説得力のある理屈を持つ相手と対峙する時、余韻の残るドラマが生まれます。その好例が「僕だけがいない街」10話だと思います。急展開を迎えるシリーズの核心といえる回は、番組冒頭にさりげなく埋め込まれた言葉が主題となっています。このキーワードが後半の伏線となり、物語全体のテーマにつながっていきます。タイトルの「歓喜」は誰もが心の奥底に持つ欲望ともとれる暗示的な言葉です。
学校は今日で卒業だけれど、みんなまだまだ足りないことだらけだ。それはこの僕も同じだ。だけどその足りない何かを埋めていくのが人生なのだと僕は考える。
罪悪感を抱いたりする必要はない。全校も悪行も本質は同じ。人が自らの欠陥を補うための行いに過ぎない。
いちばん幸せな時間ってどんどん更新されていくものだと思わないか。僕はね今日それが更新されたよ。心の中の足りない何かを埋められたときこそが最高の瞬間だ。捜し物を見つけたとき。そしてそれを手に入れたとき。困難であればあるほど乗り切ったときの幸せの度合いは大きいものだ。
脚本:岸本 卓
![]() 僕だけがいない街 1-7巻セット [ 三部けい ] |