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美の巨人たち 髙橋賢悟「flower funeral(花葬)」超絶技巧シリーズ(4)

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今回は現代作品…髙橋賢悟『flower funeral(花葬)』。牛の頭蓋骨を花で象った作品で、アルミニウムを使った鋳造作品です。驚くべきは装飾に使われている菊や忘れな草の0.1mmという薄さ。小さなおしべまで再現する細かさ。明治の超絶技巧作品がきっかけで作り始めたという髙橋さんは、何と生花を型にして鋳造するんです。一体どうやって?
明治の鋳造を超えた、現代の超絶技巧の制作過程をつぶさに追います。

美の巨人たち 髙橋賢悟「flower funeral(花葬)」超絶技巧シリーズ(4)


放送:2018年9月1日

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現代の超絶技巧 アルミ製造「flower funeral(花葬)」

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アルミ鋳造の限界に挑んだ作品があります。

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驚くべきはその厚み。通常は厚さ3mmが限界とされているが、この作品の花びらの厚さは前代未聞の0.1mm。

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花の中の水滴のような小さな粒やおしべもあります。

細かい装飾も、もちろんあとから付けたものではない。

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鋳造作家・高橋賢悟作『flower funeral』。

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日本語に訳すと花葬

今日の作品はアルミニウムで作られた牛の頭蓋骨。

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骨の上には数種類の菊が添えられています。でも花はこれだけではありません。

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ちよっと近寄ってみましょう。表面の粒のように見えるもの。

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これもすべて花なのです。

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実は実物大の忘れな草をつなげて実物大の骨の形を作り上げています。

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その数およそ10万。この作品を作るのに1年もの歳月をかけました。

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頭蓋骨と花の作品はこれまで8作品作られてきました。

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鋳造作家・高橋賢悟さん(36)。

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高橋さんがやってきたのは花屋。

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花の張りを気にして選びます。

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購入した花は燃えて灰になるという。一体どういうことなのか。

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鋳物の街川口で150年近く続く永瀬留十郎工場。

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の人に、高橋賢悟の作品を見ていただくと・・・。

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産業用は厚みが5ミリ以上で、伝統工芸でも3ミリぐらいが普通だが、高橋さんの作品は0.1mm。その薄さに工場の人は驚いた。

 

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高難度!極薄アルミ製造とは?

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極薄アルミ鋳造は「現物鋳造」と呼ばれる、生きた花を型にする手法で作られています。

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購入した花を台に固定します。

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石膏で型を取り、

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電気炉で花を焼失させます。

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燃え尽きた花のあとに空洞ができます。

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そこにアルミニウムを流し込むのだが、そのままでは隙間に空気が溜まって全体に金属が行き渡りません。

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その技術を可能にしたのが真空加圧鋳造機。

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鋳型を真空状態にすることで、金属が先端まで行き渡る。

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アルミニウムが固まったら鋳型である石膏を水で溶かします。

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極薄アルミ鋳造は「花の状態」、「石膏の強度」、「灰の吸い出し」、「金属や鋳型の温度管理」など様々な条件をクリアする必要があります。

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アルミは軽く、鋳造の中で現物鋳造は一番難しいといいます。

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今回は6つの花を鋳造し、3つ成功。 

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現代の超絶技巧 アルミ製造「flower funeral(花葬)」

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高橋賢悟は2016年に初個展を開催した遅咲きの作家です。

鋳造を始めたのは、5浪して入学した東京藝術大学でのこと。

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鈴木長吉の作品「十二の鷹」を見たのがきっかけだった。

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高橋は生き物の作品を作り始めたが、突き詰めると超極薄に行き着いたという。自分のオリジナルの技法を編み出して先人に挑戦している。

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超緻密!10万個の花を紡ぐ

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高橋の作品で手間が掛かり大変なのが、無数の忘れな草

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1年という製作期間のほとんどが忘れな草のパーツに費やされたという。そこには緻密な超絶技巧があった。

 

ロストワックス法

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高橋の作品で忘れな草の部分は、指輪と同じ「ロストワックス法」という鋳造技術が使われているという。

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まず、忘れな草から現物鋳造でアルミニウムの忘れな草を作ります。

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それを元にゴムの鋳型を作り、大きさの違う4種類のワックスの忘れな草を作る。

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それを1つずつ丁寧に溶かした蝋で繋いでいく。

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アルミニウムで直接溶接しようとすると花が壊れる為、手間を掛けて作り上げる。

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牛の頭蓋骨は60センチ近くあるので10万個の花が必要になります。

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骨の形を作ったら湯道という管を付け、

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湯道を通して鋳型全体にアルミニウムを流し込む。

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しかしこれで完成ではないという。

 

きらめく水滴の秘密

f:id:tanazashi:20180902193209p:plain湯道をカットした部分はどうしても残ってしまう。

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そこを丸い球体にすることによって、水滴の様な粒として、作品の一部にするアイデアが生まれたという。

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高橋の作品「flower funeral」シリーズは全部で8つあり、その中でも人間の頭蓋骨の様に見える作品には深い意図が隠されていました。 

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髙橋賢悟さんが強い影響を受けた作家の一人鈴木長吉(1848~1919)です。

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明治時代に活躍した鋳造の工芸作家で、殖産興業の一環として日本の工芸品を輸出する目的で作られた「起立工商会社」の鋳造部監督を勤めました。

代表作の一つがヴィクトリア&アルバート博物館が所蔵する「孔雀大香炉」です。

蝋真土鋳造法というロストワックス法に近い技法で作られた作品で、高橋さんは作品を見て強い衝撃を受けました。

命への静謐な賛歌 髙橋賢悟さんの工芸の世界 | Girls Artalk

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展覧会

www.city.taito.lg.jp

 

髙橋賢悟 | 靖山画廊