チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

「マルク・シャガール —愛と祈りと冒険と。8つの版画物語—」【アートシーン】

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マルク・シャガール
—愛と祈りと冒険と。8つの版画物語—

マルク・シャガールの幻想的な世界を版画から見ていく展覧会です。

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フランスを拠点に活動したユダヤ人画家マルク・シャガール

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銅版画やリトグラフを中心に2000点を超える版画を残しました。

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古代ギリシャの恋愛小説ダフニスとクロエを描いたシリーズ作品。

多彩な色彩で感情を表現したシャガール

少年と少女の瑞々しい初恋を描きシャガールの版画の最高傑作と言われています。

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群馬県高崎市美術館で3月29日。

 

会場:高崎市美術館

会期:2020年2月1日~3月29日

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「開校100年 きたれ、バウハウス —造形教育の基礎—」【アートシーン】

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開校100年
きたれ、バウハウス
—造形教育の基礎—

20世紀の初頭。造形教育に革新をもたらしたバウハウスを紹介する展覧会です。

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1919年。ドイツに開校した造形学校バウハウス

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ナチスドイツの圧力によって閉鎖を決めるまで14年間。

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カンディンスキーなど世界中から招かれた教師が実験的な造形教育をすすめました。

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学生は素材研究の授業が必修でした。

例えば1枚の紙を切る折る曲げることによって紙自体の可能性を探らせます。

既成概念を取り払い、新たな創造力を引き出そうとしていました。

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この学校で学んだマルセル・ブロイヤーの椅子。

椅子の機能を徹底的に分析し、自転車のフレームをヒントに常識破りの素材金属パイプで椅子を作りました。

美しさと機能性を兼ね備えたバウハウスらしい作品です。

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香川県高松市美術館で3月22日まで。

 

会場:高松市美術館

会期:2020年2月8日~3月22日

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「近代の博覧会と茶の湯」【アートシーン】

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近代の博覧会と茶の湯

明治という近代化の中で日本文化を担った茶の湯を紹介する展覧会です。

f:id:tanazashi:20200304211243p:plain文明開化とともに伝統文化が顧みられなくなった時代。

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世界に通用する日本の伝統とは何か。模索が続いていました。

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柱の一つとなったのが日本の美意識の結晶とも言われる茶の湯でした。

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明治5年の京都博覧会では新たに流麗という抹茶の作法が披露されました。

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テーブルと椅子を使って外国人に正座を強要することなくお茶を楽しんでもらいます。

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新しい時代に寄り添った新たな日本の形でした。

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この展覧会は3月17日から再開を予定しています。

 

会場:市原湖畔美術館

会期:2020年1月7日~ 新型コロナ対策のため臨時休館

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「狩野派 画壇を制した眼と手」【アートシーン】

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狩野派
画壇を制した眼と手

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室町時代から江戸時代にわたり画壇の中心にあった画家集団狩野派。時の権力者たちの欲求に応える安定した技術。それは過去の絵画を模写して蓄積した技術の賜物です。目と手、鑑定士と画家。二つの側面から狩野派を紐解きます。

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江戸時代初期、狩野派に持ち込まれた中国の水墨画

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狩野派の元には数多くの鑑定の依頼がありました。

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そのほとんどの作品を狩野派の画家たちは模写していました。

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そのことが狩野派に美術家としての観察力と技術力をもたらしたと言われています。

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当時狩野派の鑑定は絶大なる権威を誇っていました。

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狩野探幽は四季の情景を描いたこの室町時代の屏風を土佐光信の作品と鑑定しました。

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作品の中に大胆に書き込まれた鑑定結果。現在から見るとその根拠が不十分。当時の狩野派の権威を偲ばせます。

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その屏風絵に習って生まれた作品があります。

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探幽の甥の常信が描いた桜や紅葉などが美しい水辺の風景。鑑定した絵を模写し自らの作品に生かす。それを弟子たちが学ぶ。狩野派の伝統はこうして受け継がれていったのです。

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狩野派の便利は個性が感じられません。彼らの価値観というのはやはり過去の作品をより忠実に移すことに重きが置かれていたので、

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そっくりそのままに写すということに大きな価値観が置かれていました。

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これは現在の価値観からするととても違和感がある価値観ではありますけれども、それこそが江戸時代を通じて大切にされた狩野派の価値観であり

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ひいては江戸時代の絵画の価値観であったということを改めてご紹介したいなと思っております」

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この展覧会は東京丸の内出光美術館で3月1日まで。

 

会場:出光美術館

会期:2020年2月11日~3月1日 新型コロナ対策のため会期縮小

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日曜美術館「琉球の風を纏(まと)う 喜如嘉の芭蕉布」

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涼やかな風纏う布・芭蕉布。より薄く、より軽く、沖縄県喜如嘉の女たちは、蒸し暑い琉球の風土の中で“トンボの羽”ような布を求めてきた。

500年の伝統の秘密を追う。

涼やかな風纏(まと)う布・芭蕉布沖縄県喜如嘉の女たちが守ってきた布作りの技は、蒸し暑い琉球の風土の中で生まれてきた。

3年かけて糸芭蕉を育て、繊維を取り出し、一本の糸22000回繋ぐことで一枚の布が出来上がる。

より薄く、より軽く、喜如嘉の女たちは、まるで“トンボの羽”ような布を追い求めてきた。

沖縄戦で途絶えた技を、戦争で夫を亡くした女たちが復活させた悲劇の歴史。

500年を越える伝統の技の秘密を追う

【司会】小野正嗣,柴田祐規子

 

日経おとなのOFF 2020年 絶対に見逃せない美術展(日経トレンディ2020年1月号増刊)
 

 

芸術新潮 2019年 12 月号 特別付録:芸新手帳2020

芸術新潮 2019年 12 月号 特別付録:芸新手帳2020

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/11/25
  • メディア: 雑誌
 

日曜美術館琉球の風を纏(まと)う 喜如嘉の芭蕉布

放送日

2020年3月1日

プロローグ

沖縄県大宜味村喜如嘉。涼やかに風まとう布芭蕉布

500年を超える伝統の技は熱く湿った沖縄の風土から生まれました。

原料は南国に育つバナナの一種糸芭蕉

一枚の着物を作るのにおよそ200本の糸芭蕉が必要です。

それは喜如嘉の女たちが受け継いできた布。

手作業で繊維を次々と結び一本の糸を作ります。

この作業を2万2000回繰り返してやっと着物一枚文の糸が出来上がります。

トンボの羽のように、より薄く。より軽く。

女たちの技と思いが織り込まれています。

冬でも汗ばむような南国の気候の中で芭蕉布が風を通し、軽やかに肌を撫でます。

芭蕉布

小野さんの芭蕉布との出会いは喜如嘉の芭蕉布織物工房から始まりました。

平さんがまず見せてくれたのは工房で作られている芭蕉布の反物。

幾何学模様みたいですけど。はた結びの跡なんですよ」

光に透かすと見える小さな点。糸の結び目です。

芭蕉布は細く短い糸一本一本繋いでできるものなのです。

こちらは上質な細い糸で織られた着物。

「見ていただくと 糸が細い」

より薄くより軽く。女たちが目指すのは透明なトンボの羽のような世界です。

極細の糸で織られた芭蕉布ほど、はた結びの結び目は小さく見えにくくなります。

昭和の初めに極上の芭蕉布で作られた喜如嘉の着物。

この地方の裕福な人の普段着でした。目に見えぬほど小さな機結び。

指先にかすかに感じられるだけです。

「こんにちは」

前田正子さん87歳。芭蕉布の糸を繋ぐ名人です。

ウーミは芭蕉布の糸作りの中で最も時間と忍耐力を求められる工程です。

水に浸した糸芭蕉の繊維を裂いて糸を何本も作り、同じ太さ同士をつないでいきます。

 

取材先など

 

放送記録

av98ingram.wpblog.jp

 

書籍

 

芭蕉布物語

芭蕉布物語

  • 作者:柳 宗悦
  • 出版社/メーカー: 榕樹書林
  • 発売日: 2016/09/01
  • メディア: 単行本
 
清ら布―沖縄の風を織る光を染める

清ら布―沖縄の風を織る光を染める

 
平良敏子の芭蕉布

平良敏子の芭蕉布

 

 

 

芸術新潮 2020年 01月号 東京のミュージアム100

芸術新潮 2020年 01月号 東京のミュージアム100

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/12/25
  • メディア: 雑誌
 

 

展覧会

 

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新美の巨人たち 藤牧義夫『隅田川絵巻』

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昭和の初めに彗星の如く現れた天才版画家・藤牧義夫

隅田川に架かる橋と風景を『隅田川絵巻』として描き続けました。

全長50mに及ぶ超大作です。

幼き頃から才能を発揮した藤牧ですが、24歳の時に謎の失踪…。

一体どこへ消えたのか?

残された傑作をよく見ると、あるはずの影が一切ない…線だけで描かれた、いわば“白い世界”なのです。

その理由とは?

今回は要潤さんが絵巻と共に隅田川へ。藤牧が求めていた世界に迫ります。

 

 


藤牧義夫 絵巻隅田川・三囲の巻


藤牧義夫 絵巻隅田川・白鬚の巻

日経おとなのOFF 2020年 絶対に見逃せない美術展(日経トレンディ2020年1月号増刊)
 

美の巨人たち 藤牧義夫隅田川絵巻』

放送:2020年1月12日

プロローグ

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あなたはどこへ消えてしまったのか。

昔、隅田川のほとりで橋と風景を見つめ描いていた若者。

誰もその後の彼の消息を知らない。日本には美しい橋があります。

錦の五連の帯が川を超えて。人と人とを結び。その姿月へ渡るが如しと称えられた橋。舞い降りる鶴の姿で湖を渡っていく。

川を超え海を越え時代を超えて。

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隅田川は橋の名所です。

現在27の橋がかけられています。

あの日の若者は隅田川で一体どんな橋を描いたのでしょう。

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南千住の白鬚橋は墨のひと色で。

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ブルーが映える清洲橋も墨の一色で。

 

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堂々たる永代橋もひたすら黒い輪郭線で。

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描いたのは藤牧義夫。24歳。

昭和の初めに彗星の如く現れた天才版画家です。

恐ろしいほど長い長い絵巻です。

緻密に繊細に描かれた風景が流れていきます。

そして恐ろしいほど謎に満ちているのです。

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本日は要潤さんが藤牧義夫隅田川絵巻をたどります。

その果てに見たものは。この絵巻最大の謎。

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「影がない。ということは」なぜ影がないのでしょう。

隅田川の風景

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牧義夫の版画は見る人の心を揺さぶりました。

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大都会東京の喧噪の夜を彫り上げ、泣き叫ぶような夕焼けを鮮烈に描いたのです。

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明治44年群馬県の館林で生まれた藤牧は恐るべき早熟の天才です。

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小学校高等科でこの大黒天を彫り上げて大人たちを驚かせました。

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今日の作品は館林の資料館に収められています。

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資料館では展示しきれないため特別にホールをお借りしました。

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今日の作品藤牧義夫隅田川絵巻。

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縦27.5センチ長さ14メートル40センチ。

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和紙に墨で描かれていますが水墨画ではありません。

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ぼかしもない。滲みもない。

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澄み切った線で隅田川とその風景を克明に描いているのです。

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動くものは川のさざ波。

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まるで白昼夢のように静かなのです。

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音のない世界を旅するように。隅田川の風景が続いていきます。

細い線で緻密に。

一切のものを記録するように。

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この絵巻を発見し、世に知らしめた大谷芳久さんは初めて目にした時のことを。

「滅相もないという感じ。私にはもう最初見たとき、なんのことなのか。何をしようとしていたのか。そのときはまったくわかりませんでした」

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圧巻は清洲橋の描写です。

「線が長い」

伸びやかな線で描かれた押し寄せる吊り橋の魅力。

その力強さを誇る打たれた鉄のリベット。

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最後の場面は佃島越中島をつなぐ相生橋の上からの風景です。

「 パノラマカメラで撮ったみたいな感じになってますよね」

このパノラマのような風景にはいくつもの謎があるのです。

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見えるはずがないものを描いていること。

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そこにないものを描いていること。

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あるはずのものを描いていないこと。

そして作者はこの後消息不明。

 

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藤巻が隅田川と橋の風景を描いた絵巻は3巻あります。

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その長さは全てを繋げると50メートルあまり。

ではこの不思議な絵巻をたどってみましょうか。

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まずは白髭橋のたもとに要さんが立ってみると。

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藤巻の絵は白鬚橋の東側の袂からの風景が描かれています。

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対岸にはガスタンクがあり、手前の岸には大きな鉄工所があります。

現代の風景は。

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「全然違います。丸いのはないですね」

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当時のガスタンクは球体ではなく円筒型でした。

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問題はこちら側の鉄工所の見え方です。

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絵巻ではひと目では見ることができない鉄工所を描いているのです。

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なぜ見えるはずのないもの描いたのか。

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タンクも鉄工所も同時に見せるために藤巻は人間の視覚では捉えきれない180°を超える風景をあえて描き、一つの場面として絵巻の中に収めていたのです。

続いて場面は変わります。

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墨堤通り方面の道から描いているのですが少し裏寂しい家並みが続きます。

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その同じ道を要さんが歩きます。

「ちょうどこの通りですね。すっかり変わってますよね」

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その先に描かれているのが白髭神社

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隅田川七福神の一つとして親しまれてきたお社です。

ところが藤巻はちょっと変わった視点からこの神社を描いていました。

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画家の視点はここ。

「こういうことですよね一番手前にこれがつながって」

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賽銭箱の後ろから見た風景を描いているのです。

「不思議ですよね。こっちの方に入って書いたんですかね。中まで入って街の風景を書きたかったのかな」

藤巻は賽銭箱を通して神社をこのアングルから見せたかったのかもしれません。

理由は、白髭神社の隣に描かれている子育て地蔵にあります。

では歩きましょう。

「すぐ近くに描いているみたいな感じですね」

歩くこと3分。

実はこの絵にはないはずのものが描かれているのです。

白髭神社と子育て地蔵の間に立つ太い木です。

この大木を描くことによってどんな効果があるのか。

本当は白髭神社と子育て地蔵はこれだけ離れています。

そのため大木を置くことによって実際の距離を縮めて視点を大胆に移動させているのです。

つまり藤巻はひとつの場面の中で見たいものを意図的に編集しつなげているのです。

「映画の人が撮る。アップして引いてっていう。そういう映画的手法を彼は採っていて、版画で描ききれないもの。版画というのはたとえればカメラで一瞬のシャッター。光が当たって木々に当たってキラキラしているそれを白黒で刷って版画に表される。一瞬の出来事。 絵巻はそうではない。どこかの時点で長回しを映画のような。まさにフィルムでずっとその状況を撮っている。そしてある部分に近づいていったり離れていただからそれが彼の絵巻じゃないかと思いました」

藤巻は映画的な手法で隅田川の風景を自在に編集しながら描いていたのです。

歩き疲れた要さんは長命寺の桜餅のお店へ。

隅田川絵巻にも長命寺が描かれていました。

創業300年という江戸から続く老舗の桜餅です。

隅田川絵巻をじっと見つめていると気が付くことがあります。

あるはずのものがない。

描かれるべきものが一切描かれていないのです。

そう影がない。

 

牧義夫が故郷・館林から上京したのは昭和2年16歳の時です。

東武鉄道の線路は東京の浅草に向かっていました。

車窓に映るのは下町の風景そして隅田川。藤牧義夫の版木です。

上京した藤巻は図案の仕事などをしながら独学で版画家の道を目指しました。

22歳の時には帝展に入選し将来を期待された若き版画家として認められたのです。

やがて圧倒的な表現を獲得し、強烈な輝きを放っていきます。

群衆の獰猛なエネルギーをとらえた浅草の夜。

版画史に残る傑作《赤陽》は上野の百貨店の屋上から見つめた東京の夕焼け。

その寂寥。

「強烈な光が、音響が、色彩が間断なく迫るその中に、不安な気持ちで生存する事実。それを唄いつつ自分は強く行く」

藤牧が版画制作の一方でコツコツと描いていたものが隅田川絵巻でした。

音のない世界を旅するように風景が続いていきます。

不思議な浮遊感を漂わせながら風景は流れてきます。

静かな透き通るような眼差しで、ところが。

「影がない」そう。

隅田川絵巻は影ひとつない世界。

全てのものが白日のもとに描かれているのです。なぜか。

「存在の変わらなさというか、存在物を輪郭線によって描く。これは変わらないわけです。変わるのは時間と光線ですよね。そこで光線を排除したんじゃないか」

藤巻は光や影で変化しない姿だけを端正な輪郭線で描いたのです。

東京という街を深く静かに記録するために。

要さんは吾妻橋を渡ります。

ちょっと視点を変えようと思っていたからです。

川の上から隅田川絵巻の風景をたどってみましょう。

新大橋の手前で浜町公園が見えてきました。

青い清洲橋は圧巻の遠近法で描きました。

アーチ状の永代橋は自動車のラッシュアワー

そして相生橋。長い長い絵巻の終わり。

その橋の上からの眺めです。藤牧義夫はこんな言葉を残しています。

「白く光る川水は立派に時代に生きて流れていく。鉄橋が夕空に向かって言った。俺は俺で頑張る。君は素敵な大きな円体のようだが、君でも僕の存在を無視しやせんだろうねと。大空が鉄橋に応えて一言叫んだ。そうだとも」

昭和10年9月2日の夜のこと。

牧義夫は描き終えた隅田川絵巻を姉の家に預け、当時暮らしていた浅草の街から忽然と消えてしまったのです。

24歳の若者でした。

以来全くの消息不明。

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藤牧義夫―生誕100年

藤牧義夫―生誕100年

  • 発売日: 2011/07/01
  • メディア: 単行本
 
君は隅田川に消えたのか -藤牧義夫と版画の虚実

君は隅田川に消えたのか -藤牧義夫と版画の虚実

  • 作者:駒村 吉重
  • 発売日: 2011/05/13
  • メディア: 単行本
 
赤陽物語―私説藤牧義夫論

赤陽物語―私説藤牧義夫論

  • 作者:牧野 将
  • 発売日: 2004/01/01
  • メディア: 単行本
 

 

 

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「開館記念展 明治神宮の鎮座」【アートシーン】

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開館記念展
明治神宮の鎮座

今年鎮座100年祭を迎える明治神宮

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新たに建てられたミュージアムで今明治神宮明治天皇ゆかりの品々が展示されています。

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横山大観の描いた明治神宮1920年に創建されました。霧の中に浮かぶ鳥居や本殿が墨一色で幽玄に描かれています。

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明治天皇が使ったイギリス製の馬車。車体上部には大きく羽を広げる鳳凰の姿が。豪華な装飾からは近代化に向かった明治時代の力強い息吹を感じます。

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萩やウサギの蒔絵が施された器。蓋は黒漆。器はなんと果実のザボンです。天皇自ら小刀で果肉をくり抜き作らせたといわれています。

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明治神宮創建時に本殿内陣に収められおよそ100年ぶりに公開される屏風。描いたのは日本画家下村観山です。画題は四季の花鳥。

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鮮やかな色使いの花が大胆に配されています。

そして去年8月観山の屏風に代わり手塚雄二の屏風が収められました。

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こちらはおよそ1/4のサイズの下図。すでに屏風は奉納されたため展覧会では2種類の下図が公開されています。

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これは収められた屏風と同サイズの下図。明治神宮の明の字から着想を得て右隻には太陽が、左隻には月が描かれています。

東京渋谷区の明治神宮ミュー時あるで3月29日まで。

 

会場:明治神宮ミュージアム

会期:2019年10月26日~3月29日

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