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響くアートの愛好家

アートシーン・ベルギー奇想の系譜 2017.07.30

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幼いキリストを背負い、一人の聖人が川を渡ろうとしています。

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周りには人なのか昆虫なのか。得体の知れない悪魔や怪物たち。

 

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こんな奇妙で不思議な美術の展覧会が開かれています。

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「ベルギー奇想の系譜」。

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通常では思いつかない奇抜な発想=奇想をテーマに、中世から現代までベルギーやその周辺の作品およそ120点を集めました。

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現在のベルギーとその周辺地域では、中世末期に発達した写実的描写のもと、独自の幻想的な絵画が生まれました。ブリューゲルの奇妙な生物、アンソールの仮面や髑髏、マグリットの不思議な風景など、そこにはどこか共通する奇想・幻想の世界が広がっています。
本展は15、6世紀を代表するボスやブリューゲルの流れをくむ作品から、象徴主義シュルレアリスムの作家を経て、現代のヤン・ファーブルにいたるまで、約130点の作品を通して、500年にわたる「奇想」の系譜の存在を探ります。

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15世紀から16世紀にかけて活躍したヒエロニムス・ボスの作品。「トゥヌグダルスの幻視」。

アイルランドの騎士が語ったとされる逸話です。主人公の騎士トゥヌグダルスは、3日間の仮死状態に陥っている間に天使によって天国と地獄に導かれ、そこで恐ろしい懲罰を目にし、目覚めた後に悔悛します。

f:id:tanazashi:20170801214813p:plain人間を積荷と導く愚かな感情と欲望。いわゆる七つの大罪が描かれています。

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貪欲の罪で罰せられる聖職者たち。怪物の鼻からこぼれ出るコインで溺れています。

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窒息するほどワインを飲まされる人は大食の罪を犯しました。

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キリスト教の世界観を自分なりの想像力を掻き立てて描く。ボスの奇想の表現です。

 

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ボスの影響を受けたブリューゲル七つの大罪を七枚の版画で表しました。

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この作品は怠惰の罪の表現。画面中央の女性は、怠惰の象徴である炉ばに凭れて居眠りをしています。

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怪物が枕を差し出しています。

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この怠け者はベッドに寝たまま食事をし、異動も怪物任せです。

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ボスが始めた奇想のイメージはブリューゲルの版画で広がっていきます。

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「現在のベルギー=フランドルでは、人々は勤勉で豊かなのです。だから周りの国が欲しがっていたわけです。裏を返せばいつも戦場になっていたということです。

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そういうなかで人々は若干内向的になるのか、空想を全開させていろいろなものを描いていった。奇想はアイデンティティになっていると思います」

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時代の流れとともにベルギーの奇想の流れは様々に変化します。19世紀、フェリシアン・ロップス(1833-1898)は豚を連れた裸の娼婦を描きました。

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食欲と性欲の象徴である豚。娼婦は目隠しをしています。欲に目がくらみ周りが見えなくなっている政治家たちを、ロップスは暗に批判しました。

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20世紀の画家、ルネ・マグリッドの作品です。曇天の海に大きな鳥のシルエット。中には白い雲が拡がる青空が広がっています。マグリッドは意外なものの組み合わせで、人々を異空間へといざないます。

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現代まで脈々と続く奇想の系譜です。

 

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カトリックの司祭がミサで着るガウンを身にまとった、死神として骸骨となった女が恍惚のダンスを舞っています。教会を風刺する本作は大型の画面に描かれており、作者の深い思い入れが感じられます。作者であるフェリシアン・ロップスは反カトリック的、反ブルジョワ的強迫観念をもっており、版画、挿絵を中心に、油彩画、水彩画、著述など様々な分野で才能を発揮しました。

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筆を咥えた骸骨が、ドラムにリズミカルに打ち付けられています。数多くの戦地となってきたベルギー芸術には死の表象が絶えず見え隠れします。この根深く厳粛な難題にユーモアで答えるコーペルスの表現は、ベルギーの芸術家が培ったアイデンティティの一つといえます。

 

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