第20回文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門 受賞作品一覧
大賞
君の名は。
千年に一度の彗星来訪という出来事を舞台に、少女と少年がお互いを知り、求めあう恋と奇跡の物語。世界の違う2人の隔たりとつながりから生まれる「距離」のドラマを、圧倒的な映像美とスケールで描き出している。作者による緻密なロケーション設定とそれを支える確かな風景描写に、世界観を持った音楽が加わることで、ファンタジックな物語をより強いリアリティとともに表現している。
優秀賞
Among the black waves
古代ケルトの伝説をもとにした短編アニメーション作品。セリフがまったくないにもかかわらず、墨絵のように筆致の際立った画面により、彼女の海への思いと悲しみが表現されている。
A Love Story
毛糸という暖かな手触りを感じさせる素材を使い、キャラクターの心情を深くかつ誠実に描いている。ストーリーがシンプルであるがゆえに、キャラクターの特徴的な目、背景、照明、音響、音楽を通して複雑な感情が語られ、まるで動く絵画のように見せている。また、7段のガラスの棚によるマルチプレーン撮影台を用いてそれぞれの段に素材を重ね、奥行きをつくって人形を撮影するなど、さまざまな実験的な手法を駆使することで、次々に移り変わるシーンを巧みに表現した。
父を探して
一切のセリフもテロップも用いず、簡略化されたキャラクター・デザインと、クレヨン・色鉛筆・切り絵・油絵具などさまざまな画材を使ったパッチワークのような美術が組み合わされた映像は、言語の壁を越えて普遍的な訴求力のある作品となっている。
文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門優秀賞に「父を探して」 | |モノよりヒト
映画『聲の形』
本格的な手話表現と現代の若者の内面を丁寧に描き、ひとりの少年が、少女や周囲の人たち、そして自分を受け入れていく物語が描かれている。
新人賞
Rebellious
1913年のメキシコを舞台として、「映画」そのものをテーマに「アーティストになる決意」を描いたストップモーション・アニメーション。
I Have Dreamed Of You So Much
「地平線」の叶わぬ愛を描いた短編アニメーション。鮮やかな色彩を用いた絵画のような映像世界と軽やかなナレーションがロマンティックな愛の物語を巧みに演出する一方で、シャープな筆致で細部までこだわった描写は、彼が彼女へ向ける実現することのない切ない心情を映しだしている。
ムーム
川村元気と益子悠紀による絵本『ムーム』(2014)をフル3DCGでアニメーション化した作品。ガラクタと持ち主との思い出、その喪失というテーマを扱う。緑豊かな自然を背景に愛らしいキャラクターたちの出会いと別れを、精緻な映像と静謐な音楽とで表現している。
人間が捨てたモノに宿る「思い出」が存在する不思議な世界が舞台となっており、湖のほとりに暮らす主人公のムームは、宇宙服を着た相棒ケネディと、ガラクタから思い出のかたまりを引っ張り出し、空に帰す仕事をしている。ある日、ムームはバレエシューズの中にいたルミンと出会う。はじめは悲しそうにしていたルミンは、ムーム、ケネディと過ごすうちに笑顔を見せるようになるが─。