17世紀。農村での祭りの一場面。
子どもたちが行列を作って村を練り歩きます。
花嫁と花婿に扮した二人は神妙な表情。
からかっているのか、変な顔をする少女。
脇では用を足している子も。
こんな素朴な農民の姿をいきいきと描いた画家たちがいました。
16世紀から、フランドル(今のベルギー)を中心に活躍した
ブリューゲル一族の展覧会です。
これは一族の祖、ピーテル一世が描いた「最後の審判」。
地獄に落ちる人々。
怪物たち。
ユーモラスでありながら、迫真の表現力。
こうした版画が広まることで名声を得ました。
ブリューゲル家は宗教画だけでなく風俗画にも才能を発揮します。
凍った川の上で遊ぶ農民たち。
一見のどかな光景ですが、氷の上には穴が空いています。
岸辺には鳥を餌でおびき寄せる罠が。
人も鳥も死と隣り合わせで生きている。
そんな教訓が込められています。
次男のヤン一世は花の静物画で人気を博し、花のブリューゲルと呼ばれます。
17世紀、花は高価なものでした。
特にチューリップは投機の対象になるほどの貴重品。
貴族や豪商などの富裕層のステータスとして好まれました。
ヤン一世の孫・ファン・ケッセル一世。
大理石の上にコウモリや昆虫を描いています。
羽の透明感まで感じるられる写実には
当時貴族の間で流行していた科学や生物学への興味が反映されています。
「ブリューゲルというひとつのブランドが流行して、
他の画家たちも巻き込んで、
ブリューゲル様式というものがヨーロッパ中に知れ渡っていく
流行の最先端というか、これから何が流行っていくかというものを
うまく察知してそれを作品として出していく。そういったところがすごかったのだろうと思います」
16、17世紀のヨーロッパにおいてもっとも影響力を持った画家一族のひとつであったブリューゲル一族。一族の祖であるピーテル・ブリューゲル1世は、現実世界を冷静に見つめ、人間の日常生活を何の偏見もなく、ありのままに表現した革新的な画家でした。この観察眼は、子から孫、ひ孫へと受け継がれ、一族の絵画様式と伝統を築き上げていくことになります。
父の作品の忠実な模倣作(コピー)を手掛けた長男のピーテル2世。父の自然への関心を受け継いで発展させ、多くの傑作を残したヤン1世。そして、ヤン2世やアンブロシウス、アブラハムといったヤン1世の子孫たちが、一族の作風を受け継ぎ、「ブリューゲル」はひとつのブランドとして確立されていくのです。
本展は貴重なプライベート・コレクションの作品を中心とした約100点の作品により、ブリューゲル一族と、彼らと関わりのある16、17世紀フランドル絵画の全体像に迫ろうという挑戦的な展示になります。
会場:東京都美術館
会期:2018年1月23日~4月1日
【巡回】
4/24-7/16 豊田市美術館(愛知)
7/28-9/24 札幌芸術の森美術館(北海道)
10/8-12/16 広島県立美術館(広島)
2019/1/11-3/31 郡山市立美術館(福島)