北海道立近代美術館は、エコール・ド・パリの画家たち、北海道ゆかりの画家、アール・ヌーヴォーのガラス工芸品を基本とした収蔵品で知られる美術館です。
北の白亜の美術館で「愛」の力を再確認する
「白いリボンの少女」ジュール・パスキン
もやがかかったような、霧の中にいるような、何とも優しい感じの絵です。パスキンは自分の心の奥にとどまった幼女の動きを一瞬にして描きとどめたのでしょう。
「放蕩息子」ジュール・パスキン
この作品のモチーフとなっている「ルカ福音書」の放蕩息子は、悔い改めて父の元に戻りましたが、パスキンは母の葬儀に一度だけ故郷のブルガリアに帰っただけでした。1920年代のパリと、17歳で家を出たパスキンの姿が投影されています。
「自画像・17歳」エルミーヌ・ダヴィッド
パスキンの妻だったエルミーノ・ダヴィット(1886~1970)の作品です。二人は画家同士という感覚で結びついていたようです。パスキンはエルミーノと結婚していながら、ルーシー・クローグという女性に心を動かされ、奇妙な三角関係を送り、1930年パスキンの自殺という事件で幕を下ろします。
「婦人像」マリー・ローランサン
ドイツ人の画家と結婚し敵国人の妻となったローランサンが亡命中に描いた作品です。淡いバラ色を基調とする彼女の作風とは違った世界です。
退屈な女より もっと哀れなのは 悲しい女です。
悲しい女より もっと哀れなのは 不幸な女です。
不幸な女より もっと哀れなのは 病気の女です。
病気の女より もっと哀れなのは 捨てられた女です。
捨てられた女より もっと哀れなのは よるべない女です。
よるべない女より もっと哀れなのは 追われた女です。
追われた女より もっと哀れなのは 死んだ女です。
死んだ女より もっと哀れなのは 忘れられた女です。
「嵐の中の母子像」本郷新
札幌出身の彫刻家。母の愛を感じます。
愛に振り回されて、自ら命を捨てたパスキンの愛。暗い時代に翻弄されたローランサンの愛。自然に包まれた北の美術館はさまざまな愛の形を見せてくれます。
高橋洋子。女優
放送:1990年5月27日