横浜トリエンナーレは写真撮影が可能です(フラッシュ撮影、動画撮影は不可)。
日曜美術館「アートの旅 ヨコハマトリエンナーレ2017」
“美”にまつわる珠玉の物語をお届けする日曜美術館。今回は第6回目を迎えるヨコハマトリエンナーレを紹介。タレントの壇蜜さんと松尾貴史さんが巡ります!
今回で第6回目を迎える芸術祭・ヨコハマトリエンナーレ2017。この現代アートの祭典にやって来たのはタレントの壇蜜さんと松尾貴史さん。
壇蜜さんは横浜美術館の外壁を飾る巨大インスタレーションや東日本大震災後の風景を描いた作品などを鑑賞。一方、松尾さんはゴジラをモチーフにした迫力の作品や戦後の物質社会を独自の映像とサウンドで表現したインスタレーションを鑑賞。二人は独自の感性で現代アートに触れていく。
放送日
2017年9月3日
紹介作品
「Reframe 安全な運行」アイ・ウェイウェイ
メイン会場となる横浜美術館の外壁と柱に、救命ボートと難民が実際に使用した救命胴衣を用いて作り出した難民問題に関する大型インスタレーションです。
「善と悪の境界がひどく縮れている」ジョコ・アヴィアント
2,000本のインドネシアの竹を持ち込み、独自の手法で編み上げたダイナミックな新作です。
作者はインドネシア出身のジョコ・アヴィアント。
丈に切れ込みを入れて曲げ、それを編み込んでいきました。
作者のアビアントは、日本の注連縄(しめなわ)に着想を得たといいます。
「風景から歌|海のあるまち」瀬戸夏美
2011年3月11日。震災後の陸前高田市の風景。
そのに添えられたのは生きている人となくなった人との不思議な物語。
一人の女性が地面の下から歌が聞こえるのに気づきます。
地面を掘り、地下へ進んでいくと広い草原がありました。
そこで歌を歌っていた老人と出会います。
会った覚えのある老人でした。
女性は地上に戻り、老人が歌った歌は子どもたちに伝わります。
数年後街の姿は変わります。
しかし女性の掘った穴は、下の世界につながる階段として残り続けるのです。
作者の瀬尾夏美さん。
「私は震災の時、東京で絵を勉強する美大生だったのですけれど、なにがその場所で起きているのか、いろいろな報道はあるのですが、わからなくて、その場所に行って考えたいと思いました。2012年に陸前高田に引っ越して」
思い切って飛び込んだ被災地。葛藤もありました。
「私の持っている色彩感覚はカラフルだったりします。それをこの街で描いていていいのか最初の頃迷っていて。町の人にとって直近で悲しい記憶がある場所を派手な色で描くことがいいのかと思っていて、私は陸前高田の写真館で学校カメラマンとして勤めていたのですが、ある日店主の人が、青く見える風景を青く描くんじゃないって言ってくれたんです。悲しい風景だからと言って悲しいまま青い一色で描いてしまったらそれはその意味しかないけれど、風景をちゃんと見たらその土地にはかつてのものもちゃんと残っているし、未来もあるはずだから、色はちゃんと見えてくるはずだ」
今回のトリエンナーレのテーマは「接続と孤立」。瀬尾さんはどう考えるのでしょうか。
「陸前高田で起きたそれは個別の事象です。そこにいる人は個人ですが、そこの営みを一度抽象化するというか消化していく。そこで物語を編んでいくことで、高田の問題は高田の問題じゃなくって、多分もっと違う別の喪失の体験につながっていくと思うのです。抽象化して他の人の体に届ける。その人の中でまた別の問題とつながっていくというふうになったらいいなと思って」
「スペルミニ」マウリッオ・カテラン
「ミルクの湯船からみな顔だけだしているような所をタテにしたみたいな」
作品のタイトルは「スペルミニ」。作者カテランの造語で小さな精子を意味します。カテランの作品は少し離れた場所にもありました。
フックに掛けられた人間の奥にはあの小さな精子たち。
「フックは着床したということなのでしょうか?接続と孤立」
作者カテランは自分の存在を消してしまいたい衝動と、自分の考えや作品を増幅させたい野望の間にいるといいます。
「自死しているように見えなくもない。過去に対する嫌悪と未来に対する期待が同居しているということ。パラドキシカルなところは人間誰しもあります」
風間サチコ
風間サチコ*1は木版画を表現に用い、浮世絵からマンガに至る日本の民衆的なプリント文化の長い伝統を思わせる独自のスタイルで知られている。風間の作品はあるときはコミカルで遊び心に満ち、またあるときは繊細で美しいが、さらに深く立ち入っていくことで、風間のの作品には現代社会への真剣な省察と権力の変わらぬ本質への辛辣な批判が込められていることがわかる。Sachiko Kazama
「私小学校の時から虚弱体質で中高通じて三分の一しか学校に行ってなかったのです。たまに学校に行くと異物扱いされ馴染めない。黒魔術であいつらに仕返しできないかと妄想ばかり働いていた。黒というのが自分の心の色。これ以上影響されたくない色」
今回のトリエンナーレのために手掛けた大作。ガマに乗った盗賊地雷也が闘うのはビジネスやエコノミー。現代社会そのものです。ブラックなユーモアと強烈なエネルギー。
「私は端から見たら友だちがいなくて孤立しているかもしれないけれども、それに負けたくないという更に強い自分がいて。作品も自分が没頭するからこそできる。孤独だからこそできる仕事が世の中にあると信じているのです」
木下晋
照沼敦朗
小西紀行
「なんかすり減りました。現実に生きているとまずしない想像をたくさんしました。いつもと違う時間でしたから、忘れられないものを今日いっぱい見たから、忘れられない時間になって、何年か後にすなおに楽しかったと言えるんだと思います」壇蜜
柳幸典
目玉に映し出されたのはキノコ雲。水爆実験によって姿を現したゴジラをモチーフにした柳幸典の作品です。積まれたガレキは恐ろしい破壊力を物語っています。
宇治野宗輝
その空間に足を踏み入れると・・・突然映像が始まりました。
作者が経験してきたアメリカ文化について述べたものです。17分間の映像の後、
ミキサーやインパクトドライバーといった、アメリカが日本にもたらしたものたちが、まるで意思を持ったように動き出します。電化製品、調理器具、工作機械、自転車、車の部品、楽器などが連携して、音楽を演奏するインスタレーションです。
「自動車が発明されて150年。今が大きく変わる時なのにワイパーは変わっていない。これはとりこまないといけないと思ってやってみたら、いちばんワイパーは人間っぽい。雨の日すべての車の上でワイパーだけが踊っているのを見ていると奇妙だと思った」
「刺激的であるということ。均整が取れて綺麗にまとまっているのではなく、現代美術になればなるほどコンセプトとか衝動とかそういうものがいかに大切かということが、割合が強くなってきているという気がします。圧倒されるメッセージと見る人が勝手につくる文脈が強烈でした」松尾
放送記録
書籍