最も栄えある日本工芸会総裁賞をうけたのは、丸山浩明さんの飾り箱です。楓の表面に見えるのは泡のような不思議な木目。
この作品は全ての面を曲面同士でつなぐ常識破りの技に挑戦しています。
丸山さんの工房を長野県高山村に訪ねました。
丸山さんは20年以上木の家具を作っています。
大量の木材はすべてある理由で丸山さんのお気に入りなのだそうです。
ちょっと面白い木目があると捨てられず、いつか何かに使えると取ってあるのだそうです。
長野県出身の丸山さんは大学卒業後、東京でサラリーマンをしていました。しかし、木にかかわる仕事がしたいと家具作りの世界に飛び込みました。丸山さんが大切にしているのは身体に負担を掛けないなめらかな形の家具作りです。
「体に平らなところってないですから、フィットさせようとすると曲線になるのが必然なのです」体に寄り添う理想の曲線を探る日々。しかし、どこかマンネリに陥っているのではないかと、7年前に初めて出品しました。
玉杢(たまもく)という木目は表面がアワのような模様に見えます。この木目を使って水の流れを表現したいと去年出品した飾り箱です。
ところが納得できません。木目を生かすには曲線しかないと考えました。なめらかな曲線を出すためには楓の木の板をゆるやかに曲げなくてはなりません。しかし、楓は反ったりねじれたりしやすく曲面を作ろうとすると形が安定しません。そこで丸山さんは狂いの少ない山桜の板を間に挟むことにしました。
重ねた板を型にはめて曲げたまま安定します。しかし、それでも木は元に戻ろうと反り返ります。この作業を何回も繰り返してめざす曲面に一週間掛けて近づけてゆきました。
「木の性質にあわせて、あとは人間の邦で修正して組み立てていきます」と丸山さんは語ります。
さらに難しいのは曲面と曲面をつなぐことです。曲面同士を釘も使わずにしっかりあわさなければなりません。
丸山さんは曲面に木と木がつながる「ほぞ」を彫り組み立てることにしました。
水平の木材にほぞを彫るのではなく、曲がった面通しを正確につなぐように彫っていかなくてはなりません。
そのため丸山さんは曲面を固定する道具もつくります。
仕事の仕方も自分で考えるのが丸山さん流なのです。