万葉の故郷、奈良県桜井市。急な山道を登ること40分の音羽山観音寺に、愉快な尼さんたちが暮らしている。間もなく梅雨を迎える6月、お寺は“梅仕事”で大忙し!みずみずしい青梅で梅酒や梅みそをつけたり、甘露煮を作ったり…。丁寧に仕込んだら、じんわりじっくり、あとは時間がおいしくしてくれる。秘蔵の梅干で“梅肉”や“いり酒”、天ぷらまで作っちゃう!赤、緑、黄…目にも鮮やかな梅料理の数々で、お客様をおもてなし。
【出演】音羽山観音寺 住職…後藤密榮,副住職…佐々木慈瞳,【声】柄本佑
やまと尼寺 精進日記「水無月(みなづき) 雨ふる前に 梅のお仕事」
放送:2017年6月25日
放送内容
緑が濃くなってきた奈良・音羽山観音寺。木立の中で後藤住職に出会いました。
後藤住職の足元にあるのは大量の梅の実。
山の麓に住む堂上潤子さんからの贈り物です。この季節の作業「梅仕事」が待っています。
思い荷物を運び上げるとき、役に立つのが特設のモノレールですこれに乗ればお寺まで。急勾配の坂道もラクラクです。
歩くと40分かかる山道もモノレールに乗ればあっというまに到着。
番犬のオサムがお出迎えです。
二人は夏のお土産用のうちわづくりの真っ最中。
手書きのイラストが来訪された方たちに大人気。本格的な夏が来る前の風物詩です。
いただいた梅で境内は芳醇な香りに包まれます。「こんなにいい匂いなのにすぐには食べられないのよね」加工のため水で洗って汚れを落とします。
梅の実の表面が水をはじいて見た目はプルンプルンと宝石のようです。梅を傷つけないように丁寧に洗います。きれいなのを見て楽しむのもこの季節ならでは。
梅の実は軸の部分から痛みやすいので、一つ一つ爪楊枝で掃除するのがコツです。
水分が残っていたらカビて、そこから破けるのでしっかり目で確認します。
熟した小梅は梅干しと梅ジュースに、大きな梅は梅酒や梅味噌、甘露煮になります。
作業が一段落したので休憩タイム。
出てきたのは紅白が見た目に涼しい"心太(ところてん)"?
今日のおやつは「牛乳いちごミルクゼリー心太風」・・・なんともめんどくさい。副住職三のアイデアです。
「なんかスパゲティみたい」「長く楽しめる」「おいしいね」
さあおやつも食べたし、梅仕事の再開です。「できるだけ青いほうがいい」甘露煮は若くて硬い梅がいいみたい。梅の色を見ながら細かく分けていきます。
赤みの強い実は梅酒。ホワイトリカーと氷砂糖を入れるだけ。
つくるからにはたっぷり楽しみたいと、のこったホワイトリカーを全部入れてしまいました。人間ができるのはここまで。あとは時間がじんわりじっくり美味しくしてくれます。
梅の実の表面に細かく穴を刺すのは、煮崩れしにくくするため。沸騰した時「破れないようにすることが難しい」といいます。
ちよっとの衝撃で皮が破けます。ガーゼを載せてその上から少しずつ砂糖をかけて染み込ませます。
梅が豊富なこの季節、梅づくしの献立をつくって来客をもてなすことにしました。
メモを見ながら必要な素材を考えます。
「ないしょの部屋をご案内しましょう」ご住職が案内してくれたのは寺の倉庫。
中は隙間なく置かれた瓶で埋め尽くされています。
20年前の平成9年と書かれたシール。食材が豊富なときに作り貯めた保存食の倉庫です。
ご住職、どんなものでも漬けちゃうんですね。「これはね、すごく良い梅もらったの。だからピンク。梅酒の出来具合はその年によってさまざま。見るのも楽しい」
「ちょびちょび飲んでも楽しい」こつこつつくり貯めた自慢の梅仕事。時間が経てばさらに美しく、こりゃあたまりません。
梅づくしの料理に欠かせないのが酸っぱい梅肉。去年漬けた南高梅を使います。
梅肉を刻み、さらに砂糖を加えてすり鉢ですりつぶします。
酒と味醂で梅干しを煮て「煎り酒」という調味料を作ります。
料理のさなか、ご住職たちは厨房を抜け出し境内を散策。いったいなにが始まるのでしょう。
たどり着いたのは自生している植物の枝先。若葉の部分を摘み取ります。
手に入れたのはマタタビ。別名夏梅とも言われるマタタビは生薬として古くから知られ、実は薬用酒などに使われる薬草の一つです。
「天ぷら粉をつけて調理します」
食材は買いに行くより取りに行くのが簡単なのです。
この日寺を訪れたのはアメリカ人のご夫妻。
奥さんは知り合いの娘さんということは、里帰り中のお客さんです。
全部野菜。「このあじはなかなか出会えない」とエリックさんはびっくり。肉を使わない献立はアメリカでは味わえない発見があります。
ライスコロッケにはこっそり梅肉が。梅だけでこんなにたくさんの色が生まれた献立です。
梅肉は百合根とあえて赤と白とのコントラストを楽しみます。
長芋には熟成の梅味噌をとろりと掛けました。
つやつや輝く緑の甘露煮。甘酸っぱさがたまりません。
小梅のエキスが滲み出た爽やかな梅ジュース。
酸いも甘いも楽しんで、ご住職の心づくしはしっかり伝わったようです。
お客さんが帰ったあと。ご住職は大きな葉を取りに行きました。
大雨が降ると停電することがあります。そんなとき役に立つのが保存食。朴の葉は保存食を包むのに便利な植物なのです。
朴葉寿司をつくって食べことにしました。
葉っぱが柔らかい時に作って食べる。保存食づくりにも山の知恵と恵みが詰まっています。
これまでの放送