オルセー美術館特別企画
ピエール・ボナール展
テーブルにつく女性とその傍らで身を乗り出す猫。
何気ない日常の一場面です。
しかしここでは独特な画面作りが行われています。
皿や顔、テーブルの丸。
壁や椅子、暖炉の直線。
丸と直線で作られた画面を猫と皿を結ぶ斜めの線が貫きます。
「あーあの魚が食べたい」という猫の視線が画面全体に動きを与えていることがわかります。
穏やかな画面にさりげなく隠された仕掛け。
それがフランスの画家ピエール・ボナールのたくらみです。
初期から晩年までボナールの作品130点以上を集めた大規模な回顧展が開かれています。
ボナールは19世紀の末から20世紀前半にかけフランスで活躍しました。
平面的で装飾的な画風で知られるナビ派の一員として出発します。
ナビ派に大きな影響を与えたのは19世紀末パリで流行した日本美術。
ボナールは掛け軸を思わせる縦長の画面に女性たちを描きました。
体をひねって振り返る姿は浮世絵の見返り美人のよう。
日本の影響を受けながら明るく装飾的な画風を築いていきます。
ボナールが40代になった20世紀初頭。
パリではマチスやピカソといった画家たちが革新的な絵画運動を繰り広げました。
その中でボナールは独自の道を歩みます。
女性が身繕いする姿など身近な生活をやさしい色彩で描きました。
しかしよく見れば鏡や壁の縦のラインがしっかり強調されていることがわかります。
それに同調するように女性の足のラインも直線的になっています。
こちらは一見平凡な食堂の風景。
通常絵画では主役となる人物や物を画面の中央に描くことが多いのですが、この絵の中心はがらんとしたテーブルの上。
人物や動物は画面の隅に追いやられ、カンバスの外にはみ出るほど。
見れば見るほど新しい発見があるのがボナールの絵です。
「ボナールの絵は室内画にせよ風景画にせよ主題としては非常に身近な主題を扱っている作品が多いです。しかしながらその中で絵画空間の実験と言いますか空間表現の実験というのもたえず行っていた
ラジカルな前衛的な絵の描き方を試みていたのではないかなと思います」
東京六本木の国立新美術館で12月17日まで。
会場:国立新美術館
会期:2018年9月26日~12月17日
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