チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

日曜美術館「桜の画家 中島千波 人間群像を描く」

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今年の美術展めぐりはこの二冊

芸術新潮 2017年 12 月号 特別付録:芸新手帳2018

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日経おとなのOFF 2018年 01 月号

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日曜美術館「桜の画家 中島千波 人間群像を描く」

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日本画壇を代表する中島千波(72歳)。日本各地の桜を描く一方、人間とは何かをテーマに40年以上制作してきた。新シリーズの創作の現場に密着、思いを探る。

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中島さんが今取り組んでいるテーマは「無明」。

仏教の言葉で人間のさまざまな煩悩を引き起こす迷いのこと。

人間追求は若い頃のある思いから脈々と息づいてきた。

その創作の秘密とは?そして桜を描くこととの関係は?

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生まれ故郷の長野県小布施町にある彼のミュージアムも訪問。

華やかな桜の作品もたっぷり紹介しながら画家・中島千波の一つの作品ができあがるまでの半年間を克明に描く。

【ゲスト】日本画家/東京芸術大学教授…中島千波,【司会】井浦新,高橋美鈴

放送日

2018年1月7日

アバンタイトル

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たおやかでありながら、きっぱりとした墨の線。

日本画ならではの美しい線描です。

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現代日本画壇を代表する一人、中島千波さん72歳。

20代で日本画の前衛としてデビュー。

以後半世紀、花鳥画の名手としてめざましい活躍を続けています。

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その中島さんが今描いているのが人間。 現代に生きる生身の女です。

中島さんは桜の画家として知られています。

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日本各地の桜の名所を訪ね歩き、 描いた桜の屏風はおよそ40点。

絢爛たる中島ワールドは圧倒的な人気を博しています。

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50代の中島さんが企画から6年の歳月をかけて挑んだのが 成田山東京別院深川不動堂の巨大な天井画でした。

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日本最大級の巨大な天井画 「大日如来蓮地図」。

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中島さんの大日如来が、ここを訪れる善男善女を見守ります。

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中島さんが今描いている女性たちはいったい何者なのでしょうか。

この女性たちを描くことで何を表現しようとしているのでしょうか。

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テーマは「無明」。

仏教の言葉で人間の様々な煩悩を引き起こす迷いのことだといいます。

「無明という難しいテーマ。それを形に落とし込むのに、どういう人間のフォルムをここに表現するかというのがいちばん大事」

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中島さんはなぜ今「無明」を描くのか。

その創作現場に密着。 72歳の画家の人間追求の姿を見つめます。

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クロッキーデッサン

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東京港区白金台。

中島千波さんの住い兼アトリエです。

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中島さんは広いアトリエでモデルに向き合っていました。

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新作「無明」の制作が始まったのは2017年7月のことです。

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最初の作業はクロッキーデッサンと呼ばれるもの。

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制作は常に対象の写生から始まります。

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花であれ、人物であれ、じっと見る。 あるがままに描き写す。

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写生こそが中島芸術の基本です。

「はじまったばかりなので、この娘のかたちをどういう風にやっていくかを描きながら考えているんですね」

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「やっぱり描いてないと手がね。あの、衰えるんですね。衰えるんでなるべくそれを、練習してるってのかな。確認しながらやっていくってのか・・・」

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二人目のモデルの登場です。

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「雰囲気が違うので、これはまた面白いなと、やっぱりそれぞれ個性がね、あるんで」

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-悩んでいるようにしてくれる・・・ モデルには様々なポーズを取ってもらいます」

「女性の方が描きやすい」

「男の匂いよりも女性の方が中性的にできる」

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「女女というのではなくて、女性だけど中性的というか」

「人間のもとになっているのは女の人の方が元かなと思って・・・男はあまりいらないのじゃないかと思って(笑)」

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3人目のモデル。

-寝っ転がっちゃって・・・だらしなく寝っ転がって上むいてください。

「今描こうとしているのは、脱力しているようなというか」

「どうにもならないというか」

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「くだらないというか、つまらないというか、馬鹿みたいだというか、そういうような状況の形をちょっと描きたいと思っているんで・・・」

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今回のテーマは「無明」です。

人間の無知、愚かさをどのようなポーズで表現すればよいのか、中島さんは探り続けています。

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-こうやって格好して。うーん。

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眉間の皺。 閉じた目。

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次第に人間の迷いの表情が描かれていきます。

-はい。ありがとう。

クロッキーデッサン終了です。

 

アトリエ拝見

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大きな屏風を描くこともあるため、中島さんのアトリエは広い空間がとられています。

日本画は水と膠を使って描きます。

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絵の具がたれないようにするため、 画面を床に広げて寝かさないと描きにくいという事情もあります。

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目を引くのがアトリエの壁に並んだ岩絵具の瓶の数です。

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床には様々な太さの筆が並んでいます。

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日本画の顔料は膠で溶かして使います。

少し固めに溶かすのが中島さん流です。

「朝起きるとタイマーをつかって温めて柔らかくして仕事を始めます」

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絵の具の棚の上に飾られているのは父親の日本画家・中島清之さんの写真です。

中島清之さんが70代の頃、横浜の実家で撮影したものです。

「親父のほうが毛がなかったですね(笑)」

 

中島さんの故郷

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長野県の北東部にある小布施町。人口11,000人ほどの町です。

小布施といえば栗が有名。

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江戸時代に葛飾北斎が滞在したため近年の北斎ブームで町は人気の観光スポットになっています。

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街の一角にある小布施ミュージアム。中島千波館。

中島さんはこの町で生まれたことから1992年に開館しました。

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美術館には中島さんの代表作などおよそ1,600点が収蔵され、ゆったりとした展示室では季節ごとに様々な企画展が行われています。

25年間でのべ150万人の人が訪れたと言われています。

中島さん自身もしばしばここを訪れ、絵を教えたりギャラリートークをしたりしています。

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「家族で疎開したということから。(昭和)19年に疎開してきたのですが、20年の12月に僕がいきなりできちゃった・・・」

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「5歳位のときですね。僕は顔見られて描かれるのが嫌ですぐ逃げちゃうんですね。これミカンをもって、テレビかなんかをみているんでしょう、ぼやっとしてい。その時にササッと付けたてで描いちゃった顔ですね」

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「その時父親が日記を書くんです。そこに僕のことが書いてあって」

「千波がますます悪くなったけれど、今朝描いたエノケンの顔はちょっとビックリさせる。半月ほど前から急に描きだした。子どものように自動車や電車から始めずに人の顔から描きはじめた・・と書いてあります」

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1965年。二十歳の中島さんは東京藝術大学日本画科に入学。

画家への第一歩を踏み出します。

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夥しい数の顔のスケッチや油彩。

すべて中島さんの自画像です。

このころ日記をつけるように毎日毎日描いていたといいます。

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さすが5歳でエノケンの顔を描いただけあって、スケッチの自画像もなかなかです。

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フォービズム風のタッチで書かれた大学三年生の自画像。

「変な顔しているよね。鬱々した思いを持て余しているようでもあり、いささかおどけているようでもあり、どうしても自画像には自己内生的な面があって、それに素直に迫るのも癪で、まこんなもんでしょ」

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こちらは日本画の手法で書かれた自画像。

横目でこちらを見る視線にはすでに日本画家としての自信が感じられます。

 

時代を描く

中島さんの青春時代はまさにベトナム戦争と重なります。

当時若者たちは混沌とした世界情勢の中で怒りや焦燥を抱えて生きていました。

中島さんもその一人です。

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1971年。26歳の時の作品「草の主」 院展に出点した出世作です。

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草の主とは菊の花のこと。

菊もイスも権威と権力の象徴です。

星条旗を意味する赤い縞模様の下には顔の見えない死者が横たわっています。

草の主は中島さんの戦争へのプロテストであり、日本画の前衛としての出発を告げる代表作となりました。

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「バックに悲しんでいる所。いわゆる亡霊のように。そういうところが、やはり為政者によって、一人の人間、二人の人間、人間のちょっとしたことで悲しむ人間がいっぱいいるってことの憤りというか、そういうものを表現しているというか。戦争というものは良くないよね。そういうつもりで描いている」

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上半身裸で何かを叫んでいる男。

シリーズ衆生です。

ここから人間を描くという中島さんの新たな挑戦が始まりました。

衆生は生きとし生けるもの。いのちあるすべてのものを言いますが、迷いの世界にある生類をも言うそうです。もともと仏像を描いたり、仏像の制作などもやっていました。衆生という仏教用語も自然と浮かびました」

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 様々なポーズで喜怒哀楽を表現する女たち。

中島さんは日本画の伝統的なモチーフを打ち破り、人間が叫んだり悩んだり刷る姿から人間の存在に迫ろうとしたのです。f:id:tanazashi:20180114165611p:plain

第五回山種美術館展で受賞した作品「衆生・視」。

蓮の花の上に座る女が指の間からこちらを除いています。

見てはいけないものを見たいと思う人間の心理。

いったい何を見ているのか。

真実は見えるのか。 中島さんの問いかけです。

 

表現したいテーマとは

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院展にはあっていないような感じがしますよね。シュールリアリズム風の手法を使いながら、戦争をテーマにしたというか、そういう感じで描いているので、実際は入らない(入選しない)絵でしょうね。ただ美しい色で描いているので、それですっと入ったのではないでしょうか。怖い絵でもなんとなくきれいな絵だなと思いながら入っていくという感じで描いたので、だから入ったのではないかなと思いますね」

「戦争がある程度沈静化し、ベトナム戦争も終わっていく。その時はじめて、どうしてなのだろうか。ああ、人間が起こすものなのだなと。人間の憎しみだとかいろんな利害関係とかで起こしてくるものなので、それはやはり人間を中心に書いていくのが一番いいかなというので、衆生という生きとし生けるものすべての総称で人間を描いてみようかなと思ったのです。最初に父親をモデルにして、阪神裸になってもらってモデルにして描いたのです。そして結婚したばかりだったので女房がいて、モデル料がいらないということで、女房に憎しみとかいろいろな表示用をしてもらって描いたのです」

 

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衆生シリーズ以降、中島さんの人間追求は5~6年毎にテーマを変えながら続いて行きます。

人間の体を純粋に色と形によって表現した形態シリーズ。

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エロティックな裸婦の造形美が追求されています。

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続くシリーズは「眠」。

人も犬も眠っています。

形態シリーズはいささか不評だった。だったらいっそ眠ってしまえ。と開き直った中島さん。

目を閉じてこそ見えてくる世界があるのではということです。

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シリーズ「空(くう)」。

長い眠りから覚めた人間の姿は空へ。

空とはもろもろの事物は実態がないということです。

空虚な存在である人間が内面の中でそれぞれの意思を持つことを表現したと中島さんは書いています。

 

本画に取り組む

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「描いた中からいい形のものを選んで画面に落とし込みます」

「無明」の制作は次の段階にさしかかりました。

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これは「小下絵」と呼ばれ、モデルを使ったデッサンの中から気に入ったポーズを組み合わせて構成した下絵です。

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いよいよ屏風の本画に向き合う中島さん。

木炭を使った「アタリ」と呼ばれる作業。

大きな画面に木炭でおおまかな構図を描いて行きます。

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作品のグランドデザインになるため、クロッキーデッサンを入念にチェックしながら描いて行きます。

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「実際、無明というむつ開始テーマ。それを形に落とし込むのにどういう人間のフォルムをここに費用減するかというのが一番大事」

木炭の線がダイナミックに画面を走ります。

まさに、描いては消し、また描くの連続。

気に入った形を求めて悪戦苦闘が続きます。f:id:tanazashi:20180114170752p:plain

「『無明』という意味の直接的な形をただ描いているだけでは絵としては成り立たない。

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だから、ああそうだったのかと、後々見ているうちに、ああそういう意味だったのかなんていう、大雑把な見方でいいかなと思ってます」

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この直線はいったいなんでしょうか。

人間のフォルムではない不思議な形が現れてきました。

象形文字で百と八という漢字を描いています。一応、四苦八苦を意味する字をいれることでわかりやすくと言うか」

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「無明」という作品のために中島さんが書き留めたメモ。

四苦八苦、煩悩、百八つなどという文字が見えます。

三人の女たちと象形文字

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考え込む中島さん。

満足行く形とはどういうものなのか。悩みは深まります。

 

桜の画家

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人間追求のテーマとともに中島さんが書いてきたのは桜。

満開の桜に囲まれて至福のときを味わうことができる展示室です。

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岐阜県根尾谷の薄墨桜。

中島さんが本格的に桜を描くきっかけとなった銘木です。

薄墨桜の名は、満開の時は白い花びらが散り際になると淡い墨色を帯びてくることから付けられたと言われています。

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樹齢1200年。長野県素桜神社の神代櫻です。

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小布施の隣、高井の坪井のしだれ桜。

中島さんにとって最も思い入れの深い桜です。

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晩秋のある日、中島さんの案内で高井に向かいました。

「初代館長が高井村の小学校の校長先生。音楽の先生で、しだれ桜をぜひ描いてくれということで、連れて行ってもらったのです。これはいいと思って早速描き始めました」

村人たちの墓に抱かれるようにして立つしだれ桜。

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実は今から20年前1998年の冬、中島さんはNHKの番組の撮影でこの場所を訪れていました。

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雪のちらつく12月。

中島さんは花も葉もない桜の枯木に向き合っていました。

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冬の桜の裸の幹。

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そこに樹木の命そのものが顕になる。

その姿を描きたいと中島さんは考えたのです。

「千年近い桜の幹を見たときにすごいなと思ったのです。霊魂があるような感じをウケた。輪廻というのかな、枯れては生えて、枯れては花を咲かせてという。それが人間の命と同じような形で存在している。古い木に耳を傾けて、音がドクドクドクドクと、人間が心臓の鼓動がしているようなそういうことと同じように桜の木が生きているのだということを証明する」

中島さんにとって桜を描くことが人間追求のテーマに重なります。

1975年。衆生からはじまった人間追求。

40年の歳月を経て2011年。

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エクジスタンス。

存在シリーズが幕を開けます。

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描かれた人物たちはこちらと目を合わせようとはせず、 孤独に自分は一体何者なのかを問いかけています。

中島さんはついに、人間存在とは何かというテーマに挑んだのです。

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無明の制作が続いています。

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墨線という日本画のもっとも重要な作業が始まります。

息を詰めて筆を運ぶ中島さん。 緊迫した空気が伝わってきます。

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「墨線で骨描きというのをやっているんですけど、これをしっかりやっておかないと、絵の具がかかっちゃうので消えちゃうのです。それで骨格をしっかりとっておく」

墨線はミスが許されない作業。

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人を描くことへの強いこだわりが一本一本の線に込められ、人間の存在が立ち現れてきます。

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「生活している中で何か気がつくんじゃないか。それが全部人間の生きていることの元。それが存在であることに行き着いてきたというか、難しいことを考えなくても食える方に行ったほうが楽なのではないかという考えもあるが、僕の中にはそうではないものがあるんだろうね」

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制作は最終段階。

彩色です。

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岩絵具の柔らかな色彩が女の顔に命を吹き込みます。

人間群像の新シリーズ、第一作完成です。

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「存在をやってきて、存在するという意味とは何か。それと社会生活する上での問題はいろいろな不条理なことがありますよね。それを認識するというところで、ものを知らないということ、ものを考えないということはそれは良くないんじゃないかということで、知るということ、ものを受け入れて判断する。その判断のつかないような人間になってはいけないよねということを無明の中でやりたいと。見る人もおかしな絵と思いながらなんでこんな絵を描くのかというところからやりたいなと」

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「人間の顔の表情は変わってくるわけですよね。表現で表現できたら面白い。だから主事用というシリーズとずっとつながっているみたいですね。戦争も関係あった。僕には。戦争も続いていますよね。なぜ憎しみ合うのか。なぜそんなことをするのか。絵かきにできるのはそんなところで、絵画で表現できたら」

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死ぬまで人物を描きたいのは僕の哲学というのか、考えを表現したいからです。

面白いか、面白くないかじゃない。

売れるか売れないかじゃない。

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描きたいだけなんです。

人間とは何かという究極の問いを絵筆に託す、画家・中島千波さん。

これからどこに向かうのか。 長い旅路は続きます。

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今年3月、名古屋で開かれる古典に向けて、中島さんは再び桜の制作を始めています。

新作は愛知県正徳寺の山桜。会場に満開の桜が咲き誇る日が待たれます。

放送記録

av98ingram.wpblog.jp

 

書籍

 

展覧会

おぶせミュージアム・中島千波館 常設展のご案内 - 小布施町公式ホームページ