チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

日曜美術館「刀って美しい」

f:id:tanazashi:20181014233931p:plain



 

日曜美術館「刀って美しい」

今、じわじわとブーム到来の日本刀。刀のどこを見て、何を楽しめばよいか分からないという方、必見です!刀の「美しさ」鑑賞のポイントを、丁寧に紹介します。

美術の世界で最近話題の、刀剣ブーム。「かたち」、「地鉄(じがね)」、「刃文(はもん)」、3つのポイントに絞り、「元祖刀剣女子」佐野美術館館長・渡邉妙子さんの指南で、日本の名刀の美しさをひも解きます。展覧会場のケース越しに刀を見るときのコツもご紹介!手軽な金属である鉄が、刀剣になるとなぜ、金銀を上回る価値を持ち、大切にされてきたのか?あなたも刀をじっと見つめたくなります。

【ゲスト】佐野美術館館長…渡邉妙子,山崎怜奈,【司会】小野正嗣,高橋美鈴

放送日

2018年10月21日

f:id:tanazashi:20181027151016p:plain

秋雨の京都に長い行列。開館をまだかまだかと待ちかねるその行列の先。

f:id:tanazashi:20181027151057p:plain

お目当ては日本刀。177の名刀が勢揃いした展覧会。初日の入館者は4500人。

f:id:tanazashi:20181027151131p:plain

そのうちおよそ8割が女性でした。日本刀の魅力とは何なのでしょうか。今日はその秘密を紐解き、あなたをきっと刀の虜にします。

 

f:id:tanazashi:20181027151247p:plain

日本刀に注目が集まるのはゲームとかアニメーションがきっかけらしいのですが、刀剣女子という言葉も生まれています。

日本刀と言うと、大晦日に行く神楽です。神楽のトリの踊りが鬼の面をかぶった人が日本刀を持って天井に張り渡されたさらしを切る。綱切舞っていうのがあります。それを毎年身近に見てました。

f:id:tanazashi:20181027151525p:plain

スタジオゲストは渡邉妙子さんです。

「日本刀の魅力とは一つの完成した日本刀、名刀は見事です。手に持った時に霊感が走るぐらいの感動がありますね。素人の方であっても生まれて初めて刀を持った時っていうのはちょっと違いますね」

実際に刀に触れながら渡辺さんに鑑賞のポイント教えていただきました

 

f:id:tanazashi:20181027151630p:plain

渡邉さんが館長を務める静岡県三島市の佐野美術館。日本有数の刀剣コレクションを誇ります。中でもとっておきの一振りを見せてもらいました。

f:id:tanazashi:20181027151713p:plain

鎌倉中期に作られた刀鍛冶光忠の太刀です。白く冴えた光が大きな魅力。この一振りを味わい尽くす方法を教えていただきましょう。

f:id:tanazashi:20181027151758p:plain

刀は手に持って鑑賞するものですで。やはりマナーが必要ですね。例えばあの息を吹きかけないとか。

最初に見るのは何ですか

「まっすぐに立てますと曲線、全体の姿がよく見えてきます」

なるほど全体の姿ですね。

f:id:tanazashi:20181027151937p:plain

「曲線て不思議で、直線と違っていろんな感情がねその曲線の中に含み持つ。優しさとか強さとかねそういうものが曲線中に含まれてきます。この曲線は日本刀しかない直線でして、この曲線を鑑賞するってのが日本刀鑑賞する大事ですね」

次は刃文を鑑賞しましょう。

f:id:tanazashi:20181027152001p:plain

刃文とは刃先の白い部分が生み出すの模様のこと。

ひとつの光源にかざし反射光によって変化する表情を楽しみます。

f:id:tanazashi:20181027152115p:plain

「ちょっと角度をしますと光に当たった刃のところがキラキラと輝いてきますね。輝きが本当に豊かに現れてますね。桜の花が開花する前のつぼみが膨らんで今も咲きそうなあのふくよかな形でして、ずっと見ていたいですねこれね。幸せいっぱいですねこういうのを見てると」  

f:id:tanazashi:20181027152202p:plain

刃文は作り手の個性が最も現れる部分です。

渡辺さんも語ってくださったように、刃文が織りなす模様は自然の情景によく例えられます。

f:id:tanazashi:20181027152237p:plain

華やかな刃文。まるで花びらや蕾が連なっているよう。

f:id:tanazashi:20181027152259p:plain

大海原の、のたりのたりとした波を思わせます。

f:id:tanazashi:20181027152341p:plain

こちらは連なる山々でしょうか。ずっと伸びた直線が朝日を受けた水平線のようです。

f:id:tanazashi:20181027152357p:plain

「次は地金です。見る時はこうやって上から見ていくのがいいですね」

f:id:tanazashi:20181027152458p:plain

地金は刃紋の内部。焼きが入っていないため黒っぽく見えます。

「地金を見るのは難しいですが、ゆっくりとじっと瞳を凝らして見てると、地金の中にいろんな文様が湧き出るように見えてきますね。これがとても綺麗なあの澄んだ金です。地金の色が春の霞みたいに白いんですね。この太刀が出来た頃っていうの鎌倉時代ですから、おそらくろうそくなどで鑑賞していたと思うんです。でもそのろうそくのわずかな光でもこれをおそらく輝いてたと思うんですね。この黒いはずの鉄が月の光のように輝くですね。この美しい光みんなに鑑賞していただきたいですね」

f:id:tanazashi:20181027152553p:plain

日本刀ってどうしてもあの武器だっていうイメージがあるもんですから、そこを眺めてその美しさを鑑賞するっていうのがじぶんのなかにありませんでした。

鎌倉時代武家の時代。武器として作られてるわけですけど、その時代にこの刀の地肌が青く美しいとかねそういう鑑賞方法がすでにできていたですね。鉄でできていますから、触れば指紋から錆びてきます。ですから刀身には絶対素手で触ってはいけない。汚さないという気持ちが大切です。研ぎ澄ませれたところに祈りが込められています。人が汚れと思うような魑魅魍魎も研ぎ澄まされた光には寄り付かない。だから守刀になる。錆びたら守刀に鳴らない。姿を映して心を鏡にする」

f:id:tanazashi:20181027151016p:plain

刃文を生み出す匠の技

f:id:tanazashi:20181027152920p:plain

吉原義人さん。20年に一度伊勢神宮遷宮の際に収める刀をこれまで3度出かけました。

f:id:tanazashi:20181027153008p:plain

吉原さんの刀は華やかな刃紋が特徴です。

元から切っ先まで大小様々な刃文がリズムよく連なる様はまるで音楽のようだと評されます。

f:id:tanazashi:20181027153058p:plain

刃文の輝きはどのように生み出されるのでしょうか。

f:id:tanazashi:20181027153212p:plain

刀剣づくりは鉄を熱しては叩く鍛錬からはじまります。

f:id:tanazashi:20181027153407p:plain

何度も折り返しながら鍛錬することで鉄の層ができます。

それが地金の景色となって現れます。

f:id:tanazashi:20181027153430p:plain

形が仕上がったらいよいよ刃文を作る工程。粘土を置いていきます。

f:id:tanazashi:20181027153520p:plain

黒い粘土の上にさらに赤い粘土。

作りたい刃文をイメージして特に焼きを入れたい部分には粘土を薄くそれ以外の所には厚めに置いていきます。

そして焼入れ。刀を高温で熱し、急速に冷やします。一度だけの勝負・最適な温度を見極めるの匠の技です。手がかりは炎の色。そして刀身のオレンジ色の輝き。

f:id:tanazashi:20181028192912p:plain

一気に冷やすことで鉄が化学変化を起こし白い刃文が生まれます。

経験に裏付けられた確かな技から生み出される鉄の芸術です。

f:id:tanazashi:20181028193002p:plain

「刃文というのは線の所を構成している粒子に、荒い粒子と細かな粒子があります。荒いのを沸(にえ)細かいのを匂(におい)といいます。

f:id:tanazashi:20181028193108p:plain

粒子をよく見ることで個性がわかる」

安土桃山時代の刀剣鑑定家に本阿弥光徳という人がいます。

f:id:tanazashi:20181028193304p:plain

「沸というのは光によって色が変わる。その強弱を表しています。秀吉は名刀を集めましたが、光徳がついていました」

f:id:tanazashi:20181028193356p:plain

 

美術館や博物館では手に持つわけにはいかない日本刀。

どう楽しめばいいのでしょうか。京都で開催中の展覧会を歴史が大好きという乃木坂46の山崎玲奈さんが訪ねました。展示ケース越しに楽しむ方法を渡邉さんに教わってきました。

f:id:tanazashi:20181028193548p:plain

鑑賞するのは今女性たちの間で最も美しいと人気の刀。

f:id:tanazashi:20181028193613p:plain

銘物三日月宗近です。平安後期三条宗近という刀鍛冶によって作られました。

f:id:tanazashi:20181028193731p:plain

まずは全体が見える位置に立ち、刀の姿を鑑賞します。

f:id:tanazashi:20181028193747p:plain

「正面から見ると堂々とした感じを受ける。刃の全体のしなりのたおやかさと言うかなんか滑らかにすごく綺麗にすってなってるのがなんか日本人が好きな雰囲気を表してるのかなって思いました」

f:id:tanazashi:20181028194509p:plain

続いて刃文。目線を上下左右に動かし、刃文が一番見えてくるポジションを探ります。

f:id:tanazashi:20181028194558p:plain

「刃文に注目してちょっと下から煽ってみると、表面だけでも随分いろんな見方があって、光り物て角度によって全然違うんだなって思うか、刃文が一番きれいに見える角度は多分ここだなとか思うんですけどでもちょっと下がると、その上のちょっとした模様とかが浮き出たりしてて何か面白い」

f:id:tanazashi:20181028194624p:plain

山崎さんで見つけた模様。この模様こそ三日月宗近の名の由来。

f:id:tanazashi:20181028194705p:plain

三日月の形をした刃文です。

f:id:tanazashi:20181028194737p:plain

最後に地金を鑑賞。照明をうまく受ける角度を探して鉄の肌の質感を味わいます。

「鉄金属を見てるけど、すごく繊細。滑らかな、でもやっぱりなんか資料集とか写真だと光の当て方までわからないけどなんか本物を見るとやっぱり生だからいろんな見方ができる面白いですね。芸術品っていう感じを改めて感じました」

スタジオ

平安時代に作られた国風文化の優美なたおやかな感じが現れているとは思うんですけれど、見る角度によって全然違います。例えば切っ先に向かって結構直線的にすっとなってはいるんですけれど全体を見るとそのしなりが緩やかで、美しくてっていうのを改めて知ることができたのですごく奥が深いなと思いました」

「あれは平安のあの時代でしかない姿です。鎌倉時代になるともっと強くなります」

三日月の刃文は意図してつくったものなのでしょうか

平安時代には意図して作る土置きはおそらくうまれていなかった。熱処理は刃先だけ温度が上がる方法で処理したのだと思います。ですから刃先の薄いところに自然に入ったのだろうと想定されてます」

「秀吉の正室である寧々がこの三日月を持っていたと聞いたんですが、それに関しては何か教えていただけますか

「おそらく京都の貴族ないしは足利幕府周辺にあって、それが秀吉に献上されて秀吉も大事にしていたけども一番大事な奥さん寧々に贈ったんではないかと思います。それを寧々さんが遺言として自分が亡くなった後はこれは徳川幕府に贈るように風に言われてやれたんだと思うんですね」

 

展覧会を企画した末兼俊彦さんにイチオシの刀を教えていただきました。

f:id:tanazashi:20181028195033p:plain

圧切長谷部(へしきりはせべ)という刀なんですけれども、長谷部というのは刀鍛冶の流派です。この刀長谷部派の特徴がよく出ていす。今までの方のと違ってですねきらキラキラとまるで夜空の星のように地の部分に白い輝き。皆焼(ひたつら)があるのでわかる」

f:id:tanazashi:20181028194924p:plain

光沢感が確かにダイブきらびやか綺麗ですよね。

f:id:tanazashi:20181028194959p:plain

三日月宗近は平安ぽいそのたおやかさがあったんですけど。長谷部は力強い感じがある。その時代によっても作られた雰囲気だったりそのしなやかさだったりってのも違うけどその作られたバックボーンが分かるから面白いなって更に思いました」

続いては、刀の目利き本阿弥光徳が絶賛したという刀です。

個人的に国宝の中でもナンバーワンと思う短刀で後藤藤四郎。後藤さんが持っていたので後藤藤四郎。

f:id:tanazashi:20181028195118p:plain

ナンバーワンっていうのは何でですか

「熱によって固くなってる部分の模様が見えると思うんですけれども。最初の始まる部分、元の部分に比べて先の部分というのはですね少し色が変わっているのが分かる。一言言ってしまうとですね失敗なんです。

f:id:tanazashi:20181028195223p:plain

大失敗なのになのに国宝の中でもナンバーワン。なぜかというと、この作者の義満という人は短い刀を作る名人なんですけれど、まっすぐの刃文を焼くのが仕事なんです。

f:id:tanazashi:20181028195300p:plain

ところがこの弟松でちょっと身を屈めてみてもらうと、ぐのめという模様が彼の作風の中では異質なものなんです。

f:id:tanazashi:20181028195327p:plain

義満が自分の新しい表現をしようと今までのいつも行ってない仕事ではなくて新しい表現に挑戦しようとして焼いてみた。焼入れ熱処理がうまくいかなくて刃文が薄くなってしまっているんですけれども、自分の仕事に満足をしています。失敗しているんだけれども新しい境地に今いることはできたんだと、自分の名前を入れてこれを完成品としてる所を本阿弥光徳は評価しています。

 

ところでこの会場に並ぶ刀武器として使われたものばかりではないと言います。

「刀というものはそれを持つことによって所有者に精神の安寧を与えたり、勇気を与えたりとかそういった精神的な部分での支えになるものが刀です。ほとんどの刀というのはですね実践で使うというよりは持つことそのものに意味がある」

心の支えとして大切にされてきた。だからこそ日本刀は美しく作られてきたのです。

 

 

放送記録

av98ingram.wpblog.jp

 

書籍

 

展覧会

www.sanobi.or.jp