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響くアートの愛好家

新美の巨人たち 速水御舟 重要文化財「炎舞」

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速水御舟《炎舞》

 

妖しく儚く美しい――日本の絵画史にきらめく幻想と迫真の一枚『炎舞』は、大正から昭和を駆け抜けた天才画家・速水御舟が、31歳の時に手掛けた作品です。

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速水御舟

吸い込まれそうな深い闇に、燃え盛る紅蓮の炎…その強烈な光に引き込まれるように蛾の群れが舞っています。それはまるで生きているかのような美しさ。まさに鬼気迫る極限の筆致!

ところが、かつて御舟は美を追求するあまり、狂気的なほどの細密描写に走り、批判と酷評を浴びました。

そんな苦悶と苦闘の日々の末に生まれたのが今回の作品なのです。

破壊と創造を繰り返し、孤独な戦いの先に、いかにして美の世界を作り上げたのか。

あまりのリアルさゆえ、『炎舞』誕生の時に起きたあっと驚く大騒動とは?

御舟の作品や、その生きざまに迫るのは、女優・田中麗奈さん。

御舟がかつて夏に3カ月滞在し、焚火を観察していたという軽井沢で、実際に焚火を観察。そこで気づいた傑作の秘密とは?

さらに今回は『炎舞』の背景の闇の色を再現。

深い黒を生み出すための驚きの工程が明らかに!

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美の巨人たち 速水御舟 重要文化財「炎舞」

放送:2019年7月13日

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神奈川県茅ヶ崎市速水御舟の画室が残されています。

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丁寧で几帳面な人でした。画材道具はいつも整然と置かれていました。

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でも家庭ではおおらかで子煩悩。3人のお子さんにも恵まれました。御舟の言葉です。

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「梯子の頂上に登る勇気は尊い。さらにそこから降りてきて、再び登り返す勇気を持つ者はさらに尊い」これこそが画家としての彼の生き様。

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明治27年東京の浅草萱町に生まれた御舟は13歳で近所の画塾に入門。

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《小春》

15歳で初めて展覧会に出品したデビュー作。

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《小春》

みずみずしく柔らかな筆さばきで描いた幼子の姿です。

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《紙すき場》

点描のようなタッチと明るい色彩でとらえたほのぼのとした農村の日常。そして24歳の時、御舟は最初の梯子を登りました。群青色に魅せられたのです。

 

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《洛北修学院村》

息を呑むほど幻想的な京都の情景。深く染み入る群青色の怪しさ美しさ。

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《京の舞妓》

26歳再び別の梯子を登ります。超問題作です。

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厚い化粧に覆われた感情のない顔。

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着物の糸。その一本一本。

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気の遠くなるような畳の目の緻密さ。

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何一つ見逃すまいと描き込む執念。画壇はこの1枚に騒然となったので。浴びせられたのは批判と酷評ばかり。真実の美はいったいどこにあるのか。破壊と創造を繰り返した画家が再び梯子を登った先に生まれたのが今日の一枚。この時速水御舟31歳。では見に行きましょうか。その絵は今東京広尾にあります。

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山種美術館



日本画専門の山種美術館は120点物御舟作品を所蔵し、

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別名御舟美術館とも呼ばれています。

今日の一枚。速水御舟作《炎舞》深い闇に燃え上がる紅蓮の炎。うずまき、ゆらめき、 立ち上った炎はやがて闇に溶け込んで。その強烈な光に引き込まれるように蛾の群れが待っています。夢か現か。怪しく儚く美しく。9匹の蛾はまるで生きているかのように舞っています。触覚も頭も胴体も。透けるような羽までも。精緻を極めたリアルさで。もちろん実在の蛾です。カギバアオシャク。シロヒトリ。その完璧な描写にはこんな秘密が。「蛾が全部正面向きに描かれていて、それが同心円状に配されていて非常に意図的な感じがするんですね。それでも混んでいるように見えるのは、蛾の後ろの羽の方をちょっとぼかしていて、そのぼかすことによって蛾がいかにも羽ばたいているような、その羽ばたきの音までも聞こえてくるような気がします」炎舞は御舟という天才が、技巧の限りを尽くした幻想の世界。どうやって生まれたのか。その現場へと向かってみましょう。長野県軽井沢町。1925年の夏、御舟はこの地に別荘を借りて3ヶ月ほど滞在しました。炎舞はこの時に描かれた作品です。
炎舞の制作にまつわる面白いエピソードが残されています。あまりのリアルさが巻き起こした大騒動。御舟は軽井沢滞在中、毎日たき火をして見つめ続けていたといいます。

黄口朱一色で描かれた炎の揺らめきは実にリアル。金泥で描かれた煙は空気さえ伝わってくるよう。御舟の恐るべき観察眼と機巧の証です。火が束になっているような炎の中心部。確かに写実的とは言えません。どういうことでしょう。「炎に関しては実はベースは仏画の例えば不動明王なんかのバッグの火焔光背。それと非常に様式的な、古典の美をベースにしていて、ですけどもその炎の上の方のゆらめきの部分というのは写実的なものが非常に高い次元で融合した結果の炎舞という素晴らしい作品になっているんだと思います」写実を越えた先に神秘の炎が揺らめいています。

炎舞は速水御舟が軽井沢で3か月もの間、炎を見つめ続けて描いた作品です。
その誕生にはこんなエピソードが。二階の窓から見えた絵がまるで燃えているように見えてしまったのです。これが1925年夏。軽井沢をちょっと騒がせた事件の顛末。「かつて当館で炎舞を展示していた時に、お客様から「大切な絵の裏側からのライトを当ててるんじゃないか」っていう風にあの叱りを受けたことがありまして、けしてライトは裏から当てていたわけではないんですけども、そのぐらい炎の色が実際に発光しているように見えたんだと思います」怪しい炎が揺らめいています。光を放つように。身を焦がすように蛾が舞っています。鮮やかな色彩をまとって。この二つの美しさを際立たせているものこそ深い闇の黒。二度と出せない色と御舟は言っていました。日本画家の松原亜美さんに御舟の黒を再現していただきました。普通日本画を描く際には礬砂というにじみや岩絵具の剥落を防ぐ液体を画面全体に塗ります。礬砂を塗った部分と塗っていない部分を比べてみればこの通り。しかし魚臭が最初に塗ったのは。「水を縫っています。墨はとてもぼかしが難しいと言いますか、一度ムラになってしまうとそのムラはずっと消えないんですね。なのであの墨を綺麗に塗ろうと思った時に水があることによって水の粒子が広がっていくのでとても綺麗にぼかすことを助けてくれますね」墨を塗ったら乾いた刷毛を使って広げていきます。そうすることで画面全体がムラなく仕上がります。この作業理想の濃さになるまで繰り返していくのです。あえて礬砂を使わず墨を絹に染み込ませるように重ねていくことでより深い闇を追求したのです。墨を重ねること20回。ようやくこの濃さになりました。しかしこれで終わりではありません。さらに薄い朱色を墨と同じように何度も重ねていきます。こうして30回以上。墨と朱を塗り重ねることで生まれたのが御舟本人さえ再現できないという闇の色なのです。「本当に薄く重ねていったほうがより墨の発色が美しくなるので回数が必要だなとは最初思っていたんですけれど、やはり5回10回と重ねてもこの御舟の絵ほどまでに黒くならなくて、本当に20回30回と途方もない数を重ねて描いたんだなということをすごい感じましたね」炎に照らし出されわずかに赤みを帯びた闇の色。この唯一無二の黒がより幻想的な世界を作り出したのです。技巧の限りを尽くしたこの絵をなぜ御舟は描いたのでしょう。

そう身を焦がすように舞うこの蛾に秘密があるのかもしれません。かつてこの絵を前に昭和天皇はこう呟いたと伝えられています。「蛾の目が生きているね」美しく舞う蛾に御舟が託した思いとはいったい。

世界で一番美しい炎と蛾です。
蛾は卵から幼虫。さなぎ成虫へと姿を変えるため、古くから世界中で死と再生のシンボルとされてきました。古代ギリシャ語で魂を表すプシュケという言葉には蝶や花の意味があります。あえて炎に身を焦がしうつくしく舞う蛾は御舟自身の魂なのかもしれません。だからきっと彼の目が生きているのです。「梯子の頂上に登る勇気は尊い。さらにそこから降りてきて再び登り返す勇気を持つ者はさらに尊い」美しく儚い蛾の姿に託したのは、より高みを目指して生まれ変わるという決意。炎と蛾の行方に希望をのせて。その後の画家の仕事です。破壊と創造を繰り返しより高くより深く美を追求し続けた速水御舟は40歳の時に。日本一の御舟コレクションを持つ山種美術館では現在所蔵する全御舟作品120点を前期後期に分け10年ぶりに公開中です。画家の魂の軌跡にぜひ触れてみてはいかがでしょうか。燃え上がる紅蓮の炎に身を焦がす蛾の群れ。速水御舟《炎舞》今ひとたびの命。今ひとたびの夢。

 

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