新しい暮らし方が生み出す新しい家のかたち。
住宅地の中に突然現れる灰色の建物。
群馬県前橋市に建つ「T HOUSE」です。建築家の藤本壮介さんが4人家族のための木造平屋の住宅として設計しました。
玄関はどちらでしょうか。
外観からは想像できない空間が広がります。
この家はいわば変形のワンルーム。そこに様々な角度で仕切りが入っています。
寝室などの部屋を仕切るのは一枚のベニヤの薄い壁だけ。
立つ位置によって見え方が違ってきます。
部屋のようで部屋でない。廊下のようで廊下でない空間です。
「共同生活している感じです。青春時代暮らしていた寮を思い出します」
板に挟まれた隙間に家族それぞれの居場所がある家です。
「家ってこれからどういうふうになっていくのだろうかとか、様々に考えたプロジェクトでした。施主さんのご家族がすごく仲が良さそうだということもあって、こういうご家族のための住宅とはどういう場所なのかというところから最初に家を考え始めたのです」
「僕自身も隅っこが好きだというのが昔からあってなんか落ち着く、部屋というよりは隅っこというのが個人の、自分のための空間の最小単位なのではないかという思いがどこかにあった。そこからもう一回、家の中の自分の居場所と家族とのつながりのバランスをつくっていくということで、隅っこがたくさん集まったような形になった。つながりつつ離れていて、でも家族の気配をいい意味で常に感じ取ることができてみんなで一緒に住んでいるという場所が作れればいいなと思いました」