春日権現験記絵
甦った鎌倉絵巻の名品
東京の中央に位置する皇居。
その一角に皇室ゆかりの美術品を一般公開する施設三の丸尚蔵館があります。
そこで今鑑賞できるのが、日本文化を代表する絵巻の名品です。
春日権現伝記絵。
今から700年以上前鎌倉時代末期に作られた全20巻からなる絵巻です。
豊かな色彩と細部に至る精緻な描写。
93の場面がひとつもかけることなく伝わった日本の美術史上極めて貴重な作品です。
13年間を費やして行われた保存修理がついに完成。
蘇った傑作を見ることができます。
春日権現験絵巻は藤原氏一門の左大臣が、春日明神の加護に対する感謝の念を込め奉納したもの。
春日明神が様々な姿で現れ、不思議な力を発揮して人々を守っていくという内容です。
この絵を書いたのは高階隆兼。
大和絵の第一任者でした。
「細部まですごく丁寧に書き込んでるというところが素晴らしいことだと思います。顔料の持ってる極彩色以外にも、中間色を交えて言葉書きには全然出てこない部分の描写をものすごく詳細に書いている。
それが今この春日の神に対するこの絵巻の内容ものすごく豊かにして絵空事ではない世界を描き切っているっていうところが素晴らしいことだと思います」
例えば背景となる木の枝にもこのこだわり。
神の使いとして登場する鹿は体毛まで細かく描き込んでいます。
こちらは鵜が飛んでいる柄の着物を着た男性。
柄のひとつを拡大すると違う色の顔料が重ならないよう使われているのがわかります。
極め付きは縁側の犬。
後ろ足で体をかく姿が生き生きと描かれていますが、それだけではありません。
なんと周りには蚤が跳ね回ってています。
700年前の情景が蘇ります。
鎌倉時代の絵師のこだわり。宮内庁三の丸尚蔵館で10月21日まで。
会期:2018年8月18日~10月21日