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響くアートの愛好家

美の巨人たち フェルメール「手紙を書く婦人と召使い」

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日本で過去最多の作品が東京・上野にやってくると今話題のヨハネス・フェルメール

番組では2週にわたってフェルメールが残した美と謎の物語をお送りします。

2回目は、2度も盗難にあったという受難の傑作『手紙を書く婦人と召使い』。

17世紀のオランダでは郵便制度が急速に発達し、手紙は現代のメールやラインのような当時の最先端の通信手段でした。
今日の一枚は、一心不乱に手紙を書く婦人と何か含んだような笑みを浮かべる召使いの様子が描かれています。

この作品に隠されたフェルメールのメッセージとは?

美の巨人たち フェルメール「手紙を書く婦人と召使い」

放送:2018年12月8日

窓から日差しが部屋の中に。女性が一人外の様子を伺っていますね。何か含んだような笑みを浮かべています。静かな部屋ですがかすかな音が聞こえてきました。そうもう一人の女性がペンを走らせている。一心不乱に。今日の一枚はただそれだけの絵なのに・・・。おや?床に何か落ちている。なんだろうこれは。作者は世界で最も愛される画家かもしれません。17世紀のオランダが生んだヨハネス・フェルメール。2週に渡ってお送りするフェルメールの人謎の物語。今夜はその第2回目です。現存するフェルメールの作品の数はわずか30数点。初期のものを除けばその大半は室内の壁に収まる手頃な大きさ。大きなものでもこれくらい。小さいものは A 4版にも満たないサイズ。手頃なサイズと希少性からなのかいくつかの作品が盗難の被害に遭っています。未だに行方不明というえもあれば、2度も盗難にあったといういわくつきの作品もあります。それが今日の一枚です。その絵は上野の森美術館で開かれているフェルメール展で鑑賞することができます。来日している8作品の中の一つ。ヨハネス・フェルメール作「手紙を書く婦人と召使い」。縦70センチあまり、横60センチほど。キャンバスに描かれた油彩画です。一見何気ない日常の風景に見えますが、覗いているような気持ちになるのは左側を覆っている深い緑色のカーテンがあるからでしょう。ステンドグラスがはめられた窓からは昼の明るい日差しが差し込んでいます。傍では召使の女性が腕を組み何やら手持ち無沙汰な様子です。彼女は何を待っているのか。女主人と思われる夫人は机で脇目も振らず手紙を書いています。それがどうしたのとお思いでしょうが、フェルメールの手にかかると、召使いの含み笑い。背後の大きな絵は何だろう。床に落ちているのは書き損じの手紙でしょうか。他にも何か落ちている。一つ一つのディテールが意味ありげにこの世界を作り上げているのです。果たしてフェルメールは何を描こうとしたのか。どんな思いを込めたのか。例えばこの赤い丸に。

 

手紙 

オランダ南西部の町デルフト。フェルメールが生まれ生涯を送った町です。彼が生きていた17世紀のオランダでは郵便制度が発達し手紙という新しいコミュニケーションの手段が瞬く間に広がりました。そして生まれたのです。喜怒哀楽のドラマが。デルフトの街の中心にあるマルクト広場。この広場の1 km四方がフェルメールの生活圏でした。フェルメールが生まれた家は広場の裏手にあった父親が経営していた宿屋兼酒場の空飛ぶキツネ亭。幼少時代の家は広場に面していました。フェルメールは二十歳の時に資産家の娘だったカタリーナと結婚しています。その妻の実家で暮らしながら絵画の制作に励んでいたのです。フェルメールが残した30数枚の作品。当初は歴史画や物語家を描いていましたがやがて市民の生活をテーマにした風俗画が大半を占めていきます。その中で同じモチーフを扱った作品があります。手紙を書く。手紙を読む。手紙を渡される。6枚もの手紙にはそれぞれのストーリーが。

「17世紀手紙は誰もが使うことができる最先端のコミュニケーションツールで、遠距離にいる家族友人恋人同士仕事関係の者たちの通信の手段でした」

フェルメールは手紙という新しい通信手段に熱中し、翻弄され戸惑い時には疑心暗鬼となる人々の喜怒哀楽のドラマを描いたのです。その原点には父親の仕事が深く関わっていたという説があります。

「当時多くの人々が集う宿屋は手紙の中継地点になることがよくありました。ですからフェルメールの父親の宿屋がそうした役割を担っていた可能性は重分にあるのです」

フェルメールは子供の頃から父親の宿屋で手紙というものに馴染み、手紙がもたらす人々の喜怒哀楽を見つめていたのかもしれません。今日の一枚「手紙を書く婦人と召使い」。召使いの女性は窓の外を眺めています。けだるさと諦めと苛立ちを含んだ苦笑いを浮かべて。彼女はこれから手紙を先方に届けるか手紙を集めている宿屋に持っていかなければならないからです。そんなことはお構いなしで婦人は一心不乱にペンを走らせています。さらに。床にシーリングワックスが落ちています。シーリングワックスとは誰にも読まれないように手紙を封印するために使われた封蝋です。当時はまだ封筒が普及しておらず、手紙を折りたたみ、その上に熱したシーリングワックスを垂らし、家の紋章などを模したスタンプなどを押して封をしていました。 この床に落ちているシーリングワックスこそ今日の一枚の謎を解く重要な鍵なのです。

「この絵は盗難に会い戻ってきた後に修復されています。その際、塗りつぶされていた小さい赤い丸が見つかったのです」

かつては書き損じの手紙だと考えられていましたが、修復によってこの赤い丸が発見され、届いた手紙だと解釈されるようになったのです。
実はこの絵にはフェルメールという画家の強烈なメッセージがかくされていたのです。背後の壁に描けられた絵の意味がわかった時、今日の一枚は全く違う姿を見せることになるのです果たしてそれは。

 

フェルメールのメッセージとは

デルフトの街にはフェルメールが生きた時代の建物が今も軒を連ねています。当時の部屋を再現してみました。フェルメールは裕福だった妻の実家に同居しながら絵を描いていました。一説には建物の2階の部屋を与えられ、アトリエにしていたといいますからこんな感じの部屋だったのかもしれません。そしてフルに活用したのです。一幕のお芝居を作るように。

 

芝居を作るように描いて

フェルメールの絵の中で頻繁に登場するものがあります。今日の一枚の中でも使われているテーブルクロス。深みのある赤にオリエンタルな柄をあしらった厚みのあるこの布はいくつもの作品の中に登場します。

フェルメールは配置や使い方を工夫して描いていたのです。実はこの布ペルシャ絨毯だと言われています。高価なものだったのでオランダではテーブルクロスやタペストリーとして使われていました。覗き込むような効果を生み出すこの左側の緑のカーテンも他の絵に使われています。「窓辺で手紙を読む女」では右側に使われていますね。ワイングラスに登場する男性のマントはカーテンを代用したものです。

フェルメールの作品に目立つのは様々な絵に同じ小道具を繰り返し使うことです。壺、背もたれの青いステンドグラスなどこれらは彼の家やスタジオに実際にあったものではないかと思われます。17世紀のアートで言えることは絵やものに深遠な意味があったということです。日常生活の一場面に見えても実は別の意味もあるのです」

フェルメールはアトリエという決められた空間の中で家具や調度品を巧みに使い分け、綿密に計算をしながら一幕ものの演劇の舞台を作るように一つの世界を作り上げていったのです。

 

壁にかかった絵の秘密

今日の一枚にもフェルメールの全神経が隅から隅まで行き届いているのです。

となると、気になりませんか。この壁の絵が。

モーセの発見という旧約聖書にあるテーマを描いたものです。画商でもあったフェルメールの商売用のコレクションだったと思われます」

描かれているのは旧約聖書出エジプト記の一場面。エジプトの王はヘブライ人の男の子が産まれたら殺害せよという命令を下します。困った母のヨケベドは我が子モーゼを救うためにかごに乗せて川に流しました。その下流で水浴中の王女に助けられ、王族として育てられることになるのです。そして母のヨケベドはひそかに乳母となって我が子をモーセを育てるというエピソード。

全ては子どものために。深い母の愛情を暗示するこの絵の前で、婦人は一心不乱に手紙を綴っている。フェルメールが描こうとしたものとは一体何か。

 

謎多き画家・フェルメール

フェルメールと妻のカタリーナ。二人の間には11人の子どもがいたと言われています。さぞ家庭の中は賑やかだったでしょう。でも彼の作品に子どもが登場することはほとんどありません。幻想とは無縁の静寂と何か心をざわめかせる世界。そして描かれているのは・・・。柔らかな午後の日が差し込んでいます。婦人は愛する人に手紙を綴っています。脇目も振らず一心不乱に。その息遣いが聞こえてくるようです。画家は、誰にも開かせない秘密と自分だけの通信手段を持った新しい時代の女性の姿を描きあげました。精一杯の皮肉を込めて。

フェルメールは私たちの想像力を刺激します。この絵も30以上ものストーリーが考えられます。家族や恋愛、または失恋。言い換えればフェルメールは私たちに想像する場を与えてくれているのです」

登場人物の仕草、視線。そして散りばめられた小道具。その一つ一つを読み解きながら、見るものはフェルメールの世界を味わうのです。

ペンを走らせる音だけが響いています。恋愛の悦びか、それとも戒めなのか。絵を味わい、絵を読み込み想像する悦び。ヨハネス・フェルメール「手紙を書く婦人と召使い」。永遠のロマンス劇場。

 

 

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