カンディンスキーを中心とするドイツ表現主義とフランスのルオーを紹介する展覧会です。
20世紀の初め、ルオーが重視したパリのサロン・ドートンヌにカンディンスキーが出品を続け、カンディンスキー率いるミュンヘン新芸術家協会の展覧会にルオーが出品するという時期がありました。それぞれがフォーヴィスムとドイツ表現主義の拠点となった展覧会で、互いの運動への関心を深めていたこともうかがえます。また、ドイツ表現主義の画家たちとルオーが共有していた感覚を、彼らの作品の色彩やモティーフに見出すこともできます。やがてカンディンスキーは「内的必然性」に導かれて抽象絵画に至り、彼と交流を深めていたパウル・クレー(1879-1940)も独自の抽象世界を築きます。ルオーもまた、彼の内的必然性に従ってキリスト教の信仰に根差した独自の絵画を追求しました。
抽象絵画の創始者と言われるカンディンスキーが39歳で描いた作品。
舟で港についた商人たちを目当てに人々が集まっています。
遠くの人物は点描のように描いています。
しかしまだこの時期のカンディンスキーからは抽象画の片鱗は感じられません。
故郷ロシアの人々を具象画として描いています。
カンディンスキーは1866年ロシアのモスクワに生まれました。
40代に入って徐々に抽象画に傾倒して行きます。
ものの具体的な形は失われ、様々な色と形がぶつかりあっています。
カンディンスキーは抽象がを確立し、絵画表現の歴史に新たな一歩を記します。
様々な長方形に円や楕円が入り交じる幾何学模様。
賑やかで下記ある画面ですが、穏やかな中間色が落ち着いた雰囲気を醸し出しています。
一方ルオーは1871年にパリの下町で生まれます。
身の回りにある現実の世界。
娼婦や道化師など社会の底辺で生きる人々を描きます。
半裸の娼婦。ルオーは毎日を必死で生きる人々の怒りや悲しみと行った感情を絵画に表現しました。
人が裁かれる法定。
裁判官の部分だけが明るい赤で浮かび上がっています。
他の人々を覆う陰鬱なトーン。
社会の不条理に反発するルオーの激しい感情が込められています。
やがてルオーはキリスト教への信仰から、フランスを代表する宗教画家へなって行きます。
空は輝くような色彩で表現されています。
キリストらしき人物は通りすがりの母と子の手を引いています。
ルオーの集大成とも言える風景画の名品です。
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