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響くアートの愛好家

キラリおいしいに乾杯!~新潟・燕の金属グラス~

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きらりおいしいに乾杯!~新潟・燕の金属グラス~

日本のモノづくりのワザを紹介する「イッピン」。新潟県燕市はスプーン・フォーク・ナイフなどの産地です。ノーベル賞授与式の晩さん会でも使われるという、燕(つばめ)の金属製食器。明治時代、手作業で始まった生産は、戦後、海外への輸出で大きく成長しました。機能性を徹底追及したデザインや原型を作る彫金、口当たりの良さを作る研磨など、世界トップレベルのワザを徹底解明します!

 

放送 2015年8月9日

最高級のカトラリー*1

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東京・新宿の百貨店。

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ずらり並ぶのはカトラリーや食器です。

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新潟県燕市が生み出した製品です。

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中でも注目を集めたのがステンレス製のタンブラー。調理器具などに使われる軽くて丈夫なタンブラーが鏡のように磨き上げられています。

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極限まで磨き抜かれたタンブラーは買い物客を驚かせます。

 

鏡のように輝かせる 究極の研磨

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新潟・燕市では古くから金属加工業が栄えてきました。

f:id:tanazashi:20170902204016p:plain2,000を超える金属製品工場があり、金属研磨のレベルは世界最高峰と謳われています。

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究極のタンブラーを作った工房を訪ねました。

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職人の山崎正明さん、妻の直子さん、長男の雅文さんがお出迎え。正明さんは奇跡の磨き職人と呼ばれ、数年前に極限まで磨き抜いたタンブラーを生み出しました。

webdb.tsjiba.or.jp

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ステンレスタンブラー燕市(新潟)※直販。予約を入れても2年待ちだそうです。

磨き屋シンジケート - ステンレス研磨・マグネシウム研磨・アルミ研磨からバフ研磨,出張研磨,バレル研磨,表面処理まで金属研磨専門サイト

 

手軽に手に入る燕市のビールタンブラーも産地にはあります。

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研磨前の表面は傷や汚れがつくなどくすんでいます。研磨によって細かく磨くことで鏡のような光沢を生み出すことができのです。

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山崎さんは綿布を幾重にも束ねた「バフ」。これを機械に装着し一分間に2,000回以上回転させることで金属の内側を磨きます。磨く表面をバフに対して平行に当て、余計な衝撃を与えないこと。面を手は膝の上にしっかりと固定し、足を動かしながら磨くことで動きが制御できます。余計な力を金属に与えなくて良いという。

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内側を磨き終えると、硬さやキメの細かさで違いがあるバフを使い分け外側を磨きあげます。

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磨き続けること3時間。ピカピカに磨き上げられました。十分商品として流通しそうな仕上がりですが、表面にうっすら筋のようなものが見えます。

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山崎さんは10万分の1ミリ程度の磨き跡も、綿でできた鏡面磨き用のバフを使って磨きます。

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ほんの僅かな衝撃でも歪んでしまうため最新の注意を払いながら完璧な仕上がり具合を追求し続けます。

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ビールをおいしくする仕掛けとは?

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磨きあげたタンブラーでビールをいただきます。「泡がきめ細かくてビールは滑らかな味わい」という感想。

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山崎さんは工程の最後に極細の化学繊維を使って、底に渦巻状の小さなキズをつける「ヘアライン加工」を施していました。

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ビールを注ぐと底にできた微小な溝にたまっていた空気が徐々に放たれ、小さな泡が次々と出てきます。山崎さんが試行錯誤の末に辿り着いた知恵です。

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「一番のものを作りたい。それは自分の技術も上がるし、そこから何かが見えてくるんじゃないかという思いがある」 

職人が持てる力を使って作り上げたイッピンです。

 

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伝統の技が生むモダンなグラス

もう一つユニークなグラスがあると聞き、新潟のイタリアンレストランを訪ねました。

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http://bit2013.com/

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金属製の酒器が若者に人気を博しています。伝統の職人技とモダンなデザインが調和している新しい製品です。

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秋山武士シェフの情報をもとに1816年創業の老舗工房を訪れました。

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7代目当主の玉川基行さんが工房に案内してくれました。

http://www.gyokusendo.com/

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新潟・燕市の金属加工業は銅の加工から発展しました。

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職人たちが叩いているのは銅製品です。

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銅板を叩いて器を作る技法は「鎚起銅器」と呼ばれている。

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須佐真さんは20年の鎚起銅器職人です。

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まずは水玉部分だけマスキングした銅の器を火で熱し、そこに錫をつけた。

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すると錫は液状化し、銅器は銀色に覆われていった。

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器の外側は水玉部分を覗いて銀色にコーティングされます。

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須佐さんは金槌で表面を叩いて強度をあげると同時に緻密な模様をつけていった。

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次にマスキングして残った銅の着色作業に入ります。

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硫化カリウム液に浸すとマスキング部分だけ黒くなった。

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そして緑青の入った混合液に浸します。

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この技法は代々この工房で受け継がれてきた秘伝なのだそうです。

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器の槌目模様は美しい青みを帯びて行きます。

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www.kanpaitsubame.com

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特殊加工で大変身!新しいマグカップ

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ステンレスのマグカップにある加工を施すことで、金属らしからぬ温かみを感じさせる風合いを醸し出すものになります。

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軽くておしゃれな普段使いのマグカップです。金属らしからぬ金属製品の秘密とは。

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つくっているのは燕のベテラン塗装職人関川節さん。専門分野はガラス質の釉薬を高温で焼き付けてコーティングする「琺瑯加工」です。

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産地では金属製品の一部に琺瑯(ホーロー)加工をすることでおしゃれなスプーンなどを作っていました。

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あるとき、食器全体に琺瑯加工をした所おもわぬ温かみを持った製品ができあがりました。

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そして去年、ステンレスならではの軽量さと独特な風合いを持つ新たなマグカップを開発したのです。

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表面にスプレーで釉薬を吹き付けるというものだが、関川さんは長年の経験則から適量を表面に均等かつ手早く吹き付けることができるのだそうです。

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乾燥させた後に窯入れし、800℃で5分弱焼き上げてマグカップは完成します。


*1:食卓用のナイフ、フォーク、スプーンなどの総称。 広い意味では給仕用のサーバー(トング)なども含む。