風景は美しさや残酷さなどの二面性を漂わせる。
「まっぷたつの風景」は、陸前高田市出身の写真家・畠山直哉の初期作から近作までを紹介する個展です。
鉱山現場の爆破。風景が一瞬にして消失していく姿です。
発破現場にカメラを近距離で設置し、爆薬により岩が飛び散る様をオートマチックな仕組みで連写記録しました。
風景はただそこにあるのではなく、人の表現が介在することで新しい姿を現すと言います。
畠山は津波で母と実家を失いました。以来、変わりゆく故郷の風景を定点的に見つめた「陸前高田」シリーズの制作を続けてきました。
展覧会場には陸前高田の様々な場所を撮影してきた5年半分のフィルムから、約4,400カットを密着プリントしたコンタクトシートを含む約50点が並べられています。
余白部分の、「以前撮影に使っていた丘が消えてる」「矢作橋 もう、何が起こったのか思い出せない」などのメモ書きが生々しい。
作品の多くはクローズアップはほぼ使われていません。淡々と捉えられた災直後の廃墟のような風景が、復興作業が続くにつれ大きく変えられていく様子がうかがえます。
震災以降、ふるさとにカメラを向けた畠山は新聞記者の取材に、「わかりやすい言葉では解決できないようなことを、やっと考えられる時期になったのではないかと思う」と語りました。
現実に目をこらし、未来をじっくりと考える。変貌するふるさとの風景は二面性をはらみながら未来への気配を思わせます。