「ハロー・ワールド展」
芸術は、いわば「危険早期発見装置」である。そのおかげでわれわれは、社会的、精神的危険の兆候をいち早く発見でき、余裕をもってそれに対処する準備をすることが出来るのである。
これは1960年代に鋭い先見性で、新しい技術がもたらす社会変革を予見したメディア批評家マーシャル・マクルーハンの言葉です。彼が活躍した時代から半世紀が過ぎた今、インターネットが社会に浸透し、人工知能などの新しい技術革新が進められています。「どんな技術も、次第に、まったく新しい人間環境を作り出していく」という同氏の言葉通り、テクノロジーは人類に全く新しい世界をもたらしてきました。こうした変革は、希望に満ちた新しい時代のドアとして期待される一方、さまざまな問題や混乱が危惧されています。
技術革新がもたらす時代の光と影について、アーティストはどのように反応しているのでしょうか。本展は、革新と混沌が交錯する現在、そして未来に対し、鋭い感性で応答する国内外のアーティスト8組の作品を通し、テクノロジーが作り出すこれからの社会について考える機会を創出します。
水戸芸術館|美術|ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて
【参加作家】
●デヴィッド・ブランディ
1976年イギリス(ロンドン)生まれ、イギリス(ブライトンとロンドン)在住。
作品制作を通じて、自らが影響を受けたメディアや文化の再検証を試みています。本展展示作は、高度に発達した社会が破滅していく映像が、インターネット上のデータをもとに瞬く間に作られる過程を見せる作品です。二つの映像の対比によって、メディアのあり方を暴露します。●小林健太
1992年神奈川県生まれ、同県在住。
日常の中にテクノロジーが浸透した「デジタル・ネイティヴ」世代の写真家として注目されています。本展では、テクノロジーと身体感覚の呼応やずれを主題とした写真作品で空間を構成します。●サイモン・デニー
1982年ニュージーランド(オークランド)生まれ、ドイツ(ベルリン)在住。
デジタルの世界における思想や価値のあり方を鋭く捉えた作品で知られています。本展では、世界的に広まりつつある仮想通貨のコアシステム「ブロックチェーン」をテーマにした作品を紹介。新しい貨幣システムの背景にある思想やその展望を、ボードゲームで表現した作品を展示します。●セシル・B・エヴァンス
1983年アメリカ合衆国(クリーブランド)生まれ、イギリス(ロンドン)/ドイツ(ベルリン)在住。
人工知能などによって、人間の感情がどのように変化していくかをテーマに創作活動を行っています。本展ではロボットとモニターが演じるパフォーマンス型インスタレーションを紹介します。
>上演スケジュールはこちら●エキソニモ(赤岩やえ・千房けん輔)
1996年結成、アメリカ合衆国(ニューヨーク)在住。
ユーモア溢れる切り口と斬新な視点で日本のインターネット・アートを 20 年に渡りけん引してきたアート・ユニット。2017 年に制作した《キス、または二台のモニタ》と、本展のための新作インスタレーションを発表します。●レイチェル・マクリーン
1987年イギリス(エディンバラ)生まれ、イギリス(グラスゴー)在住。
童話や自作のシナリオの登場人物すべてを自ら演じた、サイケデリックでシニカルな映像で知られています。本展では、SNS を取り巻く現代の欲望を鮮やかに描いた映像作品を展示します。●ヒト・シュタイエル
1966年ドイツ(ミュンヘン)生まれ、ドイツ(ベルリン)在住。
映像史やメディア論を背景に、インターネット以後の社会が抱く矛盾や混乱を問う作品を発表しています。本展では、テート(イギリス)にも収蔵されている作家代表作を展示します。●谷口暁彦
1983年埼玉県生まれ、同県在住。
現実と情報空間の行き来や差異をテーマに、多様な技法で作品を発表しています。本展で発表する、監視カメラを操作し撮影・合成した写真作品は、インターネット上に張り巡らされた監視網の存在に気づかせます。
2/10 水戸芸で開催されるハロー・ワールド展の宣伝美術を担当しました。話題のヒト・シュタイエルなども名を連ねてますが、やっぱり僕はexonemo先輩来る!と谷口くんのあの名作が楽しみです。皆さん是非、足を運んでください。 pic.twitter.com/iBIbpuZ0ks
— Ryoji Tanaka (@_tnk) 2018年2月8日