「村上春樹がつくる物語の基本構造の一つは、ある危機的状況に立ち至った主人公が、自子の中に眠っている潜在的なポテンシャルを開発し、一気に自分の殻を破ってブレイクスルーを遂げ、それによって生き残り、自分の周囲のささやかな世界を守り抜くというものです。」内田樹は評論集「もういちど村上春樹にご用心」(2010年:文藝春秋)に書いています。
成長する人間の主観から見ると、成長のプロセスというものは、一瞬一瞬未知の領域にまるごと投じられ、散乱する謎めいた断片をつなぎ合わせて自分を含む文脈の意味を言い当てていくという、たいへんスリリングなものなのです。
自分がわかった気になった瞬間成長は止まるのでしょう。