チャンスはピンチだ。

響くアートの愛好家

日曜美術館「熱烈!傑作ダンギ マティス」

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その芸術家を心から愛するゲストが、魅力を読み解く「傑作ダンギ」。

今回は今年生誕150年を迎える色彩の魔術師、アンリ・マティスについて3人のゲストが熱く語り合う。

鮮やかな色彩と伸びやかな線で愛される20世紀を代表する画家、アンリ・マティスマティスの赤色の奥深さにひかれる、俳優の津田寛治さん。

アーティストの日比野克彦さんは、新たな表現に次々と挑戦する画家の姿勢に、若い頃から勇気を得たという。

専門家の天野知香さんは好きな作品として晩年描いた究極の作品を紹介する。

3人のゲストが愛する作品を語り合う中で、マティスの色彩のひみつや作品にかけた情熱が見えてくる。

【ゲスト】アーティスト・東京藝術大学教授…日比野克彦,お茶の水女子大学教授…天野知香,津田寛治,【出演】柚木沙弥郎,【司会】小野正嗣,高橋美鈴

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日曜美術館「熱烈!傑作ダンギ マティス

放送日

2019年1月20日

プロローグ

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私が夢みるのは不安や気がかりの種のないバランスの取れた良い肘掛け椅子のような芸術である。と言ったのは20世紀の巨匠アンリ・マティス

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ところが絵画の常識を破る彼の作品は野蛮で暴力的で野獣のようだと言われます。そんな声にめげることなくマティスは言い放ちます。

「芸術家の役割は見たものをそのまま描きとることではなく、対象がもたらした衝撃を最初の新鮮な感動とともに表現することなのだ」。

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いっぽう私たちがマティスに感じるのは暖かさや親しみやすさです。まるで音楽を奏でるかのような軽やかで明るい色彩。伸びやかな線。子供のような純粋さと絵画の変革者としての斬新さ。ふたつの顔を持つマティスとはいったいどのような画家だったのでしょうか。
今回はもマティスの絵が大好きだという三人のゲストが様々な魅力を熱く談義します。今年生誕150年を迎える画家アンリ・マティス。人々を引き付けるその不思議な魅力に迫ります。

 

生い立ち

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1869年大晦日。北フランスの小さな村でアンリ・マティスは生まれました。

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21歳の時病気で長期療養を迫られ、気晴らしのために始めたのが画家を志すきっかけとなります。

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やがて本格的に絵を学ぶために向かったのがパリ。当時は印象派をはじめとした個性豊かな画家たちが伝統的な絵画の枠を超えた自由な表現に挑んでいました。

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マティスは美術学校で基礎を学びながらこうした新しい表現からも刺激を受けます。

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セザンヌシニャックなどの影響を受け、

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様々な色彩の探求を行いました。

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1905年、マティスは友人つ南フランスの港町コリウールの旅に出ます。明るい太陽の輝き。

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色とりどりの家々が立ち並ぶコリウールの町はマティスの色彩感覚を大いに刺激しました。

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そして誕生したのが窓から見えるコリウールの風景を描いたこの作品です。

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自然をただ再現することから色彩を解放。

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ピンクや緑など画家の魂を揺さぶる色を用い絵画の常識をぶち壊したのです。「私の色彩の選択はどんな科学理論にも頼らない。それは観察、感情。私の感受性の経験に基づいている。私は単に自分の感覚を表す色を置くだけである」。

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さらにマティスは妻の肖像画で色彩を爆発させます。

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荒々しく大胆な筆遣いで置かれた赤や緑や黄色など、非現実的な色彩。画家の情熱や生命力が感じられます。

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このマティス独特の色彩は展覧会でセンセーションを巻き起こします。批評家たちは暴力的で常軌を逸した野蛮な表現だとして「野獣派=フォーブ」だと激しく非難しました。色彩の魔術師・マティスの本格的な絵画への挑戦が始まります。

 

スタジオ談義

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「計算しつくしたものじゃなく、実験。感じたことを置いてみてひらめき、また別の色を置いてみての繰り返し。自分の中での挑戦」日比野
「赤に対して緑を置くとか、色彩のバランスを考えている。色彩を置いてどうバランスをとっていくか考えている」天野
「作家として何かしでかしてやろうという野心はある」日比野
「初期の帽子の女からマチスらしさは出ている感じがする。色の面積が大きい。ふつうはいろいろな色を使うが、色を塗るという感じでドンドンと置く。女性を描きたかったというより色を塗りたかったという感じ」津田

マティスの赤の魅力

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ひろしま美術館

ひろしま美術館にマティスの作品を訪ねました。マティスの赤には不思議な魅力があるという津田さん。実際にマティスの絵と対面するのはほとんど初めてだと言います。展示作品の多くに様々な赤が使われていました。

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「この赤の比重がすごく大きいですよね。でもなんかやっぱり温かみを感じますよね。暖炉の炎の赤と言うか人の心を暖かくする赤という感じがあります。僕の好きなマティスの赤は二次元的な赤です。平面的に塗られてテーブルから壁から何から何まで赤くて、そんな真っ赤な部屋ないよなーって思うぐらい赤いんですけど、それにネガティブなものは感じないって言うんですかね。ちょっとなんかチャーミングで優しいものを感じる」。

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「この絵はこの女性ちょっとエロティックな感情を持たせるために配色されてる赤っていう印象がありますね。でも僕はどちらかといったその温かみに隠された狂気みたいなところが好きなんですよね。狂気と可愛らしさ両方含んでるような気がするんです中はそのなんか相反する二つが同居してる感じに魅力を感じますね」。

 

マティスの赤の秘密

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Sankt-Peterburg


ロシアの古都サンクトペテルブルク。ここにマティスが描いた最も印象的な赤の代表作があります。

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エルミタージュ美術館



美の殿堂エルミタージュ美術館です。

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ここにはロシアの実業家らによって集められた60点余のマティス作品があります。

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食卓のある室内を鮮烈な赤を使って描いた「赤のハーモニー」。

壁やテーブルは全て赤一色でべた塗りされ、植物模様の青や果物の黄色やオレンジ、窓の外の緑などが不思議なバランスで配置されています。

この絵の赤はなぜ見る人を惹きつけるのでしょうか。そこには色彩に対する緻密な計算があるといいます。

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「例えばですねこの鮮やかな赤なんですけれども、この窓の外に緑がございます。この緑と赤というのは対比色として画家がよく使う色ではあるんです。

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色相環と言いましてこの中で反対の位置にある者同士を隣の色に置きますと、ギラギラとして鮮やかな効果があるんですね。

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赤と青緑の2色をそのまま入れてしまいますとすごくぎらついた感じが出てしまいます。それをここの窓枠をご覧ください。

オレンジと黄色を使っています。このオレンジと黄色というのはこちらの背景色でもある赤と窓の外に見られる緑青緑ですね。

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この真ん中に位置する色ですので、この色を2色窓枠に使うことによってぎらつき感が出ていなくて、自然にすっとこの部屋の中から外へ視線が誘導されるというそういった仕組みになっているかと思われます」。

さらにテーブルの上の黄色にもマティスの計算があるといいます。

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「黄色が点在しています液体のこの黄色ですとか黄色いレモンのようなものですとか。そしてまた窓の外に来な黄色がございますね。

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これがてんてんてんてんてんてんと横に流れるように配置されていますので、観る鑑賞者にとってはここから動きが感じられてて窓の外にもすっと。目を誘導する役目がございます」。赤と響きあう色を絶妙に配置し見事に色彩のハーモニーを作り上げました。マティスの赤は見るものに何を感じさせるのでしょうか。

スタジオ談義

「赤っていう色ってすごく使い方が難しいなと思うんですよね。この赤のハーモニーと語ってみるとあってまず目に付くな赤ですよね。テーブルマークだし壁も赤だしすごく赤でこれだけ赤使ってるとなんか見てるほうがドキドキしそうなんだけど、なぜか見ててそんなドキドキ感よりほっこりする気持ちの方がなんか強くなる。鮮やかな赤じゃないからそれを出すのは結構難しいな」津田
「学生の頃マチスを見ていて、単純にマチスのような色を使いたいなーって学生の時思うわけです。パレットで赤を作ろうと思って、画集の白いページの横に赤を塗ってみて、歴然と違うじゃないですか」日比野
「初めてパリのポンピドゥへ行って、本物が本当にあると思って、塗り方とか描き方とか、それこそこの色がチラッと見えてるのがいっぱい見えてきてしばらくこの絵の前にいたハタチの私はいました」日比野
「本当にあの作品によってもちろん他に使われる色との関係の中でも違いますからかなり違うと思いますあの前の方に出ていましたの赤のハーモニーと言えばやはり下に塗られ絵の関係でこの絵とは全然違うと思いますし、下に塗った色がやはり色彩に影響を与えるということは気付いていて、利用する場合もあったと思います」天野

これは試しに緑だったらどうだろうかと、番組で試しに塗ってみたものです
「違った色が塗られていたということは知られています。全く違った印象の作品であったということ」天野
「経験値積んででうまくいくときがあるわけです。何か予想以上にこれもありかもしれないって思った経験値が1回できると次の絵を描くときにまたチャレンジしたくなるですか。作家にとって嬉しいような悔しいようなのは、次の色塗ったらどうなるか分からないってヒヤヒヤはもうなくなるわけですよ。一回経験しちゃうと。そうすると一生懸命描いたものを一回壊したい」日比野

エルミタージュ美術館にあるマティスコレクション。赤のハーモニーで色彩の調和にこだわったマティスはさらに大胆な色彩表現に挑みました。それはマティスの代表作となりました。

 

スタジオ談義

マティスの黒

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エルミタージュ美術館にあるマティスコレクション。

「赤のハーモニー」で色彩の調和にこだわったマティスはさらに大胆な色彩表現に挑みました。それはマティスの代表作となりました。

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ダンスⅡ

「ダンス」。輪になって踊るオレンジがかった赤の裸体。

青い空と緑の大地。平面的に塗られた色と色が音楽のようにリズミカルに響きあい、躍動感を感じさせます。

色彩が踊るこの華やかな絵と同じシリーズとして描き始めた作品があります。

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ダンスの表現とは打って変わって彫像のように動かない裸体。

人物は顔も描かれず明るい色は消え、黒を基調にした暗い色調でまとめられています。

マティスは10年近く手を入れ続けました。

完成したのは1917年頃。第1次世界対戦の最中でした。

ドイツ軍のフランス侵攻により戦火は拡大。国全体に不安が広がっていました。

そんな中でもマチスが体力的に絵を書き続けます。

しかし当時描かれた絵の多くは黒やグレーなど暗い色が使われていました。

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黒い色の面が画面の半分を占める抽象的な絵。

フォーブの時代に描いた窓から見たコリウールの風景と同じモチーフです。

実はこの黒の部分には最初何らかの情景が描かれていたとも言われ、それが黒で塗りつぶされています。色彩としての黒でマティスは何を表現しようとしたのでしょうか。

こうした作品は日比野さんは後世の画家に影響を与えたと言います。黒の作品から読み取れるものとは。

 スタジオ談義

「さっきのダンスは丸い感じじゃないですか。これは直線的なエッジが立っていて、今までのマティスになかったような鋭さ。色と色とぶつかってる」日比野

「よく見ると、右端から二番目の灰色の身体の中にもう一回り小さい肌色の身体が見え隠れしている。生身を感じさせる身体がもとになっていることをわざと残している、だから明らかにこの作品は抽象的な様式を一つうち建てるために描いてるというのではなくて、こういう生身の身体の表現というものをまた別のやり方でやってみようということの試みだったんだろうという気がします」天野

「どんなに不幸になっても不幸をネタにしようと考えるということが考えられる作品です」日比野

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「下に描かれているベランダの手すりと風景が黒で塗りこめられたということが考えられる作品です。戦争の暗さと結び付けられるということもありますし、しかし、いろんな意見がありまして、単に夜を描いたんだっていう人もいます。暗い室内を外から見たんだという人もいればいろんな意見があります」天野

還元主義的に、暗い時代でその戦争中だったからと想像したりします
「絶対に逃げられないから、そういうものに反応する体にマチスは長年鍛えてきたわけです。アスリートのように。自分で頭で考えるなくて反応するそういう体に鍛えた体になっているから、戦争の情報とか欧州の情勢とか世界の情勢が入ってくると知らず知らずの間に反応している自分は逃れようと思って出てきてるし」日比野

「最初見た時にはそんな暗いイメージもあるじゃなかった。ポップな絵だなと思いました。かっこいい絵だなあと思った。スタイルを変えられるって事はその分自分の芯が通ってるから自在にできるんだと思う。だからどんなに描く表現方法とかスタイルを変えてもマチスらしさってものは全然変わらないっていう。マチスのいうバランスっていうのは世間一般でいうバランスではなくて、自分の中のバランスだから、それは見る人によっては全然アンバランスに見えることもあると思うんですね。でもマチスの中でこれはバランスが取れるとか、これは全く実験的に手法を変えたんだっていう風に思っててもやっぱりザッツマチスっていうものはマチス自身も変えられないって言うんですかねそういうものがあやっぱりすごく出てるなーっていう感じがしますね」津田

 

これは孫をデッサンするマティス。晩年、デッサンとの格闘が始まります。

「私は自分の感覚を表現するのにふさわしいデッサンを持っている。しかし私の彩色はひら塗りの新しい習慣に束縛されている」。

デッサンの線と色彩が折り合わず、何度も修正を重ねます。

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綺麗な模様のブラウスを着て眠る女性。迷いなく伸びやかに描かれたように見えるこの絵。実は完成までに1年かかっています。マティスはその過程を写真に撮り、記録として残しています。

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初めは背景や人物を写実的に描いていますが、やがて人物の大きさや背景を変えたり、顔がなくなったり、何度も修正を重ねたことがわかります。

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「私には造形的手段を通して表現すべき何かがある。それが吐露されないうちは制作を続けるのです」。70歳を超えてならぜマティスは大掛かりな試行錯誤を続けたのでしょうか。

スタジオ談義

「描いていく過程は非常に重要な意味を持っていた。具象的なものから抽象的なものにひとつの線できれいに展開していくわけではなくて、行きつ戻りつし、曲がりくねった道をたどって完成作に行くわけですね。ですから、けして一つ一つの絵が無駄ではなく、それぞれに自分の表現したいものが出ているという意識があったと思います。そしてそれをわざわざ残して人に見せるという点に関して言えば後進の若い画家たちが安易に作品を描くというのはよくないと、だから教育上の一種の配慮として見せるということも意味があるだろう、という意図もあったということが知られている」天野

「プロセスのほうがおもしろいということがあるからね。絵描きはアトリエにいるじゃないですか。ここに至るまで結構いろんな物語あったんだけども、誰も知らないようなみたいな。本当に出来上がってくるところなんか、物ができてくるあの瞬間が本当に面白いのに、なんか完成した絵だけを見せていいのかなぁって、これで本当に現実の美術の面白さなんて伝わってるのかなって、不安になるときあるんですよ。あとは自分分析みたいなのもちゃんとしたかった時もあるかもしんないすよ。なぜ俺は絵を描いているんだろう。どこで自分で OK を出してるんだろう。いつ出会って否定して出会って否定してっていう繰り返しに中で、これはっていうのが出てくると思うんだけども、それがやっぱり夢と同じようで、さっき何を考えてると思っちゃうから、どんどんと逃げて行ってしまうから、どこか一回記録とっておこうかというのは、写真ってこと使えばそれ出来るなって」日比野

常に新しい自分になる為っていうことですか?

「自分を見つめたいというより、絵の面白さ、絵の不思議さって何っていうの自分で知りたいっていうのがあったんじゃないですか」日比野

「ここに行き着いたのがすごいなあって。やっぱり過程を見ると確かに思いますね。無意識に偶然にできたように見えながらも、実はここに至るまでに四苦八苦してる。ここの腕が透けてるように見えるから来れませんがこれが線画として際立ってるんですよね。髪も三本の波で泣いてたりするし、あのミスのように見せて実はそれが利いてるっていう。俺はもしこんな絵描いっちゃったら、これちょっとはみ出しちゃってねだから上から線描いたんだよといい分しそうなんだけど、やっぱりマティスは計算してやってるっていうのはちょっと驚きですよね」津田

「意図的じゃなくって素直にフワッと出せるかどうかってのは熟練かもしれないけども、そこ多くの人はみんな自分がクセ持ってるけども、そのクセの上になんかちょっといやらしいもの乗せちゃうから、らしくないですよ。本当の感動する絵っていうのは自分のクセを何のてらいもなく出してるからすごい。人間人間ってすげーって思えるところ」日比野

 

新たな表現との出会い

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1941年、南仏ニースで制作を続けていたマティスは病に倒れます。自由に筆を動かすこともままならない中、描きたいという欲求がマティスの精神を支えます。

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そんな時、体が不自由でも表現できる切り紙絵という新たな表現方法に出会いました。

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20点の切り紙絵を本にまとめた「ジャズ」。

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色を塗った紙を自由自在に切って組み合わせ、様々な形を作りました。

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絵画の制約や束縛から解き放たれ、画家の感覚だけで組み合わされた色と形が生き生きと躍動します。

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マティスはこの切り紙絵の表現を大いに気に入りました。

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「切り紙絵は色彩の中でデッサンすることを可能にしてくれた。私にとって単純化が問題だった。私は色彩の中でデッサンする。色彩を移し替えることがないので、その分よりバランスの良いものになる」

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マティスの切り紙絵が大好きで、自らも挑戦したのは染色家の柚木沙弥郎さん。96歳。

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染色だけでなくグラフィックデザインや絵本ガラス絵など幅広い活動を続けています。柚木さんが実際に切り紙絵をやってみてマティスが熱中した理由が分かったそうです。

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柚木沙弥郎さん

「こっちからこの色を使おうというのではなく、

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色と色はを並べてその中からどれとどれを組み合わせを使おうというところが一番楽しい。何か意味があるようなものよりも、意図しないところがかえって面白いですね。一言言うと感じるっていうこと、一番感じますからね」。

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一見子どもの表現のように見えるマティスの切り紙絵。しかし画家ならではの鋭い感性を感じると言います。

「何が好きかっていうとやっぱり色のセンスっていうか、決まりきった色ではなく、私なんか思いがけないような色を配色してね、ペタッと面積でもって組み合わせでしょ。それとか素晴らしいと思いますよ。描く体力も必要だけどもそういう、表現力ってものが。マティスにはそれがあるんですよ。だから自然のように見えるけども自然じゃない。単純ではないけども単純じゃない。そういう気持ちだと思いますね 」。

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ニース近郊の町ヴァンス。ここにマティス晩年の集大成となった作品があります。

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丘の上に建つ小さな礼拝堂。この教会の設計から内部の装飾まで、建物空間のすべてをマティスが作りました。

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ホテルの一室にアトリエを設え、壁に原寸大の下絵を描き4年かけて完成させました。

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光が差し込む窓にはめ込まれたのは切り紙絵をもとに作られた鮮やかな色彩のステンドグラス。

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色と光に包まれた空間を演出しました。

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白いタイルの壁には黒い線で描かれた聖ドミニクや聖母。

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線と色彩、光が絶妙なバランスで響き合い交響曲を奏でています。

礼拝堂が完成した翌年、マティスは切り紙絵についてこう言っています。

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「色彩はますます強い効果を及ぼす。ある種の青はあなたの魂に入り込み、ある種の赤はあなたの血圧に作用する。ある種の色調は元気を与えてくれる。それは濃縮された音色なのである」

 

スタジオ談義

エピローグ

アンリ・マティスは死の直前まで制作を続け、1954年、84歳でこの世を去りました。

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「私が夢見るのは不安や気がかりの種のないバランスの取れた純粋で穏やかな芸術であり、鎮静剤のように気を静めね、肉体の疲れをいやすよい肘掛け椅子のような芸術である」

 

取材先など

 

放送記録

av98ingram.wpblog.jp

 

書籍

展覧会