東京の下町を舞台に孤独な少年の成長を描くのが「三月のライオン」
アニメ版が10月8日スタートします。
両親を交通事故で亡くし、心の傷を抱えた主人公・桐山零。父の友人である棋士の家に引き取られ、プロ棋士をめざすが、家族の軋轢や学校での孤立など様々な人間関係に悩むことになります。
泣いても仕方ないから
あきらめて
悲しいから考えないようにして
頭から追い出して
追い出して 追い出して…
━━でも……
本当にそれで よかったんだろうか…
NHKのアニメはETVで放送されることが多く、総合テレビでの放送はしばらくぶりです。おそらく原作の持つ重いテーマを幅広い世代に向けて発信していこうというのが編成の狙いだと思いますが、(かなり遅いけど)正しい選択だと思います。
同局では、定時番組として「将棋の時間」や、タイトル戦の生中継なども手がけていることから、アニメ化にあたっては主催団体やプロ棋士の応援もうけたものと思われます。奥の深い将棋の世界の知識や、重厚な人間ドラマを味わえる楽しみが増えそうです。
本作のもう一つの楽しみとなるのが、東京の再発見です。舞台は水辺のある下町。おそらく佃島あたりが舞台です。放送に先立っての番宣(9月18日放送)では、吹き替えをを担当する声優さんたちが下町探訪をしていました。
主人公が心を通わせる川本家の三姉妹。
川本ひなた役の花澤香菜さん(画面中央)たちが訪れたのは創業133年になる和菓子屋。川本家のモデルとなった店舗です。
川本あかり役、茅野愛衣さん
川本モモ役、久野美咲さん
そして、この作品の最大の魅力はなんといっても、主人公の心の支えとなる川本家三姉妹との交流でしょう。三姉妹もまた、業ともいえる心の闇を抱えていることが次第に明らかになります。
「いつでもおいで」
って言ってくれたけど ホントかな…
なんだか「おいで」と言ってもらえた場所ができただけで……
そのコトバだけで うれしくておなかがいっぱいで
もう 充分な気がした
「いつでもおいでね、待ってるから」どこにでもあるようでいて、実は今の時代にはなかなか得がたくなった関係性です。読者の心を掴んで離さないのは、弱者へのまなざしがきちんと注がれているからなのかもしれません。
様々な人々に関わることで、少しずつ心境に変化が生じてゆく主人公の成長こそが、たぶん編成が伝えたかったアニメの見所の一つだと思います*1。
なんか 不思議だ
どうしてぼくは 知り合ったばかりのひとの家で
こんな普通に眠ろうとしているんだろう?
ここにいると どうしてこんなに落ちつくんだろう
どうして あんな懐かしい夢を見たんだろう
どうして……
━━ああ
そっか そゆことか……
この古い家が
時間と みんなと 全部を
そして 僕の事まで そっと包んで
まどろんでいるような気がした
━━そうして僕は眠りにおちた
いったい何年ぶりかわからないくらい
深くてやわらかな眠りだった………
原作 - 羽海野チカ
監督 - 新房昭之
キャラクターデザイン - 杉山延寛
美術設定 - 名倉靖博
美術監督 - 田村せいき
音響監督 - 亀山俊樹
音楽 - 橋本由香利
アニメーション制作 - シャフト
製作 - 「3月のライオン」アニメ製作委員会
![]() 3月のライオン 10 ジェッツコミックス / 羽海野チカ ウミノチカ 【コミック】
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*1:原作コミックの見所の一つは背景画です。羽海野さんとスタッフが撮影した2万枚近くの写真をもとに描かれていてリアリティを支えています