春、この季節の慣習として、花見や雛祭りなどを連想する日本人は少なくないでしょう。
こうした行事はもともと公家社会の習慣でした。
それが江戸時代、とりわけ泰平の世となった中期以降には、武家社会にも浸透していきました。
その背景として、徳川将軍家と京都の宮家との婚礼がありました。
小袖(浅葱縮緬地松竹梅桜菊網干文様)(德川記念財団所蔵)
婚姻関係が結ばれることによって宮廷文化が江戸城の大奥にもたらされ、春を寿ぐ行事がしだいに江戸市中にまで広がっていったのです。では、徳川将軍家にとっての春、そして江戸城大奥における‘みやび’とはどのようなものであったのでしょうか。
本展覧会では、德川宗家に伝来する東照宮御影(元日拝礼)をはじめ、十三代将軍 徳川家定正室の天璋院篤姫と十四代将軍 徳川家茂正室の皇女和宮が所持した雛道具、江戸中後期の精緻な銀細工や豆人形などを展示いたします。
書棚(左)・厨子棚(中央)・黒棚(右)(黒塗松唐草牡丹紋散蒔絵雛道具) これらの作品を通して、徳川将軍家の年中行事や季節感、美意識などを味わっていただきたいと思います。
春を寿(ことほ)ぐ ―徳川将軍家のみやび―
会場:東京都江戸東京博物館
会期:2019年1月2日(水)~3月3日(日)