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響くアートの愛好家

美の巨人たち  ピエール・カイペルス「アムステルダム中央駅」

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建築家ピエール・カイペルスが手掛けた世界屈指の美を誇る『アムステルダム中央駅』の計画が浮上したのは1864年

2つの駅を統合し新たな中央駅を港に作るという案は、市民にとって屈辱的だったといいます。一体なぜ?

運河に囲まれ水に浮かんでいるような駅舎は、人工の砂の島の上に建っています。

ゆえに地盤が脆く、水が侵入するなど難航を究めた建築…その先に待っていた新たな街の姿とは?

煌びやかな王室専用待合室も特別公開。 

美の巨人たち 
ピエール・カイペルス「アムステルダム中央駅」

放送:2018年9月8日

プロローグ 

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f:id:tanazashi:20181109211953p:plain広いホールにグランドピアノが1台置かれています。

すると。誰でも弾いていいようです。

小さなコンサートが始まりました。

でもここはいったいどこ。

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駅です。

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まるで水の上に浮かんでいるように見えるこの駅は世界屈指の美しさを誇っています。今日の作品。

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ピエールカイペルス作アムステルダム中央駅。

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今も完成当時の姿を保つ駅舎は幅306メートル。

最も高いところは地上から41メートルという堂々たる姿。

街の玄関にふさわしく、門の様にそびえる二本の塔。

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白い石の骨組みと赤レンガが建物正面の壁に華やかな表情を与えています。

中央の屋根妻。

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壁面を飾るのは2頭のライオンをかたどったオランダ王室の紋章。

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両側の塔には、海運や漁業、農業や牧畜というオランダという国を支えてきた産業が中世風のレリーフとしてあしらわれています。

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おやと思われたかもしれません。

二本の塔には時計のようなものが。

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でも二つもいらないですよね。右側は直径約3メートルの大時計です。

だとしたら左側は。動いた。

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実は風向きを示す風向計です。海運貿易で隆盛を極めたオランダならではの設備なのです。

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この駅の作者ピエール・カイペルスは19世紀から20世紀にかけて活躍したオランダを代表する建築家です。

「この駅は街を反映させた建築です。まさにアムステルダムのミニチュアなのです」

「カイペルスは総合芸術の人でした。外観や内装や細かな装飾のデザインを美しく融合させて合理的な建築物を作り上げたのです」

では正面入口から駅構内に入ってみましょうか。

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想像以上に明るいのは、光が入るようにたくさんの明り取りの窓が設けられているからです。

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広々とした空間に赤と白のコントラストが目を引く柱やアーチのデザイン。

ゴシックやルネサンス様式のエッセンスを自由に融合させて抜けのいい空間を作り上げているのです。

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冒頭で紹介したピアノはこちらに。

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その奥に見えるのが改札口です。アムステルダム中央駅には四つのホームがあります。

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圧巻は旅情をかきたてる巨大な半円形の屋根です。

鉄道大国だったイギリスに発注した鋳鉄製で直径45メートルとゆうスケール。

その大屋根の下に全長707メートルのホームが東西に伸びています。

ここからオランダ国内はもとよりパリやロンドン、ドイツの主要都市へと繋がっているのです。

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さらにこの黄金の扉の奥には。

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王室専用の待合室。そのきらめく美しさは後ほど。

水に浮かぶ駅舎の秘密

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アムステルダム中央駅を上から眺めるとおやと思うのは、周囲をくるりと運河が囲んでいること。

実はこの駅、島の上に建てられているのです。

しかもその島が。アムステルダムの街で中央駅の建設計画が持ち上がったのは1864年のことです。

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市内にあった二つの駅を統合し新しい中央駅を作るというものでした。

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そして港に作るという計画案が浮上したのです。

ところが。

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「ここは今駅になっていますが、かつてはアムステルダムが誇る港でした。最終的にアムステルダム市議会が町の北側に駅と鉄道を造ることを認めましたが、それはアムステルダム市民にとって大変屈辱的なことでした。東洋貿易で栄えた伝統ある港が駅のために埋め立てられてしまうのですからね」

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北海運河はアムステルダムと北海をつなぐ航路の大動脈。

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この運河の建設の時に出た大量の砂が集められた場所があります。

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港に生まれた三つの人工の島です。この砂の島に駅舎の建設が計画されたのです。

設計を担ったのが建築家ピエール・カイペルス。

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教会建築を得意とし、オランダ中の教会の修復と設計を手がけた建築家でした。

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彼の作った設計図とデザイン画が残されています。

中央駅の設計は生涯の代表作ともなる大仕事。

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カイペルスは細部に至る装飾まで自らデザインしたのです。

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建設は難航を極めました。

なにしろ地盤はもろい砂の島。そこに容赦なく水が侵入してくるのです。

しかし国土の大半を干拓地が占めるオランダでは強い基礎を作る方法がありました。

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木の杭を何本も地盤に打ち込むのです。食いに使われたのは長さおよそ12メートルの松の木。レンガの重さで建物が沈むのを防ぐにはこの基礎工事が必要不可欠なものでした。

「17世紀には20人で一本の杭を打ちましたが、アムステルダム中央駅建設の時代には蒸気機関が使われました。中央駅はもともと水の上だった場所に建設したため、工事はかなり難航したと言われています」

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建設に携わった作業員たちは緩い砂の地盤におよそ8700本もの木の杭を打ち込んだのです。

アムステルダム中央駅が開業したのは1889年10月15日のこと。

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完成の日には大勢の市民達が押し寄せ入場料金を徴収してお披露目したと言います。

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ここはかつての一等車乗客専用の待合室。

現在は当時の豪華な内装のままレストランに改装されています。

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軽食からオランダの家庭料理まで楽しむことができますよ。

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このレストランのマスコットがオウムのエルビスくん。

もう18年もここで暮らしているんです。

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ここはアムステルダム国立美術館。実はこの建物もカイペルスの設計なのです。

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アムステルダム市立劇場。中央駅とよく似ていますね。

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こちらはダム広場にある有名な百貨店。かつて中央郵便局だった建物です。

「カイペルスはほぼ同時期に中央駅と国立美術館の発注を受けました。両方ともオランダの古い建築を参考にしており、赤レンガによってアムステルダムの街が表現されています。

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中央郵便局はカイペルスの弟子が設計しました。市立劇場の建築家はスプリンガーという人ですが彼はカイペルスの影響を受けた絵画的な建築家でした」

アムステルダム中央駅は単なる駅ではありません。

この駅の誕生によって街全体を根底から変えてしまったからです。

果たしてそれは。ヒントはこのセントラル中央という言葉の意味。

 

19世紀に建てられたアムステルダム中央駅にはひときわ華やかな場所があります。

2番ホームにある黄金のゲートが輝く王室専用の待合室。

撮影のお許しを頂いたので恐れながら入ってみれば、まさに宮殿のような趣です。

明り取りの窓にはめられた美しくも繊細なステンドグラス。

羽の生えた車輪をモチーフにした豪華なシャンデリア。

「全てのものがカイペルスのデザインですこのオーク材の羽目板の装飾からテーブルの細かい部分のデザインまでカイペルスの指示のもと職人たちが制作しました」

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ここにはオランダの美術と工芸の粋が集められているのです。

さてこの駅の誕生によって生まれ変わったものがあります。

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19世紀のアムステルダムの街です。当時は市内に運河が縦横に走る人口30万人ほどの港町でした。

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しかしアムステルダム中央駅が開業すると港に集中していた都市機能が市街地へと移り始めます。

「中央駅が建てられ街は変わりました。貿易の仕方が特に変わり、船で運ばれてきたものをすぐに汽車で運ぶことができるようになりました。鉄道での通勤も可能になり市民が郊外に引っ越して運河沿いの風景も変わりました」

さらにアムステルダム中央駅に全ての交通機関が集中していくのです。

運河を航行するフェリーの発着所。トラムと呼ばれる路面電車の停留所。

そして路線バスの発着所。ここは鉄道のみならず、あらゆる交通機関の中央として存在しているのです。だからアムステルダム中央駅。

「ホールにあるピアノは待ち合わせ場所として置いてあります。待ち合わせの目印は旗でもいいのですがそれがピアノであることによって面白いことが起こるのです。通りすがりの人が引き始めて自然と人が集まったり。合唱が始まったりするのです」

この駅にはもう一つの顔があります。あっと驚く近未来。それはいったい。


今日の作品、アムステルダム中央駅が世界屈指の美しい駅と呼ばれている理由はこの古い駅舎だけではありません。

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アイン湾を臨む北側は全く違う顔をしているのです。

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北側のホールはオランダが誇る現代的なデザインの空間が広がっています。

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今年の7月には地下鉄の新路線が開通するアムステルダムにとって中央駅はますます大きな存在となっているのです。

コンサートが始まったようですよ。

やがてこの駅が一番美しい姿を見せる時が訪れます。

煌めく運河に浮かぶ夜のステーションです。この景色が多くの旅人たちの疲れを癒してきました。

出会いもあれば別れもあるある。去る人がいて待つ人がいる。

旅立ちの場所。帰ってくる場所。

駅は人生の劇場。赤レンガと白い石のコントラストが明るく軽やかな表情を与えています。

誰もが集い誰もが使う人生の劇場にこそ最も美しい形を。

ピエールカイペルス作アムステルダム中央駅。歳月を重ねること。

未来へと向かうこと。砂の島のステーション。

 

 

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