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響くアートの愛好家

日曜美術館「みなが見てこそ芸術 川端龍子」

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日曜美術館「みなが見てこそ芸術 川端龍子

「会場芸術」を掲げ、大胆でスケール感あふれる作品を描き続けた川端龍子。不可思議な戦争画やニュース性に富んだ作品を描き出した、その想像力の源を探ります。

大正から昭和にかけて、既存の日本画に独特な表現で挑戦し続けた画家・川端龍子。みんなに見てもらえるものを、と巨大な画面いっぱいに自由奔放な躍動感あふれる作品世界を作り出していきました。戦争中も創作欲は衰えず、透き通った胴体の戦闘機を描いた「香炉峰」を発表、さらに終戦間際に家族と家を失いながら、その哀しみを作品に仕上げ、戦後も長らく作品を発表し続けます。その原動力とは何だったのか、見ていきます。

【ゲスト】現代美術家会田誠,【出演】明治学院大学教授…山下裕二,龍子記念館学芸員木村拓也,日本画家…並木秀俊,高頭信子,川端龍子 子孫…川端美波,【司会】井浦新,高橋美鈴

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川端龍子は、大正時代から昭和40 年代にかけて活躍した日本画家です。「繊細巧緻」な画風が主流で あった昭和初期の日本画界にあって、展覧会という「会場」で、鑑賞者に訴える力を持つ「会場芸術主義」を提唱し、日本画の型を破る奇抜、豪放、大画面の超大作を次々と生み出しました。

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山種美術館川端龍子の展覧会が開かれています。

 

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解説は現代美術家会田誠*1さん。

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ケレン味といいましょうか。美術の専門的な人だけじゃなくても、ぱっとみてどこが面白いかわかる絵です。サービス精神の旺盛な作家です」

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六曲一双の色鮮やかな屏風絵「鳴門」。縦1m85㎝、幅8m38㎝。浜に上げられた一隻の小船。その向こうの入り江には、泡立ち渦巻く渦潮が画面一杯に立ち上がっています。その大画面を覆いつくすのが海の群青。発表直後から昭和の名作と絶賛された作品です。

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「鳴門」は粒子にとって既存の日本画壇への挑戦状でもありました。海面スレスレに海鳥を描くことで強調されるスピード感。

f:id:tanazashi:20170716163303p:plain波をあらわす線の躍動感。海の深い青と飛び散る白い波しぶきとの明快なコントラスト。

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「筆の動きも早いですよね。龍子の腕力を感じさせる線ですよね。日本画とは基本的に静かなものですよね。だけど、動的なものを表現したいという気持ちだったのではないででしょうか。わびさび的な美意識とは間逆な方に行っちゃった人です」

 

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この作品を発表したのは龍子が青龍社という新たな絵画団体を設立したときのことでした。

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「繊細巧緻なる言下一般的な作風に対しての"健剛なる藝術"に向かって進軍である」龍子はこう宣言し、独自の道を歩み始めたのです。このとき龍子44歳。龍子が画家としてのキャリアをスタートしたのは19歳のときのことでした。

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デビュー直後の作品。「風景」(平等院) 油彩、カンヴァス 12.7×21.7cm。夕暮れ前の(あるいは日の出の)陽の光に染まる日本建築の屋根や木々に照射する光を鮮やかに捉えている小品です。最初は洋画家として世に出ようと、印象派を思わせる荒いタッチで風景画に挑んでいます。

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画業だけでは生計を立てていけず、新聞社に入社。挿絵の仕事を担当しました。

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ユーモアやウイットに富んだ漫画風の挿絵が評判を呼びました。

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龍子にとっても取材経験を積むことで観察力や素早い描写力が身につき後の創作に大いに役立ちます。そして龍子は洋画から日本画への転身を決意します。

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「広く大衆に受け入れられるものがどういうものなのか身にしみて感じたと思うのですね。そこで日本画の当時の状況を見て、自分がそこに風穴を開けるような仕事ができるのではないか。そういう可能性を見出したのでしょうね」

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その後、龍子の名が広く知られるきっかけになる作品が誕生します。ヤマトタケルの伝説を下地に、剣を持った不動明王が登場する場面をダイナミックに表した大作「火生」。

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繊細で緻密な表現が主流の当時の日本画の中で本邦で生命力みなぎる自由な表現は展覧会で高い評価を受けました。その時龍子はこう考えます。大衆の注目を集めるには力強く大きな画面で描くべきだ。そして青龍社を立ち上げた龍子は床の間を飾るような絵ではなく、展覧会を中心により多くの人に見てもらえる大作を次々と生み出します。

 

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大田区龍子記念館は、近代日本画の巨匠と称される川端龍子(1885-1966)によって、文化勲章受章と喜寿とを記念して1963年に設立されました。当初から運営を行ってきた社団法人青龍社の解散にともない、1991年から大田区立龍子記念館としてその事業を引き継いでいます。当館では、大正初期から戦後にかけての約120点あまりの龍子作品を所蔵し、多角的な視点から龍子の画業を紹介しています。

龍子記念館

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川端龍子の作品は大きくて大胆で色鮮やかでという特徴があるのですが、龍子がめざしたのは見た目がインパクトのある非常に強い作品。それに多くの人たちが賛同して盛り上がる。そんなエンターティナーとしての一面は面白いのではないか」

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発表当時はその激しい色使いが“会場芸術”と揶揄されたといいますが、龍子はむしろ展覧会を目的とした制作、つまり“会場芸術”こそ自分の目指す道だと考えるようになります。

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幅8メートルの大作「草の実」。濃紺の背景に数種類の金泥とプラチナ泥を使って生い茂る野の草花を画面いっぱいにダイナミックに描き、幻想的な雰囲気を作り出しています。

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この絵に龍子の巧みな表現技法が見て取れるというのが日本画家の並木秀俊さんです。

 

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「大きな画面の中にボリューム感と奥行き感が見えると思います。たとえばこういう所を見てもらうと、奥の方にある実と手前の方にある実があります。描き込むときにいつもどちらが奥の方にあるかイメージして濃淡を使い分けています。

f:id:tanazashi:20170716163740p:plain意識したような表現方法というのは洋画家出身ならではかなと感じられます」

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この巧みな立体表現は、どのように描かれているのか再現してもらいました。「草の実」は三層構造の色の濃淡で描かれているといいます。

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まず薄い金泥を使って絵の一番下に見えるすすきの茎や半部分を絹地に描いていきます。

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一気に筆を動かさないと金泥がたれ、線の太さや色に斑が生じるといい、筆使いの技量が問われます。

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そして次の二層目。龍子ならではの巧みな表現が使われているといいます。

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筆に染み込ませた絵の具の量を微妙に加減しながら色の濃淡を作り、

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葉や花が立体的に見えるように陰影を付けていくのです。

「金泥はどうしても重いものと軽いものが一緒にくっついているので、手前の方にタマリを持ってきているのです。この濃淡と色だけですべてを表現している。すごいなあと思います」」

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三層目には葉脈など細かな部分を書き加え、空間を演出します。

「金とプラチナという2つの色でおおかたが仕上がっているわけなので、全体でどこに色が乗ってくるか、どこまで色を抑えないといけないのかなどイメージして作っている。川端龍子のもともとの筆使いの高さというものを実感しました」

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「草の実」は巧みな線の表現と金泥の濃淡を活かした複雑な陰影表現によって、従来の日本画とは一線を画す作品に仕上げられていました。

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放送日

2017年7月16日

 

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放送記録

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書籍

 

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http://www.yamatane-museum.jp/exh/upload/list170623.pdf

開催中の展覧会 - 山種美術館

テレビ放送のお知らせ(NHK Eテレ『日曜美術館』)(2017年07月09日 - 新着情報 - 山種美術館

*1:日本の現代美術家。社会通念に対するアンチテーゼを含むテーマを取り扱い、平面作品に限らず、映像作品の監督・出演、またフィギュアなどの制作もしている。