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響くアートの愛好家

日曜美術館「果てしなき夢~北斎」富嶽百景

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90歳の長寿をまっとうし3万点近くの絵を描いた葛飾北斎北斎がその代表作「富嶽三十六景」を描いてのは70歳を超えてのことでした。

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さらに75歳になるとグラフィックアートの傑作と言われる「富嶽百景」を世に出します。この富岳百景から亡くなるまで、北斎は画狂老人卍という画号を使います。80代になった北斎は毎朝の日課として獅子を描きました。力みなぎる筆遣い。魔除けを願い長寿を祈った獅子です。80代半ばには究極の絵を描きます。形のない波の姿を追い求めた北斎が最後にたどり着いた波図。そして緑と赤の強烈な色彩の鳳凰図。北斎の真骨頂です。

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北斎の死後40年あまり、明治26年に出版されたのが、飯島虚心著「葛飾北斎伝」です。晩年の北斎をリアルに描き出しています。

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北斎は酒をたしなまず、お茶も好きではないのにいつも貧しく、着物が破れていても嫌がらなかった。お金を稼いでも貯めようとは思わず、まるで価値でもないかのように使い尽くした。その心はただ一つ。絵だけに向いていたからだ。北斎の普段の着物はとても奇妙で、絹など着たことがないし、流行の服を着たこともない。六尺余りの天秤棒を杖にして、草履をはいて歩いた。その行いは卑しかったが、気性は抜きんでて偉大でおうこうに恥じないところがあった」

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70歳を超えてから描いた「富嶽三十六景」で、国中にその名をとどろかせた北斎。75歳になるとそれをさらに発展させ冨士さんのあらゆる姿をとらえようとします。それが全三冊・102点もの冨士の絵を描いた「富嶽百景」です。

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富嶽百景北斎のあとがきがある。曰く、70歳までに描いた絵などとるに足らない絵ばかりだ。73歳で生き物の骨格や草木の成り立ちをいくらか悟った。80歳にはますます進歩し、90歳になればその奥義を極め、100歳になったらまさに神業の域に至るだろう。そして110歳には絵の一点一格まで生きているように見えるだろう」

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誰もが知っているもっとも有名な絵「神奈川沖浪浦」。荒波の向こうに白い富士山が見えるこの絵。迫力のある波が印象的です。波の先端が鷲の爪のように描かれています。

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富嶽百景「海上の不二」はとてもよく似た構図です。波の先をよく見ると、こんどはその向こうに群れ飛ぶ千鳥が描き足されています。

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尾州不二見原」では、桶づくりに励む職人の丸い桶の向こうに小さく冨士が描かれています。

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それを進化させたのが富嶽百景「跨キ不二」冨士山は桶を跨いで木槌を振り下ろそうとしている職人の股の間に見えます。

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甲州三坂水面」の絵は少し不思議。そびえている冨士山は夏姿なのに対して、湖面に映っているのは雪をかぶっているかのようです。

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その水面に映る冨士が進化すると、富士山の姿は消えて、ただ水面に映る姿だけになります。逆さ富士だけの作品富嶽百景「田面の不二」です。

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絵に心血を注いだ北斎。多色刷りの錦絵はもちろん、富嶽百景のような絵本でも彫りや刷りにこだわりました。霧にかすむ冨士や森の姿がうっすらとした薄墨の刷りで見事にあらわされています。北斎はこうした薄墨について版元にこんな注文を出しています。
「薄墨は薄いほどきれいで、濃いのは見苦しい。しじみ汁と薄墨はなるべく薄くするように仰せつけてください。中くらいの墨はあまり薄いと引き立たなくなる。納豆汁と中くらいの墨は濃いほうがよろしい」
北斎があらゆる趣向を凝らした富嶽百景。中には富士山がどこにあるのかすぐにはわからないようなひねった絵もあります。

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「雪の旦の不二」。降り積もった雪を男がかき上げています。犬が戯れている雪山は富士山っぽい。雪でつくった雪富士には北斎の茶目っ気が感じられます。

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木の下でうれしそうな顔をしている男が描かれた「盃中の不二」男が指さしている盃の中に富士山が映り込んでいます。

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波立つ海に浮かぶ舟「容裔不二」よく見ると波が少し黒ずんでいるところがあります。逆さ富士です。

 

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