鏑木清方 幻の《築地明石町》特別公開
小紋の着物に黒い羽織。
呼び止められたのか、ふと振り返る瞬間です。
日本画家・鏑木清方の代表作築地明石町。行方が分からなくなっていましたが44年ぶりに発見されました。国立近代美術館に収められた幻の名画のお披露目会。他の収蔵作品とともに制作の背景を探ります。
清方は明治11年東京神田生まれ。挿絵画家として画業をスタートさせました。
こちらは日本画に本格的に取り組み始めた頃の作品。
歌に合わせ人形の踊りを披露しています。
すだれの向こうにそれを見つめる武家の姫君の上品な横顔が覗きます。
清方が愛した楽しげな江戸の風景です。
そんな清方に変化をもたらしたのは関東大震災。
東京の街に残っていた過去の記憶は徹底的に破壊されました。
この後清方は明治時代をテーマに数多くの作品を手がけるようになります。
秋の夜長。
石油ランプの下に集う家族。
失われた時を刻みつけるかのように正確な時代考証をもとに描いています。
柱にかかっているのは普及し始めた日本製のだるま時計です。
「清方さんにとって明治というのは、まだ自分だったらこの辺り細かく覚えている。残すとしたら自分の役割だ。という風な思いも持って主題の中に選んだと思います。
そういう近い過去というのは他の画家さんたちはそれほど熱心に取り組んでいなかった時代だったんですね。清方さんがその主題的な領域というのを切り開いたというふうに評価することもできると思います」
44年ぶりに発見された築地明石町も明治の女性を描いています。
この作品で清方は昭和2年の帝国美術院賞を受賞します。
その後これに二つの新作を加え三部作としました。
今回この3点が同時に発見されました。
こちらは新富町にあった花街の芸者。
女性を中心に据えながら思い出深い町の名前をタイトルにしています。
日本橋の浜町河岸。
踊りの稽古帰りの街娘が描かれています。
3点同時に公開されるのも44年ぶり。
その瑞々しい色彩に専門家たちも驚かされたと言います。
「様々な本だとか雑誌とかには繰り返し印刷されてきていたんですねね。古い画集で記憶をしている人にとってみるがびっくりするほどに明るい爽やかな色彩なのを三部作ともにご覧いただけるはずです」
会場:東京国立近代美術館
会期:2019年11月1日~12月15日
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