもこだわっています。

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そこで欠かせないのがスケッチ。描きためたスケッチを合わせて一枚の絵を描くんですって。

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「みんなばらばらにしちゃうんです。そうするとこれが要るとき、これが要るとき、両方一つの絵の中に納めたいとき、こうやってあると納めやすいわけ。必要なものだけ選び出して、これをさて絵本にどう組むかということです」

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たとえばこのカラスノエンドウのスケッチ。これをもとに描いた部分がここ。
さらに正確に描くためにこういうことも。f:id:tanazashi:20161223223823p:plain茶色いテープはいったい何かというと・・・。

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「タネ。オオイヌノフグリのタネが袋の中に14個。ホトケノザナズナ。そうなのよ。実物大のタネを私の頭の中に入れとかないと絵本を作るとき困る。いくつもの植物を一つのページに収めるときに、タネの大きさって大事になってきますでしょ。比較するから。できるだけ正確に書いておかなければいけない」

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自分の目で見て確かなことだけを伝えたいという甲斐さんの信念。そこから作られた絵本は子供だけじゃなく、大人にも何十年にわたって読まれ続けています。

 

#タネ

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植物の暮らしを見つめてきた甲斐さん。ひときわ注目しているのがタネです。子孫を残すために様々な工夫が凝らされたタネを臨場感たっぷりに描いています。f:id:tanazashi:20161223224016p:plain

あ、これスケッチにタネが貼っつけてあったナズナホトケノザ。本物と同じくらいの大きさに描いてある。

 

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