チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

日曜美術館「ようこそ フェルメール部屋(ルーム)へ」

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日曜美術館「ようこそ フェルメール部屋(ルーム)へ」

史上最高!フェルメールの作品8点が来日。あの名画もこの名画も!“夢のフェルメール部屋”で謎と魅力に大接近。福岡伸一平野啓一郎篠原ともえイッセー尾形、ほか

みんな大好き!ようこそ“夢のフェルメール部屋”へ。この秋、東京に集結した世界中の名画。多彩なゲストがお気に入りのフェルメールの前で熱く語るドラマや妄想。フェルメールは科学者?小説家?魔術師?フェルメールの絵はドールハウス?小さな部屋に閉じこもり世界中とつながっていた?フェルメールの絵は15秒のユーチューブ?ってどういうこと!?深すぎる謎に迫る新解釈の45分。だからフェルメールは超絶面白い!

【ゲスト】青山学院大学教授…福岡伸一,美術評論家西岡文彦,芥川賞作家…平野啓一郎,【出演】篠原ともえ,イッセー尾形,照明デザイナー…石井リーサ明理,【司会】小野正嗣,高橋美鈴

 

放送日

2017年11月11日

 

プロローグ

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アトリエで仕事をするフェルメールを10分でも観察できるなら私の右腕を切り落としてもいい。(サルバトール・ダリ)

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東京上野でフェルメールの傑作がずらりと揃うかつてないい展覧会が開かれています。

17世紀オランダで活躍したフェルメール。日本人が最も愛する画家の一人です。

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世界中に30数点しか残っていない作品のうち、これまでで最多の9点が来日。

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一つの部屋に集まりました。

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日本初公開の作品は。まさに夢フェルメールルームが誕生したのです。

そこを訪れたのは「本当の色をまっすぐに捉えて書いたらこれぐらい強い青になったのかな。この青には嘘がないと言うか」「物語で寄り添いたくなるのかな僕にとっては」

みんなどうしてフェルメールに魅了されるのでしょう。

さあフェルメールの部屋へ足を踏み入れ、その答えを探しに行きましょう。 

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福岡伸一さんのフェルメール

ゲストはフェルメールファンとしても知られる生物学者福岡伸一さん。

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フェルメールのどこが素晴らしいかと言うと、フェルメールの中に私が理想とするような科学者的なマインドを感じるんです。ゴッホにしろピカソにしろ、これが私の解釈する世界だみたいなエゴを突き出してきま。フェルメールの絵の中にはほとんどエゴがない。エゴがないって言うのはこの世界を客観的に切り取りたいっていう科学者の気持ちです。

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あのミルクが絶えず流れてているっていうこの雫は紅ねじれながら落ちている瞬間として泊まってなくて今にも流れて流れているように見えますよね。一体何故かって言うとこの絵の中にあの完全に静止画像があるわけじゃなくて、ある幅のある時間が流れている。現在だけじゃなくてそのミルクを注ぎ始めるあるいは注ぎ終わる。過去と未来が幅を持って厚みを持って描かれているから絶えずミルクが流れているように見えるんじゃないと思うのです」

フェルメールのふるさと

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オランダ・デルフト。1632年。この小さな町でフェルメールは生まれました。今は旧市街となっている、わずか位置キロ四方ほどの間で生涯を過ごしたといいます。

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当時のオランダはヨーロッパで12を争うほどの裕福な国でした。スペインの支配から独立し、自由貿易で経済も発展。豊かになった市民たちが王や貴族の代わりに社会の主役になったのです。

f:id:tanazashi:20181114081324p:plainそれまでは教会や王族のために絵が描かれていました。そのため宗教画や歴史画がほとんどでした。

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しかし絵を買うのは市民へと変わります。彼らが求めたのは自分たちの暮らしを題材にした風俗画。その中でフェルメールは他の画家とは一味も二味も違いました。

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色彩です。ゴッホの言葉です。

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「彼の絵には完璧なパレットがある」中でも鮮烈なのが青。それはフェルメールブルーと呼ばれ多くの人々を虜にしてきました。

篠原ともえさんのフェルメール

その色をこの目で見たみたい念願のフェルメールに会いにこの部屋に来たのはタレントの篠原ともえさん。「白い世界から急に青い世界に」衣装のデザイナーとしても活躍する篠原さん。絵画を見てその色彩を参考にすることもあるといいます。

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「これとても有名な絵。フェルメールって柔らかい絵かと思ったら結構実際の作品は色がパキッと出ててびっくりしました。

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黄色いお召し物はすごくもきっと彼女がお気に入りでずっと愛用してそれで洗濯も何度もしてちょっとよれている感じとかが作品からはわかってでまた腰に巻いてる布もこうすごくこ新しく洗いたての感じだったり

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そういう生活感も作品から見分けることができるぐらい丁寧にフェルメールは描いてるていう風に思います。このテーブルクロスも元々青だったんじゃないかなと思うんですけどねどんどん日に当たるとちょっと黄色みがかった茶色みがかかったりして緑っぽくなるんですけど。

f:id:tanazashi:20181114081821p:plainもしかしてこのテーブルクロスも青ででフェルメール青大好き。篠原さんにはもう一人好きな画家がいます印象派の巨匠ルノワールです。

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しかし篠原さんはルノワールフェルメールでは随分青の印象が違うと言います。「ルノワールの青ってもっとこうルノワールのフィルターがかかっていて、ルノワール色だと思うんですね。ちょっとファンタジーが入ってるような彼の空想も入ってると思うんですけど、フェルメールは現実的な青と言うかその時見た質感だったり本当の色をまっすぐに捉えて書いたらこれぐらい強い青になったのかなっていう風に思いますね。この青には嘘がないと言うか」

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小さな絵が多いフェルメールには珍しく縦1.5メートルを超える大作。初期の作品です。「マルタとマリアの家のキリスト」

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「青が使われてますね。文字や言葉で書かなくても絵の色でその時代背景や状況が見えてくる。

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キリストが胸にかけている布は重々しくて、話してる説得力がより聞こえてきたりですとか・・」そして篠原さんを大興奮させた作品がこちら日本初公開の「ワイングラス」

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「まず飛び込んでくるのはこの女性のドレス。すごく上質なサテンで絹のいい生地を使って仕事なドレス。

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素材が絵の中で表に取るようにわかるっていうのがもうゾクゾクしますね。テーブルクロスの品のある柄だったり。細い筆を使って繊細に描いていったり

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階級の高い生活の暮らしぶりを丁寧に生えてるのっていう風に思います。生地、高いんだろう届いて来るって凄いですよね。

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男性の羽織っているマントのようなものはちょっとこうくたっとなって皺から日常使いでよく来ているマントだったんだろうな。でもちょっと光を浴びて発光してるからすごく上等な生地で、

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きっと帽子はウールのような重めの素材なんだろうなっていう風に、どんどんどんどん質感が手に取るようにわかると言うか、

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でもグラスがすごく透明感があってすごくこう光っていて布だけじゃなくて手に持っているワインの瓶だったりとか、

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硬さとか柔らかさとか全部捉えて。私もデザイン画を書くんですけど素材って本当に自分で見えてないと書けないんですよ。でそれを自分で触ったりこどういう質感の物で本当に把握してないとえには描けないんですね。

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なのできっとフェルメールは観察もそうなんですけど、そういう素材の特徴だったり光との相性なんかをキャッチするのがずば抜けていたんじゃないかなって思うんですよね。

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ものを本当にじっくり捉えて嘘がなくかける。真実が美しいっていうことを伝えたかったんじゃないかなと思うんですよね。そこにひとつでも自分のオリジナルだったり脚色が入ると、それはもうその時点で違う切り取り方になっちゃうんじゃないかなってフェルメールは思ったんじゃないかな。

フェルメールの部屋にさらにゲストをお招きしました。西洋美術には専門の西岡文彦さんと 作家の平野啓一郎さんです。

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ドールハウスですね人形が置いてあるんです。視覚的には奥の壁を描く。壁を真っ正面から見るんで、このアングルっての僕たちがドールハウスを見るときにすごく似ている。

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実際にドールハウスはこの時代にできるんですね。自分たちの生活をちょっと客観的に見る。それまで美術がやってきたことは王宮の再現であったり、教会という神のいる空間の再現であった。その両方がなくなるわけですからそうすると

自分たちの暮らしを美術品の中に再現してそしてドールハウス風になってくんですよ」
「飾る場所としてもね普通の家だと思うと、ここにいきなり王宮の世界にその壁に飾ることもあるんだね」

「小さいのも家に持ち帰って飾るというこの時代のオランダの自画像なんですよね」

「デルフトの街の中でどれくらい知名度があったか。その少し前に爆発事故で亡くなったデルフトを代表する画家がいるんですが、その人を継ぐのはフェルメールだって言われていました。一応ナンバーワン。というのもこの時代が始めてなんです。絵描きさんの絵が売れようになったのは、絵が既成品のように売買されるようになった。それまではオーダーメイド。既成品が売られるようになったから、自らを差別化するために個性っての求められるなったんです。今日の美術家の個性が商品の中心になってるっていうマーケットが初めて成立したのは17世紀のオランダですね。市販されるようになったからです」


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フェルメールはこの作品を描く前に宗教画とか描いてますけど、後の作品に比べると、何を描いて何を描くべきじゃないかってことの確信があるのかというとまだない感じがします。ある意味て全部パキンと描いてますけど、ここまで綺麗に本当に写真みたいに、今の高解像度写真みたいに描くっていうことは自分のやりたいことじゃないんじゃないかっていうのはあの感じたんじゃないかな」

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「光に対してとっても公平ですよね。この一番光が入ってくる窓のさんの所が一番明るく描いたんだから普通だったらなんかこのスポットライト的に主人公に光を当てちゃいますけれども(本当に光が強く目に映ったところは強くとそうでないところは優しくと)そう。科学者的な気持ちじゃないか」

フェルメールは別名光の魔術師。その謎めいた光はどのようにして生まれたのでしょうか。

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師走歌舞伎の顔見世興行で知られる京都南座フェルメールと同じ時代の17世紀江戸初期に誕生しました。日本最古の歴史を持つといわれるこの劇場をライトアップしたのが石井リーサ明理さんです。石井さんは日本だけでなく世界中で活躍する照明デザイナー。仕事でオランダを訪れることもあるという石井さんに描かれた光について聞きました。

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「基本的にオランダの空っていつでもこう雲がかかっていて、低い雲がたくさんかかっているんですねそれが太陽をふあっと拡散させていて、それが南仏とかギリシャとは違う柔らかい光を作っていて、そういう光が左側から入ってきて、当時の窓ガラスって今みたいな透明なガラスではないので、そこでさらにこ拡散されて、そういうものが中に来ふわっと入って。私たち照明デザイナーの世界でミルクの霧がかかったみたいなとかっていう表現をすることもあるんですけれど、ミルクを注ぐ女性に粉ミルクのような柔らかい光が包み込む感じがします」同じオランダで活躍したレンブラント・ファン・レイン。フェルメールより30ほど年上の方です。レンブラントも光を印象的に描いています。しかしフェルメールとは対照的だと石井さんは言います。「レンブラントも非常に劇的な光を使っていて、夜景にあんなに強烈なスポットライトが当たってるわけない。人物な顔にここだけ光が当たってるわけないのにそういう光を描いている。非常にドラマチックで劇場的な光だと思うんですね。ステージ照明みたいな。それに対してフェルメールは多少調整はしたかもしれませんけれども、日常の光がすごく綺麗だっていうところを綺麗に切り取ってその光を綺麗に描いて。多分ある時とかは日常の中で画家ですから、物の形を見たら色を見たりっていう中で、光を見るって言うことに気がついて、それが結構綺麗だから描けるかなってやってみてどんどん描いて行った。光が写実的な光と影が描けることのチャレンジがすごく楽しかったんじゃないかなって気はします」それは子どもの頃から目にしたオランダデルフトの光。しかしある時気づいたのかもしれません。あらゆるものを照らし出す光の尊さ。そして生まれました。フェルメールの光が。
リュート調弦する女」ワイングラスの1年ほど後に描いた作品です。テーブルには楽譜壁には世界地図。そして女性が持つのは中世ヨーロッパで用いられた弦楽器リュートです。
「よく見ると彼女は調弦しているわけではないんです。ピンを回している指と弾いている弦は違う。弦は上の方で、回している弦はもっと下の方なんです。だから調弦しているんではなくて、ふと窓の外に起こった出来事に一瞬注意を向けている。まあ彼が来たのかもしれないけれど、なんかそういう一瞬を描いている。だからホントはリュート調弦する女ではなくて、窓の外になんか気づいた女の人だと思います」
「オランダ市民の自画像という話を拡大すると、後ろに世界地図があるじゃないですか。オランダって国に生きているっていう状況自体を絵にしているて気がするんです。つまり外の世界ってのが圧倒的にあって、アジア貿易で儲けて。だけどオランダってのは小さな独立したての国で、自分たちのプライベート生活があって、外からの光によって存在が依存してるわけですけど。結局、窓の外の世界の光によって室内の空間の存在が成立してるってのと同じように、オランダってのは、外側の世界の、あそこの地図に書かれているように、遠くの世界の状況によってすべてがどうなったとかアジアでどうなったとかいうことによって依存している自分たちの国っていう風に、そして外の世界を見ながら夢想してるって言うのは世界っのはどういう場所なんだろうかってのことオランダの中でも特にデルフトってとこに籠もって絵を書いたフェルメールの仕業なんじゃないのかなって」

 

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