サンダーソンアーカイブ
ウィリアム・モリスと英国の壁紙展
―美しい生活を求めて
蜜を吸っているのはカナブンでしょうか?
垣根に絡んだ花のデザインです。
こちらは小さなハコベとチューリップ。
今も使われ続けている壁紙です。
デザインしたのは19世紀、イギリスのウイリアム・モリス。
モダンデザインの父と呼ばれています。
モリスが活躍した時代。
イギリスで一般的に流行していた壁紙は強い色彩を用いたもの。
しかし、モリスは身近な自然の色合いを好んでいました。
イギリス西武のコッツウォルズ地方。
モリスの別荘が今も残されています。
落ち着いた色合いの室内です。
モリスが気に入っていた植物をモチーフにした壁紙。
アカンサスという植物の模様です。
実は30もの色を使っています。
微妙に異なる色を重ね、自然界の深みのある色彩に迫ったのです。
近代が失いかけていた自然への眼差しをモリスは大切にしていました。
「当時のイギリスでは産業革命でどんどん森林とか田園が開発されていってしまったんですけれど、モリスは古い建物も古い土地も大事に残すべきなんだという運動も起こしています。現代人はやっと地球環境が破壊されつつある時代にまで直面して身にしみて始めていると思うんですが、モリスはその時代から危機感を持って自然と人間の共存の大切さを理解して、それが作品にも反映している気がします。それがモリスの新しさなのではないかという気がします」
ウィリアム・モリス(1834-96)はデザイナー、詩人、思想家、工芸家などさまざまな顔を持ち、19世紀ヴィクトリア朝のイギリスでその豊かな才能を開花させました。産業革命により大量生産品があふれたこの時期、彼は時間をかけた丁寧な手仕事を愛し、自然の美を讃えた生き生きとしたデザインを生み出しました。
モリスは結婚を機に新居となるレッド・ハウスを建設したとき、自身の目指す快適な生活空間には家具や壁紙が欠かせないものだと気づき、木版による美しい壁紙を生み出します。壁面一杯に優雅に広がる草花は、100年以上経った今でも人々を魅了する居心地のよい空間を演出します。モリスはこれまでの、リアリズムに基づいた奥行のある壁紙空間から離れ、平面的な造形の中にいきいきと鳥や草花を表現し、装飾と自然の新しい関係を追求しました。
本展は、英国有数の壁紙会社サンダーソン社が所蔵する貴重な壁紙や版木など約130点を日本で初めて紹介し、19世紀に隆盛期を迎えた英国壁紙デザインの変遷をたどります
会場:群馬県立近代美術館
会期:2018年7月7日~8月26日