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響くアートの愛好家

オーレリアンの庭 今森光彦 里山の四季を楽しむ

 

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オーレリアンの庭
今森光彦 里山の四季を楽しむ

 

日本各地で里山を撮り続ける写真家の今森光彦さんは、

琵琶湖を臨む田園にアトリエを建て、「オーレリアンの庭」という名の美しい庭を手作りした。

「オーレリアン」とはチョウを愛する人のこと。

花が咲き乱れ、色鮮やかなチョウをはじめ多くの昆虫や鳥たちが集まる他に類を見ない命の庭だ。

そこには里山で学んだ知恵や里山暮らしを楽しむアイデアが詰まっている。

里山の魅力にあふれるユニークな庭との交流を四季に渡ってつづる。

【出演】写真家…今森光彦,【語り】中越典子

放送:2018年5月3日

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写真家 今森光彦さん。

30年以上にわたり日本各地の里山を訪ね、その自然と暮らしを撮り続けています。

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今森さんは里山を取り続ける中で、人と自然が共存する様々な知恵を学んできました。

 

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その里山の知恵を注いで作り上げたのがこの庭です。

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生き物が住める工夫を庭のそこかしこにちりばめ、

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こんな小さな蝶の幼虫も命をつないでいます。

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ほかにもたくさんの虫や動物たちが集まるいのち溢れる庭が生まれたのです。

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一人の写真家の思いが詰まったこのユニークな庭を

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四季に渡って訪ねてみましょう。

生き物たちの思いがけない輝きや、里山ぐらしの楽しさがきっと見えてきます。

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琵琶湖を望む滋賀県大津市今森光彦さんが生まれ育った町です。

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今森光彦さん*1は自然と人との関わりをテーマに撮影を続けている日本を代表する写真家の一人です。

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なかでも今森さんを魅了してやまないのが 

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日本ならではの里山の自然。

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里山とは田んぼや溜池、雑木林など人が手を入れながら維持してきた自然。

人と生き物とが共存する空間です。

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その今森さん。30年以上前、 大津市の郊外に広がる里山の一角にアトリエを建てました。

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放置されて荒れ地だった一千坪の土地を切り開き、庭や雑木林を一から作り上げたのです。

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蝶を象った門を入ると、

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緑豊かな庭が広がります。

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その庭の脇にはクヌギの並木道。

その右手にはコナラなどを植えた雑木林が広がります。

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庭と並木道の間には小さな池もあります。すべて今森さんが自ら考えて配置しました。

 

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そして、奥に見えてきたのがアトリエです。

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ここが今森さんの仕事場。写真の整理や執筆活動などを行います。

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庭や雑木林の自然に囲まれた生活。

仕事もプライベートもおだやかにすごせるといいます。

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庭を初めて取材したのは9月。

この時期は夏と秋の花が両方見られ、実りも豊富です。

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庭づくりの工夫がよくわかります。

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秋を知らせるハナトラノオです。

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秋の七草のひとつフジバカマ

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直径5ミリほどの小さな花です。

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庭はチョウを呼び込むため、四季を通じて花を絶やさないようにしているという。

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夏から秋まで咲くフサフジウツギには、大振りなナガサキアゲハが蜜を吸いに訪れた。

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秋の七草フジバカマの花にはキタテハやアサギマダラがとまった。

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ニラの花にはツマグロヒョウモン

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庭にはチョウの幼虫のえさとなる草や木も植えられています。

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レモンなど柑橘類はアゲハチョウの仲間の幼虫が葉を好んで食べます。

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ネムノキの葉はキタキチョウの幼虫が好みます。

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チョウの卵はこれらの葉に産みつけられるため、えさとなる葉は欠かせないのです。

今森さんは花を植えるだけでなく自然に咲く花も大切にしています。

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欠かせないのがこまめな草刈り。

自然と共存する里山の暮らしから学んだ知恵です。

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野辺に咲く小さな草花は、背の高い草が増えると陽の光が十分に届かずかず花を咲かせることができません。

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雑草のなくなった地面からはカタバミツリガネニンジンなどの花が咲きました。

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これらの花にもチョウが蜜を求めてやってきます。

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あえて背の高い草を残す場所もあります。

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ナガコガネグモの巣があるため草を刈らずにおくのです。

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草刈りもちょっと工夫すれば変化に飛んだ環境が生まれます。

より多くの生き物がいっしょに暮らせるのです。

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クマバチなどの昆虫が寄ってきました。

人が手を入れながら保たれる草木や生き物の営み。

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これこそが今森さんがめざした庭の姿。

オーレリアンの庭は里山そのものなのです。

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今森光彦さんのこだわりは庭づくりだけにとどまりません。

10月のある日、家族とともにお出かけです。

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今森さんが常に意識していることは里山に暮らす地域の人たちと交流を絶やさないことです。

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お米の無農薬栽培を共同で行っているという田んぼに到着。

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地域の農家は里山をよく知る生き字引のような存在。

今森さんの頼れる先生です。

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稲刈りは昔ながらの手作業です。

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地域の農作業に参加する理由はふたつあります。

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ひとつは里山の生き物との出会いを楽しむこと。

そしてもう一つは自分が里山の一部として生きていることを実感するためです。

生き物は里山の環境を利用して生きています。人もまた、里山とのつながりの中で暮らすことが大切だと今森さんは考えています。

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11月。秋も深まり庭の木々もすっかり色づきました。

生き物たちで賑やかだった庭は静けさに包まれました。

池のそばにいるのはイシガメです。

ゆっくり土手を登り始めました。

土手を登ったイシガメは並木道を横切り雑木林を目指します。

落ち葉溜まりで冬眠し冬を越す支度をするのです。

 

12月。冬の訪れです。

二羽の木々はすっかり葉を落としました。

12月になると、翌年のための庭仕事が行われます。

冬になると木々が生命力を蓄えます。

木々の剪定をすると葉の付きが良くなるのです。

丁寧に手入れをするのがクヌギの並木道です。

クヌギは成長が早いので選定が欠かせないのです。

クヌギは庭の成長に欠かせない大事な存在です。

毎年同じところで枝を落とすので、幹はコブの用になっています。

今森さんが木のてっぺんで発見したのはカラスの宝物です。

カラスが柿の実を隠して干していました。

今森さんは冬の庭造りにも里山l知恵を生かしています。

それは落ち葉の利用。

落ち葉は木箱に集めて腐葉土を作ります。

残った枝や葉は別の木の根元に積んでおくのは生き物を増やすための工夫です。

冬の間は風が強いので落ち葉が飛んでしまいます。

落ち葉溜まりを作ることで小動物が冬眠できる場所を作るのです。

落ち葉の中にはキタテハ、キタキチョウなどが冬ごもりしていました。

今森さんはエノキの根本にある工夫をしています。

エノキの枯れ葉にはゴマダラチョウがいます。

幼虫のまま冬を越します。

そのため、枯れ葉のたまる場所には背の高いスイセンを植えます。

スイセンは秋から葉を伸ばします。

枯れ葉が風で飛ばないよう配慮します。

冬ならではの里山の恵は薪。

庭の木からとれた薪はアトリエでの料理にも使います。

アトリエにはピザを焼く窯があります。

薪は里山からいただいたエネルギー。

近所の人々を招いて焼きたてのピザをふるまった。

昔の里山には薪をとるための「薪炭林」がありました。

森の恩恵をもらうたのしさがあります。

夏に木を成長させて冬に刈り取ったという。

 

1月になると気温もぐんと下がります。

庭に雪が降り積もった。

冬本番。小さな生き物にとっては耐え忍ぶときです。

こんなときだからこそ、じっくり庭と向き合うと発見があります。

ナガサキアゲハのさなぎ、オオカマキリの卵などが冬を越すのがみられた。

冬木立の庭には野鳥が訪れます。

庭の主の今森光彦さんはアトリエの中からモズなどの野鳥を観察した。

並木道のクヌギのてっぺんで食べ物になるものを探しています。

いのちといのちのつながりは里山の自然な姿です。

野鳥は庭づくりを手伝ってくれます。

担い手は、ムクドリツグミ

庭の木の実を食べて種をあちこちにまいてくれるという。

 

4月。春を迎えると庭には草木が芽吹きます。

ひだまりで顔をのぞかせているのはショウジョウバカマ

カタクリなどの野草が花を咲かせた。

地面に近い草花が初めに芽吹くといいます。

小さな野花が次々と花を咲かせています。

オオイヌノフグリ

ヒメオドリコソウ。わずか10センチほどの野花が次々と花を咲かせます。

花が増えるとチョウが活動を始めるといい、庭の主の今森光彦さんはキタキチョウなどの姿を追った。

エノキの落ち葉で冬を越したゴマダラチョウの幼虫は、えさとなる若葉を求めて幹を登るのがみられた。

4月下旬になると木々にも新緑が芽吹いた。

 

6月。夏を迎えた庭にはさらに多くの種類のチョウがみられた。

春には幼虫だったゴマダラチョウも羽化していた。

草花では日本古来の里山の野花・ネジバナなどが花を咲かせた。

庭の主の今森光彦さんは庭の草花を摘み取り、切り花などを部屋に飾って季節を楽しんだ。

 

7月。庭にはボタンクサギの群落が花を咲かせた。

花は奥深くに蜜をもつといい、蜜を吸える大型のキアゲハ、ナガサキアゲハなどのチョウが姿を見せた。

チョウは明るい場所に咲く花と、クヌギの並木道の奥の木かげを往復して暮らすといい、境目となる並木道のように生態系の変わる空間は「エコトーン」と呼ばれるという。

日の当たる林にはノコギリクワガタ、木々と行き来できる池にはトノサマガエルなどがみられた。

 

今森光彦さんはまた、里山の豊かさを伝えるイベントも行っている。

親子100組以上を里山に招き、2泊3日の昆虫教室を開いて自然とのふれあいを教えている。

雑木林と田んぼをつなぐため池も異なる自然をつなぐ「エコトーン」にあたり、様々な昆虫などがみられた。

昆虫教室では子どもの虫とりを手伝うことはせず、虫の居場所を教えて子どもたちにまかせている。

今森光彦さんは、自然とふれあうことで子どもたちの中に感性が育まれると答えた。

 

 

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*1:1954年滋賀県生まれ。 大学卒業後独学で写真技術を学び1980年よりフリーランスとなる。 以後、琵琶湖をとりまくすべての自然と人との関わりをテーマに撮影する。 一方、熱帯雨林から砂漠まで、広く世界の辺境の地を取材し続けている。 《主な著作》. 「今森光彦 昆虫記」「世界昆虫記」(ともに福音館書店)、「里山物語」「里山の少年」(ともに新潮社)